第1章 19 【ペンダント】
ペンダント
「えっと、まずアリスはハルと同じ、4年生のAクラスに入ってもらうわ」
「はい」
「あと、分からないことがあったらハルに聞きなさい。はい、これはあなたの部屋の鍵。ハル、案内してあげて」
「分かりました」
エサルがアリスに部屋の鍵を渡すと、アリスの表情が明るくなった。自分の部屋と聞いて、嬉しかったようだ。
「あと、アリス。これからは極力龍化 はしないで」
「何故ですか?」
「龍化は危険だからよ。生気を奪われるみたいだし。それにそんな力があると他の生徒に知られたら…」
「マズイですね…」
ハルもエサルと同じ思いで相槌をうつ。
「分かりました」
「と、忘れるところだっわ。アリスの荷物は取り敢えず備品室に置いてあるの。それを取りに行って頂戴。ハル、案内よろしく」
エサルはハルに備品室の鍵を渡した。
「えっと、なんか色々ごめんなさい」
「いや、いいよ。それに同じ学年なんだし。遠慮はいらないよ」
ハルとアリスは備品室に向かいながら話してい
「まぁ、分かんないことがあったら聞いて。あと、その堅苦しい敬語やめろよ」
「え、でもハルさんの方が年上ですし…」
アリスが遠慮がちにそう言う。
「でも、これからはクラスメートなんだし。あ、あとハルさん、じゃなくてハルでいいよ」
「…、ありがとう。ハル」
アリスは可愛らしく微笑んでそう言った。
「と、備品室はここだ」
いつの間にか備品室に来ていた。
ハルとアリスは鍵を開けると備品室の中へ入っていった。
「えーっと、荷物、荷物ー。お、これか?」
アリスの荷物は備品室の机の上に置いてあった。
荷物はアリスの持ち物以外にも、大きなバッグが置いてあった。
「どうやら、エサル様は生活用品や衣類も用意してくださったみたいです」
アリスがバッグを開けて、中身を見ながらそう言う。
「よかったなー」
「はい!これで生活に困ることは無さそうです」
アリスが嬉しそうに笑う。アリスは笑うと印象の変わる少女だった。
「あ、言葉遣い!また敬語に戻ってる!」
「あれ?」
「あと、エサル師のこと、エサル様っていうのもおかしい!それ、笑えるわ!」
「…ホントだね」
アリスが、ふふ、と笑う。アリスの華麗な目が少し細められて、可愛かった。
ハルもつられてアリスと笑った。笑い合う2人は昨日出会ったばかりの仲とは思えないくらい仲が良さげに見えた。
「あと、そのマントと仮面、どうするの?」
ハルはバッグの隣にまとめてあったアリスの私物を見ながらそう言う。
アリスの私物は、マントと仮面、そして、あの綺麗な剣しかなかった。
「マントと仮面は捨てる。もう、今の私には必要ないから」
そう言うアリスの顔は晴れやかだった。
「捨てるんなら、そこのゴミ袋にいれていったら?」
備品室には大きなゴミ袋が置いてあった。大きなゴミはここに捨てることになっている。
「そうだね。そうする」
アリスはすぐにまず、仮面を捨てた。
そして、マントから何かを探って取り出してからマントの方も捨てた。
アリスの手には小さなブルーの宝石のついた薔薇のペンダントが握られていた。
「それ何?綺麗だね」
「…これは、お母様からもらったものなの」
アリスがそう言った瞬間、アリスの表情が暗くなった。
ハルはアリスの母や、家族のことについて聞いてみたくなったが、聞いていけないような気がして聞けなかった。
アリスはしばらく何かを思うように、そのペンダントを見つめてから、それをつけようとした。
が、自分ではなかなか上手くできないようだった。
「ん、つけてあげるよ」
ハルがそう言って、アリスの後ろに回った。
「ありがとう」
アリスはハルにペンダントを渡すとつけやすいように髪を上げた。
その時、アリスの白い首筋が目に入ってきて、ハルの顔が赤くなった。
「どうかした?」
アリスがハルがなかなかペンダントをつけないことを不審に思って、振り向こうとした。
「!大丈夫!ご、ごめん。すぐつけるから」
ハルは赤くなった顔を見られたくなくて、急いでペンダントを、つけてあげた。




