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魔法使いの英雄彈〜二人が英雄になるまで〜  作者: 猫田ねここ
第1章 出会い
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第1章 31 【装備】

装備


そしてデート、ではなく約束の日


ハルは王都の時計台の前で立っていた。アリスとの待ち合わせ場所だ。


今は丁度10時になったばかりである。待ち合わせの時間は10時だから、もうすぐアリスも来るだろう。


「ふわぁ、たく、トムラの野郎め。寝不足になったじゃねえか…」


ハルは大きくあくびをする。昨日トムラからのデートのレッスンは夜遅くまで続き、少し眠かった。


ハルは30分近く前からここに来ていた。来ていたというより追い出されたという方が近いが。


どうやら女の子と出かける場合は男が先に待ち合わせ場所にいなければならない、という暗黙のルールがあるそうだ。


「ねえねえ、お兄さん、今1人? 暇なら私たちと…」


と、アリスを待っていると、女性に声をかけられた。


「すいません、人を待ってるんで」


というこのやり取りも何度もしていた。さすがにこのやり取りも疲れて来た。


ハルが時計を確認すると、待ち合わせ時間を15分ほど過ぎていた。


さすがに何かあったのではと心配になって来たとき、


「ハル!」


アリスが小走りに時計台に駆け寄って来た。アリスは走って来たのか頰が赤くなっている。


アリスはハルのもとまで来ると、膝に手をついて息を整える。


「ごめん、待ったよね?」


「いや、大丈夫だよ。それよりなんかあったのか?」


「えっと…なんかみんながこういう時は遅れていくもんだ! ってなかなか寮から出してもらえなくて…」


その時、ハルはようやくアリスの姿をはっきりと見た。そして、思い切り見とれてしまう。


「えっと、へ、変かな?」


アリスが少し照れながらいう。


「い、いや全然」


アリスは白が基調のワンピースの上に水色のカーディガンを着ていた。ワンピースはノースリーブで青色の花がちりばめられた綺麗な服であった。しかも、丈が短く、ワンピースから出た白い手足が眩しかった。


ちなみにアリスは剣を装備している。どうやらハルとトムラのお得意の店で研磨してもらおうと考えていたらしい。綺麗なワンピースに剣という不思議な組み合わせが逆にアリスを目立たせていた。


