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14 お願い

「もう無理!!」

「ご馳走様です」


半分ほどお弁当の中身を残して手を合わせる二人。なんで食べきれなかったのか疑問でしかないけれど、残すのは勿体ない気もする。

でも、僕も食べられないな〜お腹一杯だし……


「それ、貰ってもいい?」

「食うのか?」

「食べるのでしたら、このお箸をどうぞ」


自然な流れで寒奈さんは自分の使った箸を差し出してくる。別に今食べるわけではないので首を横に振る。


「後でお腹空いたら食べよっかな〜って。駄目かな?」

「いいですよ」

「わーい」


いそいそと自分の弁当箱を取り出し、近くの水道で軽く洗ってから中身を詰め直していく。

ちょうど一杯くらいになったので良かった、良かった。入らなかったら少し口に入れないとなぁ。なんて思ってしまっていたから助かる。


六時間目に体育あるし、帰る途中で食べちゃおっと。


「さて、飯も片付いたことだし、本題に入るかね」

「そうですね」

「本題って?」


何やら話すことがあるようだ。

普通にご飯を食べるだけだと思っていたから意外に感じる。

それに、二人とも気乗りはしていないようだ。雰囲気だけでもそれが察せてしまえる。


「話したくないなら聞かないよ?」

「いや、話すよ。説得もダメだったみたいだしな。だろ?」

「はい。泣き付かれました。それさえなければ……くっ」

「????」


二人だけが通じる話をしているために疑問符だけが頭を回る。


「はぁ」

「俊樹?」

「腹括るよ。お前さ、俺たちのご主人に会うつもりはあるか?」

「ご主人って。どこかに仕えてるの?」

「家庭の事情ってやつだよ。まぁ執事とかメイドじゃなくて雑用係みたいなもんだ。主にやることなんて杏様の相手だしな」

「つまり、杏さんの家に行けるってこと?」


目が輝いた。

気持ちが一気に上を向く。

心臓が大きく高鳴り、すでに心は謎を多く孕んだ如月邸へと飛んでいた。


「待て待て待て。そんなに喜ぶな」

「えっ。喜ぶよー当たり前でしょ? 好きな人の家にお呼ばれなんだから」

「うぐっ」


寒奈さんが唐突に胸を押さえて机に突っ伏した。

なんだか流れ弾を受けたような感じだけどいきなりどうしたんだろう?


「寒奈さん。狙撃でも、受けたの?」

「そうだな。心臓に一突き。銃弾よりもむしろ槍を食らってる感じだな」

「槍! 見えない槍が刺さってるの!!」


寒奈さんを傍に駆け寄り背中を摩ってみるが、槍の感触はない。押さえている手の前方を胸に触れないように探ってみてもやっぱり何も無い。

ここに、槍が刺さってるのか……


「大丈夫? 病院行った方がいいかな?」

「いえ、大丈夫です。はい。病院では、治せませんので」

「病院じゃダメなの!!」


血も出ていないし、見えない槍は的確に心臓だけを刺しているのだろう。

早く抜いた方がいいかもしれないけど、苦しそうにしたままだし、どうしたらいいんだろう。

それに、出来ることならば見えない槍を回収したい。


「俊樹。どうしよう!!」

「嬉しそうに聞くな。胸でも揉めば元気になるだろ」

「揉めばいいの?」


よく分からないけど、それで回収出来るのであれば試す価値はある。

いざ!!


「この辺り、かな?」


制服越しに柔らかい感触に手を出した。

真ん中部分が怪しいけれども手で教えているので、下の方からふにふにと揉んでみる。槍らしき感触はない。

ただ、寒奈さんの頬が赤くなり、目元が少し潤んで見える。


「違うのかな?」


少しずつ場所を変えながら揉んでいくと、当てていた手が離れ、口元に移動していく。

声を抑えるようにしている姿に疑問を抱きながら空いた真ん中部分に指を伸ばした。


「あっ!! んんっ」

「この辺り?」


反応があった所を念入りに揉んでいく。手の中で形を変える胸を見つめながら槍の出現を今か今かと待つことにする。


「はい。ストップ」

「むっ」


頭を軽く叩かれて振り返ると、額に手を置く俊樹が呆れ顔で見つめていた。


「なんで止めるのー?」


もう少しで出てきそうな気がしたのに。


「これ以上やったら危険だからだよ。変な声を出させるな」

「そんなつもりは無いけど?」

「はいはい。もう昼休みは終わりだし、撤収するぞ。帰りは一緒に帰ってご主人の家な?」

「はーい。あれ? 寒奈さん大丈夫?」


先程よりも辛そうな顔で机に突っ伏している。

ううん。辛そうって言うよりも……幸せそう?


「大丈夫だよ。放って置いてやれ」

「俊樹が言うなら、うん」


後ろ髪を引かれつつも部室を後にする。

放課後にどうなったのか確認した方がいいかもなぁ。




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