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魔法使いの英雄彈〜二人が英雄になるまで〜  作者: 猫田ねここ
第1章 出会い
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第1章 28【心の叫び】

心の叫び


「ねぇ、ハル!ねえってば!」


「え…?」


気づくと、村の子供達が不思議そうにハルの顔を覗き込んでいた。


そこは村の近くの野原だった。


「あれ、俺…」


「ギャハハ!なに?寝ぼけてんの?それより早く遊ぼうぜ!」


「そうだよ!早く早くぅ!」


「うん、そうだね!」


ハルは少し違和感を感じたが、一緒になって村の子供たちと走り出した。


だが、何故かハルは子供たちに追いつけない。どんなに走ってもどんどん差が開いていった。


「ちょっと、待ってよ!」


ハルは息を切らしながら叫ぶ。だが、子供たちには聞こえていないようで、ハルは置いていかれてしまう。


と、その時子供たちの前に黒い闇が出現した。ハルはそれが何かわからなかったが、直感で危険なものだと分かっていた。


「待って!そっちはダメだよ!!」


それでも子供たちにはその闇が見えていないようで、ハルがどんなに叫んでも、だれも足を止めてはくれなかった。


「あ…!」


そして、子供たちは次々と闇に飲まれていき、姿が消えてしまった。


ハルは慌てて子供達を探そうとして全力で走ったが、思い切りつまずいて転んでしまった。


「っあ!」


ハルは思い切り転がり手をつく。が、手をついた地面は野原の草ではなく、木の床だった。


ハルが驚いて辺りを見渡すと、そこはハルの家だった。


「ハル?どうしたの?」


目の前には母のユリスが優しげな微笑を浮かべながら立っていた。


「母さん…?」


ハルは困惑しながらユリスを見上げた。その時、ユリスの後ろに白いマントを着た男が剣を振り上げているのが見えた。


「!!母さん、危ない!!」


「え?」


ユリスが驚いて後ろを振り向いた瞬間、剣が振り下ろされ、赤い血がパッと舞った。


「母さん、母さん!」


ユリスが力が抜けたように倒れてくる。


ハルは泣きながらユリスに飛びつく。だが、ユリスはもう死んでいた。


「うく、ひぐ…」


ハルは涙を流しながら上を見ると、白いマントの男が剣をハルに向けて振り上げていた。


ハルはなんとかその剣から逃れようとするが、ハルの身体は少しも動かない。


ハルは怖くて怖くて、叫ぼうとするが、声も出ない。そして、剣が振り下ろされーー






「っうわあぁあ!」


ハルは飛び起きた。全身汗だくで、はぁはぁと、荒い息をつく。


そこはハルの寮の部屋だった。


ハルはふと頰に触れてみると、涙が流れていた。


「夢か…?」


ハルは呟くと、大きくため息をついた。


ハルがこの夢を見るようになった原因はわかっている。あの、村が襲われ、母が死んでからハルはよくこの夢を見ていた。いつも同じ夢だった。だが、


「くそ、思い出せねえ…」


ハルは頭を抱える。あの日の夢だということは分かる。だが、いつもすぐに夢の内容を忘れてしまうのだ。どんなに思い出そうとしても、記憶に霧がかかったように、思いだせない。


ただ、とても悲しく恐ろしい、ということだけはいつも感じている。


ハルにはあの日の記憶はほとんど残っていない。


あの惨劇の日、母さんも村のみんなも死んだ日、ハルは生き残った。


そしてその後、放心状態で座り込んでいるところを衛兵に保護された。


それから、ハルは色々と衛兵から聞き取り調査をされたが、ハルがなにも覚えていないこと知ると、恐らくショックで記憶が消えたのだと結論づけられた。


そして、その後ハルは、遠い親戚のところに引き取られ、今に至る。


このことを知っているのはエサルと、親友のトムラだけだった。


「今、何時だ…」


ハルは頭を少し振って悪夢の残り香を払うと時計を見る。まだ、夜中の3時だった。ランニングに行く時間にしては早すぎるので、もう一度寝ようかと考えたが、そんな気分になれるはずもなくハルはシャワーを浴びることにした。



だけど、シャワーを浴びて体はすっきりしたが、もんもんとした気持ちは消えなかった。





「っっは!」


アリスははっと、目が覚め飛び起きた。


そこは自分の部屋の床だった。


アリスは頭に手を当てて何故自分がここで寝ているかを思い出してみた。


すると、頭にモヤがかかっていたのがだんだん晴れてくる。


「えっと…昨日部屋に帰って…それから…そう、確か…右腕が…」


アリスは呟きながら昨日の記憶を手繰っていく。そして、大体のことを思い出すと、慌てて右腕を見た。


それは、いつものアリスの細い腕だった。そこには龍化の時に表れる紋など浮かんでいなかった。


アリスは腕の後ろの方までよく見て見るが、いつもの自分の腕だった。それに、あれほど痛みがあったのに今は全くない。


アリスはゆっくりと立ち上がって右腕以外も動かしてみるが、異常はなかった。


異常がないとわかった途端、アリスはため息をつく。


これも、いつも通りだった。いつも、それは急にやってきて急に終わる。


アリスはまたため息をついて、ベッドに座り込む。


「私は、どのくらい生きてられるのかな…」


アリスは誰に問いかけているわけでもなく呟く。もしかしたら自分に問いかけているのかもしれなかった。


「私、死にたくないよ…。助けて、ハル…」


アリスはこの前出会ったばかりの友達たちの顔を思い浮かべる。アリスはこの学園に来てから、なくしたくない人がたくさんできてしまった。


だからこそアリスは悲しくて涙を流す。アリスの綺麗なダイクロイックアイから雫が流れ落ちる。


そんなアリスのSOSにまだ誰も気づいていなかった。

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