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魔法使いの英雄彈〜二人が英雄になるまで〜  作者: 猫田ねここ
第1章 出会い
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第1章 27 【記憶】

記憶


「ハルー、夕食食べにいこーぜ」


「おー、ちょっと待ってくれ」


トムラがハルの部屋を訪ねてきたのはハルが丁度魔道書の解読に当たっていた時だった。


ハルは魔道書を閉じるとトムラと一緒に食堂へ向かった。


結局のところあの魔道書は1ページどころか1文字すら読めておらず、全く解読は進んでいなかった。


一応何かパターンなどはないかと思いつく限りのものをノートに書いてみてはいるが、全く分からなかった。


さすが、王国の解読士が総出で解読に当たっても解読できなかっただけはあった。


「で、あの魔道書どうすんの?」


「うーん、まぁ、出来るとこまではやってみっけど多分無理だなー」


ハルは悔しいがお手上げ状態だった。


「そうなのか。お、今日のオススメはビーフシーチューか」


ハルとトムラはメニュー板の前で真剣に悩んでいた。


「お前何食う?」


「うーん、このイワシ定食も捨てられないんだよなー」


「これ美味そうだよな」


ハルとトムラはメニュー板の前で散々迷った挙句、ハルはイワシ定食、トムラはビーフシーチューを頼んだ。


そして、2人は端の方の席に座った。


「いただきます」


ハルが律儀に手を合わせてからイワシ定食に手をつける。ハルはまずミソスープから食べ始めた。


「なあなあ、お前らって実際のところどこまでいったの?」


「ぶほぉ!?」


食べ始めた途端トムラが急に変なことを言い出したので、ハルは思い切り、啜っていたミソスープを吹き出してしまった。


「おま、汚ねぇな!」


「お前のせいだろ!」


ハルは慌ててふきんで机をふきながらトムラに文句を言う。そのハルの顔は真っ赤だった。


「てか、なんで、は?」


ハルは完全に混乱していた。


「いやー、いろいろ噂流れてるぜ?なにせ学園1位のイケメン優等生と、その優等生に助けられた美少女編入生だぞ。噂にならないわけがないだろ」


「まじかよ。アリスに迷惑かからないかな?」


「さぁ?お前はともかく、アリスも鈍いとこあるみたいだし?それにアリスの周りには頼もしいやつ沢山いるから大丈夫だと思うぞ?」


「それならいいんだけど」


ハルは少し安心しながらも、明日、アリスに話を聞いてみようかな、と思った。


「それで、その噂の内容は?」


「ふっ、教えないー」


トムラがニタニタと笑う。


「ちょ、おい!」


「まぁ、自分で調べるんだな、優等生君ー」


トムラはのんきにビーフシーチューを、食べている。


ハルはそれを見て諦めたようにため息をついた。


だが、ハルはふと思いつき、ニヤリと笑った。


「ところで、お前とルミスってどこまでいってるのかな?」


完全に仕返しである。


「ごばぶぁ!?」


トムラは飲みかけていた水を盛大に吹き出した。


「ぶははは!お前、顔真っ赤だぞ!?」


「な、これは水が変なとこ入ったから!てか、誰があんなやつ!」


今度はトムラが顔を真っ赤にしながらふきんで机を拭いている。と、その時


「誰があんなやつですの」


「ぎゃあ!?出た!」


トムラの後ろには不機嫌顔のルミス、そして困ったような顔をしたミィリアが立っていた。


「ちょっと、その話詳しく聞かせていただいてもよろしいですの?」


ルミスの口角がヒクついていた。普通に怖かった。


「いや…その…」


ハルは不穏な空気を感じ取ると、そそくさと夕食を平らげた。


そして、後ろで1人にする気!? と叫ぶミィリアを置いてさっさと自分の部屋に戻っていった。






ハルは自分の部屋に戻りシャワーを浴びると、月が綺麗だったのでベランダに出た。


丁度風が出てきて、少し寒いくらいだった。ハルの少し濡れた髪が風になびく。


「こんなゆっくり出来るのも久しぶりだな…」


ハルはポソリと呟く。


最近は魔人討伐も学園の生徒が駆り出されるほど酷いものも起こっていなかったので、とても平穏だった。


魔人討伐は命のやり取りになるし、魔人を倒すのも、精神的にきつかった。


別に断ることもできるのだが、魔人討伐は危険を伴うので参加するものは少ない。


ハルは優しかった。だからこそ断ることはできないのだ。


そんな時にハルの生活に急に飛び込んできたあの少女、アリス。まだ、会って間もないのになぜか気になる。


「恋、な訳ないよなぁ……」


ハルはこんな気持ちになったことが無いのでよくわからなかった。はてさて、恋なのか、ただ気になるだけなのか。


だけど、ハルはアリスのことが心配だった。アリスはハルや友達と一緒にいるときはただの可愛らしい少女だ。少し美人すぎるが。


だけど、たまに。ほんの時々アリスは普通の少女の眼じゃないような眼をする時がある。


なんというか、冷たいような、悲しげのような、辛いような、儚げのような。


そんな眼をしている時がある。そんな時ハルは不安になるのだ。なぜだか、アリスがアリスではないような気になるのだ。


「といっても、まだ出会ってから全然たってないんだよな…。俺はまだアリスのことを全然知らない…」


ハルはアリスのことを全然知らない。アリスの過去も知らないし、白の牙にいた時のことも知らない。


一度、一度だけそれとなくアリスの過去に触れてみたことがあった。


だけど、アリスは静かに、けれど確かに拒絶した。あきらかなほど拒んだのだ。


「そりゃ、まあ。会ったばかりの男なんかにそう簡単に話すわけないよな…」


そうは言っても自分が信用されていないような感じがして寂しかった。だけれど、ごちゃごちゃ考えていてもどうにもならない。


「はぁー…」


ハルは大きくため息をつく。


と、その時、風がひときわ強く吹く。ハルは寒くなったので慌ててハルは部屋の中へ戻った。


そして、やることもなかったので今日はもう早く寝ることにした。


ハルは布団にくるまりつつ、いっそのこと明日もう一度アリスに話を聞いてみるか、とも思うが、アリスとの関係が気まずくなるのも怖かった。


やはり、アリスが話してくれるまで待つべきか。


そんなことを考えながら、いつもは寝るまでに時間がかかるのに今日だけはすぐに瞼が閉じてきた。


ハルは疲れてるのかな、とそんなことを考えながら眠りに落ちていった。


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