ダンサー・イン・ザ・ダーク
不幸な事故で盲目となった天才ダンサーがいた。
塞ぎ込み、生きる希望を失っていた彼女に手を差し伸べる男がいた。
男はもう一度、彼女に舞台で踊って欲しいのだと説明した。
当然、彼女は断ったが、男はしつこかった。
「どうしても君のダンスが見たいんだ」
男の情熱的な言葉に折れ、彼女は再び舞台に上がることを決意した。
壮絶な練習を積み重ね、ついに本番を迎える。
本番当日。
暗闇の中にいる彼女は知らない。
かつての彼女のライバルや、彼女が凡人だと嘲笑い、見下していた者たちが舞台上の彼女を指差し笑っていることを。
「見ろよ、なんて酷いざまだ!」
だが、観客たちの笑い声は鳴り響く音楽に掻き消され、彼女の耳に届くことはない。
彼女は暗闇の中で踊る。素晴らしい出来だ、と彼女は思う。
舞台袖には「ドッキリ」と書かれたプラカードを持ち、ヘルメットを被った男が待機していることを彼女は知らない。
かつての勘を取り戻した彼女は夢中で踊り狂う。
仕掛人たちは彼女に早く打ち明けたいという気持ちを抑え、ダンスを見守る。
終盤に差し掛かったとき、悲劇が起きた。彼女が舞台から落ち、首の骨を折って死んだのだ。
こうして全てが台無しになったが、彼女の死に顔は幸福に見えた。