第6話 編集中
信仰都市 アビスについて少しだけでも知識を入れようと思い立ったマーリンは、人で賑わうブリタニア図書館のホールにいた
三階層に分かれているブリタニア図書館には
一階に誰でも閲覧できる本、二階に許可のいる歴史書、三階に重要機密の本が置かれている
三階に置かれた本を閲覧するには、五大ギルドの許可が必須となってくる為、なかなか三階に足を踏み入れる人はいないらしい
「やっぱ休日に来たのは間違いだったか…」
今日は土曜日である
「あっれ?そこにいるはマーリンじゃん」
「サクラ!なんでここに?」
やぁと右手をあげて挨拶をするサクラの横には白いYシャツと黒いズボンという学生のような服装のアバターがいる
茶色に近い金髪である短髪の髪は手入れが生き届いているのかさらさらと歩く度に振動で揺れている
歳は同い年か少し上かだろう。
「ミハ、こっちはマーリン。アルケウスの新人だよ」
「Oh……アルケウスの!」
「おう、マーリンです。よろしく」
「ぼくはミハイル。このブリタニア図書館を管理している、管理者の1人だ」
ニッコリとハニカミながらミハイルは右手を出して握手をする
チャーミングなその笑顔は無表情の時に比べなんとも、愛らしい
男の俺でもチャーミングと思えるとは……。
「それで?こんなところでなにしてるの?」
「あ、そうだった。信仰都市アビスについて知りたくて」
「あびすぅ?あそこの何について知りたいのさ」
サクラは心底不思議そうな顔でマーリンを見つめる
顎に手を当てて考える仕草をしたミハイルは、暫く空を眺めた後笑顔でマーリンに言葉を向けた
「それなら、ぼくが答えるよ。これでも歴史とかには詳しいんだ」
確かに自分で調べるよりも、司書であるミハイルに聞いた方が早いな…。
考えたマーリンは遠慮なく質問をすることにした
「アビスって言うのは、ここ100年で付けられた名前なんだ。昔はエデンって呼ばれていたんだよ。」
「エデン?エデンってあの?」
「そう、現実で言う神々の楽園って言われてる、あのエデンと同じ意味で付けられていたんだ。」
四人がけの椅子に座り周囲の喧騒をBGMにしながら、ミハイルはアビスの歴史を口にする
「アビスを築いたのはカインと呼ばれる青年でね、今の王族はそのカインの子孫と言われているんだよ。
昔は魔法や科学、錬金術全てが"奇跡"って思われてたんだ。神様に祈ることで、それに応えた神様が人間に奇跡を授けて下さる。
カインは奇跡の使い手でね、たちまちカインの周りに人は集まり奇跡を授かろうと富を築いていった。そうして出来上がったのがエデン」
「じゃあなんで、アビスって名前に?」
「時代が進めば人々は気づいたんだ。それが奇跡でなく、魔法や科学、錬金術だってことにね。
神様の奇跡によって作られたエデンが、実際はカインと言う人間の力によって作られた都市だってことに気づいた、外の人間が皮肉の意味を持ってつけたのが、楽園とは正反対、奈落の意味を持つアビスってわけ。」
肩を竦めて困ったように笑うミハイルと興味が無いのか手元のペンをクルクルと回しているサクラ
ミハイルが視線をサクラに向けると、それに気づいたのか顔を上げて続けて言葉を紡いだ
「ま、今の王族様方は宗教団体の代表者みたいなもんよ。
アビスという都市を機能させるために存在してるだけだからね。いくら血族だからとはいえ、彼ら自体は何の功績も残しちゃいないんよ。
だだ、アビス内で王族批判をするのは辞めた方がいいかもね。
信仰都市って言うぐらいだから、熱心な信者は王族に奇跡の力があると信じてるだろうね」