缶詰
高校生活 ホラー
文を書き慣れていないため拙いです。
ご了承ください。
今日こそ彼女に告白する。健全な高校一年生のヨーは意気込む。
ホームルームが終わり彼女は教室を出ると小走りで廊下を進む。真っ直ぐ下駄箱へ向かっている。
彼女の放課後は決まって大忙し。
ヨーはずっと見ていたから知っている。
彼女は朝、登校中に落し物を拾った。
彼女の前を歩く人がポッケから落としたのだからそれは落し物だ。
落し物は缶詰、およそ見慣れた銀色のアルミ製のもののようだ。
スーツを着ていたその人はポッケから缶詰を落としたことに気付かずに学校の前を通り過ぎた。
優しい彼女はきっと落し物を返そうとしている。
ヨーは彼女が通学カバンに缶詰をしまうところも見ていた。
これからスーツの人を探しに行くのだ。
決まってヨーは彼女の後ろをつけて放課後を無駄に過ごす。
彼女はゆっくりと町中をねぶりまわすように歩いて探しに行く。
その悲しげで世の儚さを教えてくれるような青白い顔がヨーはたまらなく好きだった。
この世に未練を残した幽霊を感じさせる。
しかし今日はいつもと違った。
校門を出て右に歩くところを彼女は突然走りだした。
彼女の綺麗な顔はお誕生会の中心で笑顔を振りまく子どもの顔写真を張り付けたような表情をしていた。
後ろからでも表情がわかったのは単に後ろ走りで走っていたからだ。
夕暮れがヨーたちを赤く包み込む。
今日の彼女はとても嬉しそう。
僕が後ろをついているからかな。
彼女はすがすがしい表情もする。
きっと腕も脚も首も全力で空回りさせているからだろう。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
彼女の目はどこを向いているのだろう。
顔はヨーの方を向いているが視線は四方に飛ばしている。
ヨーは知らなかった。
彼女は陸上短距離走の才能があるのかもしれない。
だって赤信号をそのまま走って渡ろうとしている。
ヨーは足を止めたが彼女は進む。
彼女は優しく真面目な人だ。
行動理由は落し物を届けるためだ。
夕暮れは新鮮だ。
ヨーはまた彼女に伝えることができなかった。
もう伝えることもできないが。
それについて後悔はしていなかった。
後悔があるとすれば彼女の落とした缶詰を拾ってしまったことだ。
彼女の通学カバンからたくさんの缶詰がコロコロ道路に散っていった。
ヨーは考える。
僕はこの缶詰を彼女に返しに行かなくてはならないのだろうか。
いや、優しくなんかない僕には返す義理がない。
観察は好きだけど観察されるのが大嫌いなヨーは
拾った缶詰をカバンにしまった。
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