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魔法使いの英雄彈〜二人が英雄になるまで〜  作者: 猫田ねここ
第1章 出会い
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第1章 30 【交わる視線】

交わる視線


「おはよー、トムラ」


「おう、はよー」


食堂でハルはトムラと挨拶を交わす。そして、いつも通り、トムラの横に座る。


「…お前、なんか目赤くねぇか?」


「そ、そんなことないと思うが」


「ふーん、ならいいけど」


トムラはあっさりと追求をやめて、朝食のエッグパンにかぶりつく。


ハルもそれを見て、自分の朝食、カレィパンを頬張る。だが、内心はヒヤヒヤだった。あの後、ハルがアリスに抱かれて号泣した後、顔を洗ったりと努力はしたが目の腫れは引いてくれなかった。


トムラは追求しないでくれたが、ハルは思いっきり泣き顔だった。


しかも、あの後うやむやな感じでアリスと別れてしまい、まだお礼すら言えていなかった。それに、まだ出会って一週間もたたない相手に抱かれて号泣しただなんて、恥ずかしかった。


ハルはアリスに会ったら、なんて言おう、とか顔合わせづらいなー、とかそんなことばかり考えていた。


「ハル、トムラおはようかな」


「おう、おはよー」


朝食を食べていると、シャルロットがお盆を持ちながらハル達の席の方に近づいてきた。どうやら、相席を望むようだ。


シャルロットは細いわりに、けっこう食べるので、ハル達の2倍くらいの量の朝食がお盆に乗っていた。


そして、シャルロットが近づいてきてから気づいた。


シャルロットの後ろに銀髪の誰かさんが申し訳程度に少し隠れていた。


もちろん、アリスである。


「いつまでそうしてるのかな」


「ふわわあ!」


そんなアリスをシャルロットがちらりと見ると、さっと、自分自身が右に避ける。


すると、アリスは隠れ場所を失い、まともにハルやトムラと目が合い、気まずそうにする。


「おー、おはよー。シャルロットは今日は早いんだな?」


「うん、たまたまかな。シーナはまだ起きてないからおいてきちゃった」


トムラとシャルロットはアリスのことをすっかりハルに任せて2人は2人で会話を始めてしまう。


シャルロットはすでにトムラの前に座っていた。


あと空いている席はハルの前だけ。


「…えっと、取り敢えず席座ったら…?」


「ん、そうだね…」


アリスはぎこちなくハルの前に座る。


そして、小さく手を合わせ、いただきますと言ってから朝食のクロワッサンをちまちまと食べ始める。


2人の間を微妙な沈黙が流れていく。


だが、すぐに二人とも限界がきた。


「ぷは、この沈黙耐えらんねー」


「…、そうだね。お互い気にしすぎかな?それより、目、大丈夫?」


「う…やっぱり目立つかな?」


ハルはすこし目を触る。触るとこすったためか少しヒリヒリした。


「て、そんなことより!」


ハルは自分で自分に突っ込むと、アリスに向き直る。そして、がば、っと頭を下げる。


「さっきは本当にありがとう!まじで救われたわ」


「あわわ、そんな、えっと、その」


アリスは両手を無意味にブンブンと振って困り顔だ。


「なんの話かな?」


「気になるますなー」


隣ではトムラとシャルロットが面白そうに2人を見ている。


2人だけではなく、食堂にいる生徒全員が何事かとハルとアリスに注目していた。それもそのはず、学園の首席が、編入銀髪美少女に頭を下げるという、不思議な光景であった。


アリスはその後、アワアワと何かを言っていたが、やっというべき言葉が見つかったようで、ハルの目をまっすぐ見て、微笑む。


「えっと、役に立てて嬉しいです」


そのアリスの微笑みにハルは思い切り見惚れる。その瞬間ハルとアリスの視線が交差する。それが何秒続いただろうか。ついにアリスが耐えきれなくなり、思い切りハルから顔をそらす。


「ちょ、そんな見つめないでよ!」


アリスは自分の手で顔を隠しているが、赤く上気した頰は隠しれていなかった。


「えっと、わ、ごめん」


ハルの顔も途端に赤くなる。


「うおーい、お二人さんー」


「何やってんの、かな」


顔が真っ赤な2人組みの隣では、トムラとシャルロットが冷やかしていた。





それから、約一週間後。アリスの学園生活初の休日。そして、ハルとの約束の日、の前日


「なんで、そんな私服しかないんですの!?」


「えと、それはエサル師が必要最低限の服を選んでくださったので。オシャレ系の服なんて…」




「そもそも、休日デートに制服で行く!?バカじゃねぇの!」


「いや、だって。いつも制服で行っていたし?」


ハルとアリスの部屋からそれぞれ怒号が聞こえている。明らかに近所迷惑だが、誰も指摘しない。なぜなら、とばっちりを食らう確率大だから。


「取り敢えず、みんなの服を貸しあおうかな」


「だねだね!賛成!」


「アリスはなんでも似合いそうね!」


「ふっふっふっ、完璧に仕上げて差し上げます、ですの」


4人が不敵な笑みを浮かべる。


そんな4人をみて、アリスは嫌な予感がした。


「え、ちょっと、皆さん…?」


アリスはオロオロと皆を止めにかかるが遅かった。


「レッツ、トライ!」


「「「イェーイ!!!」」」


乙女たちは時には獣になることをアリスはこの日学んだ。




「よし、こんなもんか?」


「…ぜってぇー変だと思う」


ハルはトムラの服を着ていた。ハルはそんなに服に興味はなく、休日出かける時に制服を着て行くくらいだから、ろくな服がなかった。


だから、トムラの服を借りることになった。トムラは意外といろんなジャンルの服を持っていて、オシャレなようだった。


ハルは鏡で自分の姿を写してみるが似合っていないような気がした。


「いや、似合ってるぞ。それに、向こうは向こうで気合を入れてるみたいだからな。こっちも頑張んないと」


さっきからアリスの部屋の方から楽しそうな声と、悲鳴が聞こえていた。


女子怖し。


「あとは、そこに正座!」


トムラがビシッと床を指す。ハルは反射的にそのまま床に正座してしまう。


「これから、お前にデートの仕方のあれこれを教えてやろう」


トムラが、ふっふっふっと不適に笑う。


「別に、デートじゃ、ねえんだけれど…」


「男と女が、休日に出かける!それも、女の子の服選びだと!?それをデートと言わずしてなんという!?」


「服じゃなくて、装備…」


「あぁ、うるさい、とにかく教え込んでやるんだよ!」


その日、寮はいつになく騒がしかった。

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