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召喚者

すまない。久しぶりの投稿なんだ。



 かつて魔王を討伐した勇者。彼は異世界から召喚された異国の物だと言う噂があった。

 果たしてそれは……






「召喚者?」


 いつもとは気分を変えようと訪れた店でレドは、相席した男から告げられた聞きなれない単語に、なんだそれはと訝しげな表情を浮かべた。


「おうよ。なんでも次期魔王に代わる存在が出てくる可能性に備えて、召喚の議を行ったそうだ」

「なんだそりゃ? 召喚魔法で魔物でもよんだのか?」


 この世界で召喚と聞いて人々が思いつくのは、魔物召喚である。

 そしてレドの思い描く召喚魔法も同じで、魔法使いが魔力を餌に魔物を何処かから拉致してきて、自分の代わりに戦わせる卑怯な魔法と言うのが印象に残る能力であった。

 しかし使い手は多くない上に、わざわざ魔物を召喚するくらいなら攻撃魔法使えばいいじゃんと考える者の方が多いので、珍しい能力である


「違う。なんと人を召喚しやがったのさ!」

「何でわざわざ人なんかを? 正直騎士団も人手不足じゃないだろ」

「何でもかつての勇者が召喚者だったからって事らしい」

「何だそりゃ」


 レドの聞いた話では勇者が召喚者だなどと信じられる要素はなかったからこそ、意味が分からない行いだった。


「俺が聞いた話だと召喚者なんて事は無いと思うがね」

「お前の聞いた話なんてみんな知ってる噂程度の話な上に、嘘ばかりで信用も出来ないが、まあそれについちゃ俺も同感だ」


 遠回しにレドの普段の行動を責めながらも、同意だとばかりに男は頷いた。


「しかし召喚者ねえ」

「だがその召喚者どうも魔法が使えるらしいぞ?」

「へえ……ところで性別は?」


 魔法の言葉に興味を示したのか、レドが情報を得ようと問いかける。


「男だ」

「そうか、なら世の男には関係の無い話だな! くだらない話をありがとよ!」

「お前さん自称元勇者の仲間なんだろ? もう少し興味を示してもだな」


 話は終わったとばかりに声を上げるレドに、男は不満そうに返した。


「ははっ自称じゃねえさ。そんな事より最近アンナが冷たいんだが何かあったのか?」

「ああ、アンナならレイラにお前に近づくなと言いつけられたせいだろ」

「レイラってアンナの」

「そうさ。そして俺の嫁さんだ」

「ははあんな美女がおっさんの嫁とは、世界の謎の一つだな」

「うっせえ法螺吹き野郎が」


 しかし男の言葉にレドは疑問を感じずにはいられず、不思議そうに尋ねた。何故レイラはそんなことを言ったのかと。その本心から不思議だと思っていそうなレドの態度に、男は本気で驚いた表情を浮かべて馬鹿かと吐き捨てると言葉を続けた。