他の人たちもアリスを見て驚いている。何より、美しい銀髪であり、綺麗なダイクロイックアイをしていたからであろう。


「髪型変えてみたんだ、どうかな」


アリスは銀髪を手でくるくるしながら言う。アリスはいつもと違って長い銀髪を横で1つに束ね、髪飾りをしていた。


「うん、似合ってるよ。それはアリスの服?」


「ううん、これはルミスの服。貸してもらったんだ」


「そうか」


「それより、ハルも似合ってるね、その服」


アリスもハルを眺めてそう言う。ハルはトムラから貸してもらった服を着ていた。


「正直、服に着せられてる感ハンパねぇーけどな」


ハルはシャツの上に黒いパーカー、そしてジーンズといった、トムラの見立てた服を着ていた。


あまりがちゃがちゃしたのは嫌だったので、シンプルなものにしてもらったのだ。


「そんなことないよ!かっこいい。それに、すごく大人っぽい」


アリスが微笑んでそう言う。アリスの頰はなぜだかまだ少し赤かった。


「じゃ、じゃあまずは武器屋に行くとするか」


「うん!」


ハルは少し恥ずかしくなり、慌ててそう言うとアリスとともに剣を取りに向かっていった。





「こんちわー」


ハルは武器屋に着くと、店主がいなかったので、店の奥に向かって叫ぶ。


だが、返事はない。


「こ、ん、に、ち、は!!」


「…るせぇ! 聞こえてるよ!」


店の奥からようやく店主が出てきた。手にはハルの剣を持っている。


「たく、お前せっかく研磨した…のに…」


店主のハルへの文句が途中でつっかえた。原因はハルの後ろに立っていたアリスだ。店主はぽかんと、アリスを見ている。


「えっと、こんにちは。初めまして、アリスといいます」


「お、おう。て、おい、坊主。この子はお前の彼女かなんかか?」


「いえ、学園のクラスメートです。それより、先日は剣を取りに行けなくてすいませんでした」


ハルは店主がアリスを見て混乱しているうちにささっと、謝罪する。


「…あ、ああ」


店主はアリスに目を釘付けにしながらもハルに剣を手渡す。そんな様子をアリスは面白そうに眺めている。


「アリス、剣」


「ん、忘れるとこだった。店主さん、私の剣も研磨をお願いしたいんですけど、いいですか?」


アリスがそういった途端、店主の顔が輝く。その顔はハルが今まで見たことのないくらいやる気に満ちていた。


「おう、もちろん。昼には終わらせてやる!」


「! ありがとうございます!」


アリスはぴょこんと、頭を下げてから店主に剣を手渡す。


「てか、俺の時と扱い違いすぎじゃ、ないですかねー?」


ハルが店主をジト目で見てみるが、店主は素知らぬふりだ。


「じゃあ、夕方くらいに取りに来ますね」


「おうよ、坊主。なんだか知らねーがとにかく頑張れよ」


ハルは研磨された剣を腰に下げた。そして、店主の謎のエールに首を傾げながら、アリスとともに店を出ていった。




「えーと、次は、アリスの装備か」


「うん、付き合わせちゃってごめんね」


「いやいや、大丈夫。と、ここの店だ」


ハルとアリスは道具屋に来ていた。この道具屋は防具や剣の他に服も売っているそうだった。


ハルもここに来るのは初めてで、昨日トムラにこの店を紹介してもらった。


しかし、なぜ方向音痴だったはずのハルがたどり着けたかというと、昨日みっちりトムラに道を教え込まれたからだ。


さすがに昨日あれだけみっちりやられれば、方向音痴でもたどり着けるらしい。


「取り敢えず、入るか」


中に入ると、まずは色とりどりの装備や服が目に飛び込んできた。


「わぁ、すごい!」


アリスの目はやはり女の子だけあって、服に目が釘付けになっている。


「何かお探しですか?」


と、すぐに店員がとんできた。


「えっと、私の装備を一式揃えたいんですけど…」


「わかりました。それでは、まずは…」


どうやら店員が大体の服から防具まで見立ててくれるようだった。アリスは店員にあれこれ質問され、それに答えている。店員はそれを聞きながら装備を選ぶようだ。


ハルは特にやることもなかったので、店内を回ってみることにした。


それからハルがブラブラすること20分。


「あ、彼氏さん!彼女さんの装備決まりましたよ!」


「ふえっ!? あ、はい」

ハルは店員の勘違いに動揺した。


「今丁度試着しているんで、どうぞ見てあげてください」


「わかりました」


そして、ハルは店員に連れられ、店の奥の方へ入っていった。


店の奥の方には試着室があった。


「では、こちらでお待ちください」


店員はそう言うと、試着室に入っていった。そこにアリスが入っているらしい。


ハルは試着室の近くにあった椅子に座って待つことにした。と、そんなに時間がたたないうちに試着室のカーテンが開い開けられた。


まずは店員が出てきて、それに続くようにアリスが…


「…!」


ハルは思わず息を飲んだ。アリスは美しい女剣士そのものだった。


「えっと、お待たせ! 変かな?」


アリスがはにかんで笑う。


アリスは白と青を基調にした服とスカートに、白いブーツ。そして、軽そうな胸当てとグローブなどなど、軽い最低限の装備をしていた。


ハルが予想していた通り、アリスはスピード重視な部分があるので、極力防具の重さは減らしたらしい。


「彼女さん、とてもお綺麗ですねー。すごく似合ってますよ」


店員がニコニコ顔でハルに話しかける。というか、ニヤニヤ顔で。


「彼氏さん、どうですか?」


「う…。その…すごく似合ってる…と思う…」


ハルは自分の顔が赤くなるのを感じていた。だが、ハルがそう言った途端、アリスの顔がパァっと、輝いた。


「本当に!?」


「あ、ああ」


肯定すると、アリスははにかむように笑った。ハルもそれにつられて笑う。


「それでは、こちらでよろしいということで。では、お値段ですけど…」


店員が営業スマイルで値段を言う。思っていたよりも少し高かったが、どうにか予算内に収まった。


アリスは自分の服に着替え、代金を払うと、防具と服を受け取る。


「ありがとうございました」


店員が深々と一礼する。


「と、それ持つよ」


ハルはアリスが防具や服が入った袋を少し重そうに持っていることに気づいた。


「え、いいよ。私のだし?」


「いいから、いいから」


アリスがなかなか譲らないのでハルは少し強引に袋を持つ。


「うわあー、もう! でも、ありがと!」


アリスは袋を奪われたことが不服のようだったが、それでも、嬉しそうに礼を言った。


「なあ?」


ハルは思い切って気になっていてことを言ってみることにした。


「ん?」


「あの服、スカート短くないか?」


実際派手に動けばあの長さだと見えそうだった。考えてみれば、女子生徒の装備は大抵が短パンだったりするので、スカートはあまり見ない。


つまりは危険だと思われる。


「…」


アリスは思わず立ち止まってハルの顔をじっと見る。


「…」


ハルも立ち止まったはいいがどうしたらいいのかもアリスがなぜ黙ったのかも分からず、思わず口を噤んでしまう。


2人の間を微妙な沈黙が流れる。と、


「…ぷは! あはは!」


アリスが急に笑い始めた。しかもお腹を抱えて。


「???」


ハルが戸惑ってオロオロしている間にアリスの笑いは収まった。


「さすがに私だってあんな危険なのはかないよ! キュロット! 知らない?」


「えっと?」


「もう、私だって白の牙にいたけどそれくらい知ってたよ? スカートの下はズボンになってるの!」


「え…、そなの?」


「そうなの!」


アリスは再びクスクスと笑った後、思い出したようにハルに聞いた。


「ところで、これからどうするの? お昼ご飯でも食べてくの?」


「それもいいけど、その前にちょっと寄りたいところがあるんだ」


「?? どこ?」


「それはついてからのお楽しみということで!」


ハルは不思議な顔をしているアリスにいたずらっぽく笑いかけた。

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