第1章 20 【夕食】
夕食
「えーっと、325、325、あったあった」
ハルとアリスは荷物を持ってアリスの部屋に来ていた。
アリスの部屋はロビーに一番近い、女子寮の一番端の部屋であった。
「私、女子寮と男子寮って建物ごと分かれているんだと思ってた」
「ははは、俺も最初おんなじこと思ったわ」
女子寮から見ると、男子寮はロビーを挟んで向かい側にあった。
「ここは、第二女子寮。で、ロビーを挟んで向こう側が、第二男子寮。1階、2階が、1年生。3階、4階が俺たち4年生の寮だ」
「じゃあ、さっき通った第一女子寮と、第一男子寮は2、3年生が使ってるんだ?」
「そゆこと」
2人は立ち話もあれなので、早速アリスの部屋に入った。
「おじゃましまーす。わぁ、結構広い!」
そう言うアリスの目は心なしかキラキラとしていた。
「えーっと、歓喜に浸るのは後にして、いろいろ説明するぞ?」
「あ、ごめん。ついつい…」
そして、ハルはアリスに大体の部屋の設備の使い方を説明した。
「それで、1階に食堂が2つ。これはどっちも使っていいぞ。あと、風呂場は2階な。食事も風呂も、自分の部屋で済ませてもオッケー」
「ありがとう。あ、あと、ハルの部屋番号教えて」
「えっと、302だから、ロビーから数えて2番目の部屋だ。結構近いぞ」
「!良かった。ちょっと安心した」
その途端、アリスの顔がほころんだ。
「うし、そろそろ夕食の時間だ。一緒食べに行くか?」
「あ、うん。ちょっと待って。荷物置いてく!」
アリスは慌てて荷物を置きに部屋の奥へ入っていった。
その顔が嬉しそうに笑っているのを見て、ハルはとても安心した。最初のアリスはあまり表情に変化がなく、暗かったので、少し心配していたのだ。
「ごめん、お待たせ」
「よし、じゃ、行こう」
そうして、ハルとアリスは食堂に向かっていった。
ハルとアリスが食堂に入った途端ざわめきが起こった。
「えっ、あの噂本当だったの!?」
「めっちゃ美人じゃん、俺好みかも!?」
「かわいいー!」
と、あちこちで話し声が聞こえる。
「えっと…、夕食部屋で食べよっか?俺作るぞ?」
「うーん、ハルの手料理食べてみたいけど、食堂に入ったのに食べずに出て行くの変かも…」
「それもそうだな…」
ハルとアリスは窓際の方の席を取ると、夕食のメニューを見にいった。
その間にも生徒がチラチラとアリスに視線を向けていた。
「えっと…なんか嫌いなもんとかある?」
「ううん、特には。ハルと同じのでいいよ。」
「そっか。じゃあ、エビフーライ定食2つで」
ハルはアリスの分も一緒に注文した。
「はいよ、ちょっと待っててね」
食堂の従業員も、アリスのことを好奇の目で見ていた。
そして、しばらく待っていると、エビフーライ定食が2つ出て来た。
「はいよ」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
アリスもハルに習ってお礼を言うと、お盆に乗った定食を持って席に戻った。
「ねぇ、ハル。今思ったんだけど、お金はいいの?まだ、払ってなかったよね?」
「ん、食堂のご飯は何食べても無料だ。それに、生徒は1ヶ月ごとに決まった額のお金が支給されるから、生活に問題ないしな」
「すごい!なんか、夢のような学園」
「その分、この学園卒業したら、国の為に働けってことさ。さてと、いただきます」
「いただきます」
ハルはまず、エビフーライに。アリスは白いお米に手をつけた。
「んー、美味しい。炊きたてっておいしい」
「だろだろ?」
「私こんなご飯久しぶりー」
アリスがとてもおいしそうに食べるので、ハルまで嬉しくなった。
「ハルはいつも、自分で作って食べてるの?」
「うーん、朝ごはんはいつも作ってるかな。でも、昼と夜は大抵食堂で食べてる。ほとんどの生徒は食堂でご飯食べてるし」
「そうなんだ。私、ここのご飯気に入っちゃった」
そんなことを話しているうちに、2人とも、夕食を、食べきってしまった。
「ごっそさん」
「ごちそうさまでした」
アリスはちょこんと、手を合わせていった。その姿が可愛らしかった。
「さて、部屋に戻るか。学園の案内はまた明日な」
「うん」
2人はそう言うと、お盆を片付けに行った。