「お前さん。レイラを口説くはリーナちゃんを始め、容姿が良いと見るや誰彼構わず口説いてるだろ」

「別に誰彼構わずじゃないさ。好みの女がこの街には多かっただけだ」

「黙ってろ。まあそんな糞男である所のお前さんに年頃の娘を近づけたく無いのは、親として当然だろ?」

「生憎俺には親の気持ちなんてわからないね」

「……まあお前みたいな変態には子供は近づけたく無いってのが、世間一般の考えなんだよ」

「要するにいい女を俺に取られたく無いって訳か」

「死ね」

「ああ、女の胸に抱かれてなら良いかもしれないな」


 しかしこれで謎が解けたとレドは立ち上がった。


「おい、どうしたんだよ」

「いや、お前の嫁さんの誤解を解いておこうかと思ってな」

「何処に誤解があるんだか」

「冷たい事言うなよ。これでもアンナは可愛い妹みたいに思ってるんだ。避けられると寂しいもんさ」

「はあ、俺は手伝わねえぞ。俺としてもアンナがお前に近づかないのは良い事なんだしよ」


 疲れたと大げさに溜息をついた男に、少し驚いた顔をするレド。


「なんだ止めないのか?」

「止めてほしいのかよ?」

「まさか、でもおっさんにしては意外だなと思ってな」

「お前が本気でアンナに手を出すつもりなら話は変わるが、友人程度なら許すさ。知らない仲でもないし、まあアンナも言いたくねえが懐いてるしな」

「良い男だからな」

「……まあ俺もレイラの奴とは結構歳が離れてるからよ。何というか責めにくいというか」

「おっさんも俺と同じ男だからな。分かるぜ」


 わかるわかると頷くレドに、内心考え直した方が良いかもしれないと思いながら男は続ける。


「だからお前が変な事をしたり、アンナがお前を嫌わない限りは取りあえず様子見する事にしたんだよ。あんまり親が子供の付き合いに口出し過ぎてもな」

「そうだな。だけど心配するな、アンナが変な男に騙されないように俺も見守ってやるからさ」

「いや、アンナの周りの男ではお前が今一番心配なんだけどな」


 傷ついたとばかりに大げさに悲しむレドに、鬱陶しそうな目を向けて男はまた溜息を吐いた。


「まあ、そうは言っても俺の目の前でアンナと仲良くするんじゃねえ! 特に触れるのは許さん! あと女関係は全部綺麗にしろ!」

「当然だな」

「わかってるなら死ね……じゃない。とりあえず行ってこい」

「そうだな将来の美女のため行ってくるか」

「お、おい! 手出すなよ、何年経っても手出すなよ!なあ」

「じゃあな」

「おい! レド!」


 レドは男の言葉に強く頷くとその場から勢いよく走り去った。後ろから聞こえる声を遮断し、アンナって母親みたいに将来なかなか良い身体になるだろうななんて事を考えながら。




「ここだな」


 レドはたどり着いた家の前で軽く深呼吸をした。男たるもの冷静に、弱気を見せてはいけない……そう自分に言い聞かせるように。

 そして目の前にある結晶石で作られたベルを鳴らした。


「はーい」


 そこから出てきた美しい女が13歳の一人娘を産んだ女だと誰が信じるだろうか。

 一見10代にしか見えない幼さを残しながら、女としても魅力をもったその容姿その身体。とても子供を持つ女には見えなかった。


「久しぶりだな」

「……あっ」

「会いたかった」

「レドさん。どうして?」


 まるで感動の再会を果たした男女のように視線を交わし合う二人。とても人妻とその娘の友人である男の態度には見えないし、誰もそれを信じないだろう。


「いや、リーナちゃん今日店休みだって聞いたからさ。顔が見たくなってね」


 なにせレドが来たのは行きつけの店の看板娘である、リーナとそのマスターの家だったからである。


「もう、レドさんったら。嬉しいですけど急に来られたら恥ずかしいです。私こんな格好ですし」

「恥ずかしがる事なんて無いさ。今ここには俺達しかいないんだから」

「で、でも」

「それにリーナちゃんは私服も可愛いよ」


 事実何処にでもあるような服とスカート、そしてエプロンを付けた格好だったが、そんな格好でも後ろで縛った髪を揺らしているリーナは健康的で魅力的な娘だった。


「もう、でもありがとうございます。あ、良かったら上がっていきますか?」

「いいの?」

「はい、どうせ父はまだまだ仕事ですし、私も一人だと少し寂しいんですよ」

「そっか、ならお邪魔しようかな」

「はい! 上がって座ってて下さい。お茶でもいれますから」

「お構いなく」


 先に中に入っていくリーナの後ろに続いて、まるで自分の家に入るかのように堂々とレドは家の中に入りドアを閉めたのだった。

 その後姿を見ている者がいたとも気付かずに……。




「はい、どうぞ」


 お茶と共に差し出されたクッキーを見てレドは嬉しそうに笑った。


「お、上手そうだ。リーナちゃんが作ったの?」

「はい、休日なのでたまにはと思って」

「偉いねリーナちゃんは。俺だったら休日はだらだら過ごしてしまいそうだよ」


 レドの軽口に小さく笑いながらリーナも体面の椅子に座った。


「そんな、私だって普段は適当に過ごしてますよ。今日はたまたまお菓子作りをしていて、そこにレドさんが来てくれただけです」

「はは、ならこの後は二人でゆっくりしようか?」

「ふふっ、そうですね」


 第三者がいれば、片目を瞑り冗談めかした言葉を言うレドに、笑顔で返すリーナは相当レドとの会話に慣れているように見えただろう。そしてまるで恋人にも見えたかもしれない。


「ところでレドさん今日はなんで来てくれたんですか?」

「さっきも言ったけどリーナちゃんの顔を見たかったからだよ」

「……うーん私は嬉しいですけど、でも違いますよね?」

「いや、本当なんだけどね」


 レドとしてはおっさん達の家に向かう途中に、リーナの家を見かけたから寄っただけなのだ。そしてその理由はリーナの顔が見たかったから以外の何物でも無く、ただ本音しか言っていない。

