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魔法使いの英雄彈〜二人が英雄になるまで〜  作者: 猫田ねここ
第1章 出会い
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第1章 32 【再会】

再会


「ねえ、どこ行くのー、教えてよー」


「ついてからのお楽しみでございますー」


「えーー」


そんなやりとりをしながらハルとアリスはある場所に向かっていた。


ハルは方向音痴であったが、足取りははっきりしていた。なぜなら、ハルは何度も行ったことのある場所へ向かっているから。


人が賑わう広場を横切り、市場を横切り、だんだんと表通りに近づいていく。


そして、表通りに来た時、遂にアリスの我慢が切れ、ハルの前に回り込むと、ハルのほっぺたを引っ張った。


「もう! どこ行くの? おーしーえーてーよー!」


ついにアリスは強行手段に出た。


「いだだだ。へは、ほうついはし(もう、着いたし)」


「ふえ?」


アリスが驚いてハルのほっぺたから手を離す。と、その時


「お姉ちゃん!? お姉ちゃん!!」


「!? クレト!?」


クレトがアリスの腕の中に飛び込んで来た。


アリスはクレトを抱きながら目を丸くしてハルを見る。


「ここが、クレトが働き口兼新しい家だ」


ハルは目の前の店を見上げる。


そこは書店だった。しかも、ハルが先週魔道書を買ったばかりのお店だった。


「そうなんだ。話には聞いていたけど。しっかり働いてる?」


「うん! 頑張ってるよ!」


クレトは親もなくしていて、引き取り手もいなかった。


さて、どうしようと悩んでいた時に、エサルの計らいでこの店で引き取ってもらうことになったのだ。


まぁ、条件付きで、働いてくれるなら、ということだったが。だけど、ハルはこの店の店主のことをよく知っていて信用していたので、アリスもクレトも了承して、ここの店主にクレトを引き取ってもらうことにしたのだった。


だから、アリスとクレトが会うのは一週間ぶりだ。


「お姉ちゃんこそ、元気!? 怪我は!?」


「大丈夫。仕事はどう?」


「楽しいよ!」


アリスとクレトはニコニコ笑いながら話をしている。微笑ましい光景だった。


すると、クレトの声を聞きつけたのか、店の中から、店主が出て来た。


「おう、ハル」


「こんちわ」


「あ、こんにちは。この度はクレトを引き取っていただきありがとうございました」


アリスが慌てて店主に頭を下げる。


「クレト、こちらがお前の言っていた…?」


「うん! そうだよ!」


「ほう、話に聞いてた通り、美人だな」


店主は顎に手を当ててアリスを見る。


「まぁ、一度会ってみたかったしな。茶でも出してやる。取り敢えず、中は入れ」


「はい、お邪魔します」


「うぃーすっ」


店主は少し笑うとアリスを快く中に入れた。


中に入ると、先に入っていたクレトが早く、早くとでもいうように手招きをしている。


「おじさん! どのお茶入れればいいの?」


「1番上の棚に入ってるやつだ!」


店主は店の奥に2人を招き入れた。


「遠慮せずに座ってくれ」


「あ、ありがとうございます」


アリスは椅子を勧められて、座る。ハルは勧められる前にもう座っている。


「あと、敬語は使わなくていい。一応、クレトの親っていうことになっとるし。クレトの姉ちゃんも、俺を親って思ってくれてもいいし」


「!!」


アリスはそれを聞いて、言葉が出なかった。だが、店主はそれを逆の意味に捉えて慌てて言い直す。


「あ、けど、別に嫌だったらそんなこと思わなくてもいいからな?」


アリスは慌ててかぶりを振った。


「ち、違うんです。ただ、その、嬉しくて…」


アリスの目は涙で光っていた。


と、ちょうどその時、クレトがお茶を持って部屋に入って来た。


「!? おとうさん、お姉ちゃん泣かせたの!?」


「わわ、違うよ。クレト」


アリスは慌てて涙を拭う。そして、クレトに笑いかけた。


クレトはそれを見て安心したのか、みんなにお茶を配り始めた。


「クレト、器用になったな」


「でしょでしょ。もっと褒めていいよ?」


「可愛くねぇな!」


ハルが盛大に突っ込む。


その途端、店主とアリスが笑い出した。それにつられて、ハルもクレトも笑い出した。


「あの、その、名前を教えていただいても?」


アリスがふと思い出したように言う。


そういえばハルもこの店主の名前を知らなかった。


「悪りぃ悪りぃ。俺の名前はロタだ。

テキトーに呼んでくれ」


「分かりました。じゃあ、ロタさんで」


「おう、よろしくな、アリス。 しかし、こんな可愛い娘ができるなんて。 こりゃ、自慢だな」


ロタが少しデレデレで言う。


それからは、お茶しながらいろいろな話をした。


そして、ハルとアリスはクレトと、またこの店に来ることを約束してから、店を出た。


「すっかり長居しちゃったな。 にしても腹減った。どっかでなんか食べるか?」


「そだね。じゃあ、ハルのお勧めがいいなー」


「おっけー」


ハルはアリスをお勧めの店に連れて行った。


そこは、海鮮類がとても美味しいお店で、ハルとアリスは海鮮丼を食べた。アリスはどうやら気に入ったようで、ハルとアリスはまたこの店に来ることを約束した。


一般的にはそれはデートの約束、というがハルとアリスは全く気づかず自然に約束していた。


そして、いろいろな店を回ったり(少々迷いながら)、買い物をしたりと2人は存分に楽しんでから、最後に武器屋へ行き、ピカピカに研磨されたアリスの剣を取りに行くと、レイナルン魔道学園に戻っていった。


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