13 平和
「俊樹〜」
「おはよ。ふぁぁ」
「眠そうだね〜」
一夜明けて学校である。
学校へ向かう途中で俊樹を発見して突撃を掛ければ、欠伸で出迎えられた。
「何かあったの?」
「色々とな。特に、あれが大変で……」
「あれって〜?」
「はぁ」
ジーッと顔を見られたが、大きくため息を吐かれた。まるで僕が悪いと言いたげな表情をしているけど昨日の夜に会った記憶はない。
だから迷惑をかけようがないはずなのに、なんだろうなぁ。
「今日も大変だわ」
「忙しそうだね」
「面倒だよ。と言うか……」
「んっ?」
「なんでもない」
静かに首を横に振る。
何か言いたそうではあったけどそれは口から出ることは無かった。
気にはなるけど深く踏み込んでも迷惑になるかもしれないので学校へと向かう。りっちゃん力作のお弁当を楽しみにしながらスキップするような気持ちで通学路を行く。
「楽しそうだな」
「当たり前だよーだって、杏さんを見れるからねぇ」
「ああ。休みだぞ」
「えっ?」
簡潔な一言に目が点になる。
なんでそんなことを俊樹が知っているのかも疑問ではあるが……
「どうして休みなの?」
「体調不良だよ。体よりも、精神のほうだがな」
「精神?」
「ああ。これ以上は言わせないでくれ。辛い」
気持ち悪そうに口元を押さえている。俊樹の体調もかなり悪そうだけど大丈夫なのだろうか?
背中をさすってあげると、乾いた笑みを浮かべている。
元気になりそうなので寄り添って学校へと向かう。仲良きことは美しきかな。
〇
「本当に休みだったなぁ」
「だから言ったろ?」
お昼休み。
モグモグとご飯を食べながら天井を見上げる。出来ることなら昨日のことを聞きたかったのに残念だ。
「寒奈さんは来てるのー?」
「来てるはずだぞ。ここの鍵が開いてたわけだしな」
昨日と同じ部室で食べている。連絡は入れたそうだけど返事がなかったそうで、試しに来てみれば開いていたから勝手に使わせて貰っている。同じ部活に入ることは確定しているのだから怒られることは無いだろう。
「遅くなりました」
「寒奈さんだ〜」
「約束してないんだから気にしなくていいのにな」
「いえ、わたくしが早く到着したかっただけですよ。手伝いさえなければすぐにでも駆けつけたのですが」
「恋は盲目ってか」
僕を見つめて笑みを浮かべる寒奈さんには、俊樹の姿が見えていない様子だ。
当人である俊樹はため息を零して、肩を竦めながらジュースを流し込んでいる。何か不満でもあるのだろうか?
「お弁当。食べ終えました?」
「うん。美味しかった〜」
さすがりっちゃん渾身のお弁当。料理店にも負けないくらいの出来栄えでした。大きなハートの海苔なんて作るの大変そうだよなぁ。僕のためにわざわざ作ってくれるなんて本当に優しい。手間を掛けてくれることに感謝しないと。
「ありがとう。ございます」
家の方向へとお辞儀する。届いているといいなぁ。
「そう。なんですね」
「どうかしたの〜? あっ。食べたかったかな?」
「いえ、大丈夫です。はい。大丈夫ですよ」
なんだか悲しそう。理由を知ってそうな俊樹に視線を送るが、そっぽ向かれてしまった。
理由は分かっていても話す気はないようだ。むぅ。
「では、わたくしもいただきます」
「わぁ。すごい沢山食べるんだね」
「ええ。そう、ですね」
遠い目をされてしまう。
重箱のようなお弁当箱には色とりどりの料理がぎっしりと詰まっていた。
数人で食べるとしか思えない量だけど。これが一人前なのか。毎日これを食べるからこそ立派に成長したのだろう。
拝んでおこう。僕ももう少しくらい身長欲しいし。
「どうかしましたか?」
「あやかれるかな〜って」
「召し上がります?」
声音に明るさが宿る。
何故か二膳ある箸を差し出されるが苦笑いで返事をする。
「ごめんね。お腹一杯なんだー」
「そう。ですか……」
「俊樹にあげてよー」
「だ。そうです」
「なんか。すいません」
二人にしか分からない会話をしながら弁当を空にしていく。どっちかと言えば俊樹の方が食べているように見えるけど、寒奈さんの分をそんなに食べて大丈夫なのかな?
午後の授業で倒れたりしないかな?
心配になるが、黙々と食べる二人に口を挟むことは出来ずに見守ることにした。
平和だなぁ。




