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魔法使いの英雄彈〜二人が英雄になるまで〜  作者: 猫田ねここ
第1章 出会い
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第1章 12 【涙】


「えっと、まず俺が知っていることから話しますね?」


「ええ、それでいいわ」


ハルとクレトはエサルに向かい合って座っていた。


そして、ハルはハルが知っていることを全て話し始めた。


エサルはハルが話している間メモをしっかり取っていた。


「…つまり、要約すると、分かっているのは、彼女は白の牙であること。何かがあって仲間と決別。クレトを守って戦っていたこと。後はなぜか、治癒魔法が効かないってことくらいかしら?」


「そうです。エサル師は治癒魔法が効かないってこと、聞いたことありますか?」


「…」


「えっ、あるんですか!?」


「まぁ、ね。でも、それは滅びた魔法よ。まだ使い手がいたなんて信じられないわ。」


「そうなんですか…」


「さて、後はクレトね。ハルの話は大体あってるかしら?」


「あっ、うん」


「じゃあ、ハルの話の補足を。この話はここにいる3人だけの秘密にするから、何でも話して頂戴」


「分かった。でも、どこから話せば?」


「…。じゃあ、私の質問に答えて頂戴」


「うん」


「じゃあまずは、クレトは白の牙なの?」


「…違う、と思う」


「そう。あなたはいつから白の牙のところに?」


「えっと、3ヶ月くらい前」


「どうして白の牙のところに行くことに?」


そう聞くとクレトの肩がぴくりと震えた。そして、小さな拳を握りしめながらやがて話し始めた。


「ぼくは東の方の村、ルテラ村に住んでいたんだ」


ルテラ村とは3ヶ月、白の牙の襲撃を受け、酷い惨状となった村であった。


「だけど、あの日、白の牙が襲ってきて…村のみんなを殺して…。でも、ぼくら子供は殺さずに連れて行かれたんだ」


ハルとエサルは静かに聞いていた。


「それから、ぼくらはどこかに連れて行かれて、牢屋みたいなところに入れられたんだ。そこにはぼくらと同じくらいの子供たちが、30人くらいいた」


「…!そこで白の牙は一体何を?」


「わかんない。でも、毎日子供が新しく連れてこられては、どこかに連れて行かれたんだ」


ハルは下を向きながら唇を噛んだ。それは、白の牙によって各地の村が襲われていた、ということであった。


向かいでメモを取っているエサルも悔しそうな顔をしていた。


「…そう。そこではどんな暮らしを?」


「ご飯は少ないけど、きちんと食べさせてくれていた。でも、牢屋からは出してもらえなかった。それに、見張りの白の牙の人は何も聞いても何も答えてくれなかった」


「わかったわ。じゃあ、あの少女について教えてくれる?」


エサルは次に少女について聞き始めた。


「…お姉ちゃんはいつも、ご飯を分けてくれたり、話しかけたりしてくれた。だから、ぼくらにとってお姉ちゃんはとても大切な人なんだ」


「そう。いい人だったのね。でも、そんな自由なことしてて大丈夫だったのかしら?」


「お姉ちゃんは白の牙の中でも位の高い人みたいだった。ぼくらに会いに来るときはいつも見張りの人にどっかいってもらったから来てたもん」


「じゃあ、クレトは何があってここに?」


「1週間くらい前から、急にみんなが、連れて行かれ始めたんだ。気づいたらもう5人くらいしか残っていなかった」


その瞬間クレトの表情はとても、悲しそうな顔をした。


「そして、残ったぼく達も連れて行かれそうになったんだ。でも、その時お姉ちゃんが来てくれて、白の牙と闘って…」


「!!!」


ハルとエサルは同時に息を飲んだ。一体白の牙に何があったのだろうか。


「でも、人数が多すぎて、ぼく以外の子供は死んじゃって…。それにお姉ちゃんもぼくをかばって傷を負って…」


クレトはその時のことを思い出したのか、泣きそうな顔をしていた。


「そこら辺でぼく、気を失ったみたいで…。記憶がなくて。後は、ハルが言った通りだよ…」


「そう…。話してくれてありがとう」


クレトは目にいっぱい涙を溜めていた。


ハルはクレトの頭をくしゃくしゃと撫でた。その途端、


「…う、うぅ…、くっ……」


とクレトは大粒の涙を流しながら泣き始めた。きっと今まで我慢していたのだろう。


遂には声をあげて泣き始め、ハルに抱きついてきた。


ハルは抱きついてきたクレトのあたたかさを感じながら悔しい思いを噛みしめていた。





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