第1章 10【フツー】
フツー
少女はベッドに寝かされていた。腹には包帯がきちんと巻いてあってその他の切り傷やらなんやらも丁寧に処置してあった。
だが、熱があるようで額には冷やされたタオルが乗せてあった。
「エサル師、どうやって処置を…?」
クレトは救護室には入った途端すぐ少女に駆け寄って、手を握っていた。
救護室の他のベッドには疲れ切った顔の教師が寝ていた。
「治癒魔法が効かなかったから、そのまま縫ったのよ…。まさか、魔法使いになっても怪我人の傷を縫うことになるとは思わなかったわ」
「エサル師って傷を縫うこともできるんですか?」
「まぁ、ね。でも、学園の教師の中にも傷を縫うことのできる教師はいるわよ?」
「そうなんですか。はじめて知りました」
さすが、レイナルン魔道学園の教師は引き出しがたくさんあるようだ。
「さてと、あなたは寮に戻るのかしら?」
「あー、どうしましょう。でも、クレトもいるし。それに事情も説明しなければならないかと…?」
「あぁ、それもそうだけど、今日はもう疲れたわ。明日…もう今日になるかしら。今日も休日だからまた朝話を聞きましょう」
「分かりました」
「あなたも休んだほうがいいわ。今日はもう寮に戻りなさい」
「ありがとうございます」
そういった途端、一気に疲れが押し寄せてきた。先程寝たとはいえ、少しも疲れが取れていなかった。
「あと、あの子もあなたの部屋で寝かせてくれないかしら」
と、エサルがクレトを見ながら言った。
「ちょっと新しい部屋を手配するのは面倒だわ」
「えっと、あの子の名前はクレトです」
「クレト、ね。分かったわ、覚えておく。じゃあおやすみなさい」
と言ってエサルは救護室の空いているベッドにそのまま横になった。どうやら理事長室に帰ることすらもできないほど疲れているみたいだ。
「おい、クレト。一旦寮に戻って休もうか?」
「…うん。お姉ちゃん大丈夫だよね?」
「あぁ。顔色も少しは良くなってるし」
少女の顔色は確かに良くなっていた。それに苦しげな息もさっきよりは穏やかになっている。
傷によって上がった熱もじき下がるだろう。
「うん!お姉ちゃん早く起きてくれるといいな」
「そうだな。さぁ、今日はもう休もう」
ハルがクレトにそう促すと、クレトは安心したようだった。
そして、2人は救護室を後にしてハルの部屋へ向かっていった。
「ハルの部屋ってどんななの?」
「どんなっても普通だぞー?」
「うん、そんな感じする」
「どういうこと、それ…?」
と、そんなことを話しているうちにいつの間にかハルの部屋へ着いた。
寮はほとんどが2人部屋か、4人部屋だが、ハル達4年生は1人部屋だ。
「ただいまー」
「お、お邪魔しまーす」
ハルが部屋へ入るとクレトも続いて入ってきた。
「…。本当にフツー」
「なんか言ったか?」
この学園の部屋は豪華な方で台所とトイレと風呂までついている。
ハルの部屋はベッドに勉強机の上、あとは魔道書などが置いてある本棚しかなかった。
「本当につまんない…」
クレトが勝手にクローゼットを開け服を見ながらそういった。
「まぁ、そう言うなよ…。ふわぁー。ほら、もう寝るぞ?」
ハルが欠伸をしながらそういった。
といってもベッドは1つしかない。
「えっと、ぼくはどこに寝れば…?」
「床だ」
「ハル!?嘘だよね!?」
結局2人でくっ付いてベッドで寝ることになった。
最初は2人とも狭いだのどうのこうの言っていたが、疲れてたためか2人ともすぐに寝てしまった。