 にも関わらず疑ってくるリーナにどうした物かと考えたが、素直にその事実を告げる事にした。


「……そうですか、アンナちゃんの所に」

「ああ、その途中でリーナちゃんが休みだったのも思い出してね」

「じゃあ私はアンナちゃんのついでなんですね。あーあレドさんはやっぱり小さな子が好きなんですね」

「酷いな。俺がリーナちゃんに会いたかったのは本当だぜ?」

「……冗談です。疑ってごめんなさい。本当にそう思って貰えてたみたいで嬉しいのと恥ずかしいのがごっちゃになって、ついつい意地悪しちゃいました」

「そっか」


 頬を染めながら、本当に嬉しそうに笑顔で純粋さを見せるリーナ。その姿にレドまで少し照れ臭くなり彼は顔を背けた。


「あれーレドさんってば照れてます?」


 そのレドの姿があまりにも珍しかったのか、おもちゃを見つけた子供のような意地悪な笑みを浮かべて、からかうようにリーナはレド隣に来ると覗き込むように顔を近づけた。


「ははっ、そんなわけないだろ」

「ふふっレドさんってば可愛い」

「あまり大人をからかわないでくれ」

「はい、ごめんなさい」

「そんな笑顔で謝られてもな」

「ふふ」

「さて悪い娘には罰だ」



 年下の、しかもまだ17の娘にからかわれてばかりいるのも何だか悔しくて、レドはリーナを抱き寄せ耳に口を近づけた。


「れ、レドさん!?」

「大人をからかう悪い娘には罰だ」

「だ、駄目ですよ……レドさん」

「もう許さないよ」

「あっ」


 胸の中で顔を赤くして小さな抵抗をするリーナを黙らせるように、レドはさらに腕に力を込めてリーナとの距離を縮めた。


「責任とってくれます?」


 観念したようにそう呟いたリーナは、瞳を潤ませてレドを見上げた。


「勿論」


 そしてレドは頷いてリーナの唇に自分のそれを近づけた。


「指輪してくださいね」


 しかし後少しの所で投げかけられたリーナの言葉に、レドの動きは止まった。よく考えれば口約束だけしておいて今は目先の少女の純潔を奪うという手もあった。あったのだが、レドは責任を意識した瞬間逃げ場が無くなる事を想像してしまい、それ以上進む事が出来なかった。人それぞれな部分もあるが、男女の関係において、男が責任を意識した上で進むのにはそれなりの覚悟がいる。

 そしてレドには遊びや一夜限りの関係ではなく本気の関係に至り、ましてや契約の指輪までして、今後を決める覚悟がなかった。勿論それだけリーナという少女が遊びで傷つけていい存在ではないと、レドの中で特別視していた結果、口約束だけして逃げるなんて行動が出来なかったという理由も事実として存在した。

 

「もう」


 そしてその事に気づいたかどうかまでは分からないが、レドから見ても残念そうな顔をしたリーナはそれでもまるで、やんちゃな子供をしかる母のようなでも決して同じでは無い別の感情を顔に出しながら、レドの唇に人差し指を置いた。


「今日はここまでですね」


 呟いたリーナは先程のレドと同じように、耳元で囁くとレドの頬にそっと口付けて身体を離した。


「あっ」

「ほら、何呆けてるんですか! お父さんもそろそろ帰ってきますし、レドさんも今日は帰ってくださいね」

「はは、いきなり冷たいな」

「悪い男なレドさんにはこれで十分です。ほーら行ってください」

「わかったよ。全く可愛い娘の我儘には勝てないな」


 そしてわざとらしく頬を膨らませるリーナに背中を押されてレドは家の外まで出されてしまう。


「クッキー美味しかった」

「いえ、私も本当にレドさんが来てくれて嬉しかったです」

「はは、俺のほうこそ」

「でも、もう少し私の事考えてほしいなって」

「俺はいつでもリーナちゃんの事を考えてるよ」

「ふふっ、まあでも今はそれで許してあげます」

「さすがリーナちゃんは良い女だ。じゃあまたな」

「はい、またお店に来てくださいね」


 見送ってくれるリーナに背負向けて、返事の代わりに片手を軽く上げてレドはその場を去った。

 そしてレドが見えなくなると、リーナは家の中へと戻り、蹲る様にその場で胸を押さえた。


「我儘はどっちですか、ほんとレドさんのばか」


 一人呟く彼女の顔は赤く染まっていた。






「ふぅリーナちゃんは小悪魔っぽいのもなかなか似合うな。正直グッと来た」


 一人呟く彼の顔はだらしなく緩んでいた。

























読んでくれてありがとうございます。

サブタイほとんど関係ありません。あと言葉の問題とか突っ込みどころ満載ですがその辺は似た世界って事で、ではまたいつか。


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