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魔法使いの英雄彈〜二人が英雄になるまで〜  作者: 猫田ねここ
第1章 出会い
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第1章 16 【アリス】

アリス


「つまり、白の牙は龍の血を子供達に飲ませ、龍と融合させようとしていたということ?」


エサルが青ざめた顔でアリスに聞いた。


「はい」


「じゃ、じゃあクレトが子供達がどこかに連れて行かれたって言っていたけど、そいつらは…」


ハルの質問にアリスは目を伏せながら答えた。


「恐らく…、もうその子たちは生きていないでしょう…」


アリスも、ハルよりも早く答えにたどりついていたエサルも、表情が暗かった。


「…それが、あなたが言っていた実験の内容?」


「はい」


「そう…、ありがとう。その、龍のことについてはまた詳しく教えてもらうわ。じゃあ、あなたはなぜ、クレトと逃げていたのか聞いてもいい?」


エサルはそう質問を続けた。


「あの時、クレトたちを助けださなければあの子達も、龍の血を飲ませられていました」


「だから、あなたはクレトたちを助けようとしたのね?」


「はい…。でも、私がクレトたちのところに戻った時にはもう、ほとんどの子が血を飲まされて…」


「ちょっと待って。あなたはずっとクレトたちのところにいたんじゃ…?」


それは、ハルも驚きだった。ハルもアリスはずっとクレトたちのところにいたと思っていたのだ。


「私は各地の村を回っていたんです」


「なぜ?」


「…次襲う村を決めるためです…」


「!!」


ハルとエサルは同時に息を飲んでいた。白の牙が裏でそんな動きをしていただなんて、聞いたこともなかったからだ。


「見た所、あなたはそれを好んでいないようだけれど…。なぜあなたは村を?」


「…。主様、タイリ様が私にそう命じたんです。だから、逆らうことは…」


「それで、村をまわっていたから子供達を助けられなかったと?」


「はい…。私はクレトだけしか助けることができなかった。他の子を助けることだって出来たはずなのに…」


アリスは唇から血が出そうなほど唇を強く噛んでいた。




救護室には重い沈黙が立ち込めた。


だが、その沈黙を破ったのはハルだった。


「でも、1人助けることが出来たんだろ?」


「…1人しか、助けられなかった」


アリスは悲しげな顔でそう呟く。


その時、エサルもハルにつられて口を開いた。


「でも、あなたがいなかったら助からなかった命だわ」


「ですが…」


「それに、1人の命を救ったという事実は変わらないよ。俺はクレトを助けてくれて嬉しいよ」


「そ、そんな。私は…」


「だから、そんな何もかもを背負ったような顔をするな」


その瞬間アリスの瞳から静かに涙が流れた。


「私は誰からも、必要とされていません…」


アリスが涙をこらえながら言う。若干声が震えていた。


「この学園があなたを必要としているわ」


エサルが静かに立ってそう言った。


「私は、白の牙ですよ…?」


「今日からはこの学園の生徒だ。今日からはここが、君の居場所だ」


ハルも静かに立ってそう言った。


そして、ハルとエサルは2人同時にアリスに手を差し伸べると、笑顔で言った。


「ようこそ、レイナルン魔道学園へ」


アリスはいつまでも静かに涙を流し続けていた。

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