田月リョー
よろしくお願いします。
少女はとてつもなく長い滑り台の上にいる。
少女の小さな手は目の前にある鉄の棒を掴んでいた。
腹を下にしたうつ伏せの状態で両足には重りがつけられていた。
少女は必死に体を支えていた。
手を離せば少女は滑り台を落ちていくことが誰にでも理解できた。
滑り台の下には超巨大な水槽がある。
少女が手を離せば、水槽の中で息絶える。
見ている者なら誰でも理解できる。
少女の顔は苦痛で歪んでいる。
少女の息は荒くなっていく。
すると突然、マスクで顔を隠したスーツ姿の男が現れた。
少女のいる反対側の階段を上ってきたらしい。
男は右手に1と書かれた小箱を、左手に2と書かれた小箱を持っていた。
「1と2どっちがほしい?」
男の甘い声が少女の視線を釘つけた。
少女は1の箱を要求した。
当たり前だった。
2の箱からは蒸気がムンムンと出ていたからだ。
「では1をどうぞ」
男は蒸気が溢れ出る箱の中の焼けた石をトングで掴む。
少女の顔は恐怖でひきつる。
少女は泣き出していた。
男側から見ると蒸気の出る箱に1と書いてあり、何もない箱に2と書いてあったのだ。
男は少女の手に焼けた石を押し付ける。
少女は痛みのあまり、手を離してしまった。
少女は滑り台を落ちていく。
悲鳴が耳をつく。
少女が爪を立てるも止まらない。
爪が剥がれて血が流れる。
全ての爪をなくし、血だらけの手で、血眼の形相で落ちていく。
少女は滑り台を経て、とうとう水槽の底へと落ちた。
誰もが少女の死を予感した。
次の瞬間、男が滑り台を走り下りて水槽へ飛び込み、
一気に水槽の水を飲み干す。
ゴクゴクゴクゴクゴク
「ジャーーーーン!!!」
男はおどけた明るい声を出し、少女に手を向ける。
立ち上がる笑顔の少女の手にはどこにも傷が残っていなかった。
「本日は無限の胃袋を持つボクと、超再生の手を持つカジナちゃんでしたーーー!!!」
「それでは来週! まったみーてねーー!!!」
来週までなんて待てない。
「はぁー。今週もリョー様はかっこいいわーーー!」
「あんた何みてんのよ。はやく寝なさいよ」
いつもの母の小言が後ろから聞こえる。
母というものはいつどの時代も娘を理解しないのだ。
ありがとうございます。
実はこのキャラとお話が気に入っていまして
シリーズ化するかもです。