#3
スペクタクルズを諦め切れなかった私はある試みを実施した。
その結果……。
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名前:結城 勇
クラス:ユウしゃ/ファイニャー
レベノ:8
HP 84/84
MP 0/0
【筋 力/SOR】18
【※捷力/DEX】15
【耐久%/XON】16
【知 力/INT】08
【判?力/WIS】09
【魅 力/CIR】08
装備
グノートソート 2D6
革鎧 AC11
特殊能力
剣技 L4
-斬り払い
※メート【装着】???
???
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「誰がイサメやねん!それになんや、この誤字だらけのんは!ファイニャーってネコちゃうぞ!」
「仕方ないでしょ!スペクタクルズで見えた記号にしか見えないものを地面に書いて、それを翻訳したんだから!読めるだけマシ!」
どうやらスペクタクルズは本当にイサミのステータスを表示していたらしい。
どういう世界の、どういうルールの基準かは判らないけど「2D6」とか書いてあるし、どこぞのテーブルトークRPG的な表記なんだろうか?
だとすると能力値は10が期待値で18が最高値になるだろうから……うん、数値上イサミはこの上ない脳筋。
うん、これはたぶん正確な表示だ。
「しっかし、イサミは本当に勇者なんだねぇ」
「最初っからそう言っとるやろが」
「で、この『装着』ってのがチート能力?」
「……知らんわ!それよりサチの能力もう一回みようや!」
「あ、パス。絶対拒否」
「なんでやねん!」
そりゃそうだろう。
私だってそれなりにプライドはあるんだ。
ここまで細かく正確に数値化されて、もしここで私の知力や魅力が9とか8とかで、実は平均以下でした……って数値化されたら、立ち直れないからね。
最初に私のパラメーターを見たイサミが数字を拒絶してパラメーターを覚えていなかったのは幸いだ。
ともあれ現金収入をゲットするボーナスキャラは逃がしてしまったけど、売ればお金になりそうなアイテムと魔物の死骸は手に入った。
次の街でこれらを換金すれば、当面の路銀には困らないだろう。
……そう思っていた時期が、私にもありました。
「買い取りできないってどういうことですか!?これ、毛皮も牙も綺麗ですよ!」
「いや、モノは上質なのは認めるけどね。ただヘルハウンドの素材は買い取れないんだよ」
「なんですか、それ!ヘルハウンド差別ですか!買い取り価格が減るハウンドなんですか!?」
うん、我ながら何を言っているのか良くわからない。
ここは私達がたどり着いた……なんとかという街の冒険者ギルド。
商人のゴーヨックさんを襲っていた犬の魔獣「ヘルハウンド」の討伐報告と素材の買い取りをギルドカウンターで依頼している、いわばお約束のシーンなんだけど。
ギルドの男性職員は討伐確認部位である牙と引き換えに報酬としてヘルハウンド1体50ゴールド、5体分で250ゴールドを支払ってくれた。
けど牙以外の素材の買い取りは拒否すると言ってきたんだ。
私達にはお金が必要だ。
イサミの格好がどこからどうみても野盗に見えるのは皮鎧を着ていることも原因の一つなので、せめてプレートアーマーでも着せようと私は思っていたからだ。
ギルドへ出向く前にちらりと覗いた防具屋の店先に飾られていたプレートアーマーのお値段は1,500ゴールドで、換算するら30ヘルハウンドに相当するお値段だった。
貰った報酬ではアーマーの一部、例えばブーツと籠手ぐらいしか買えそうにない。
いや、毎月継続して購読することでいつかはプレートアーマーが完成する、付録付きの月刊プレートアーマー的な分冊百科みたいな買いそろえ方でもいいかもしれないけど。
「なんでヘルハウンドは買って貰えないんですか?」
「こいつらは黒騎士の眷属だからだよ。こんな素材、街中に置いてあったら連中が攻めてくる理由になっちまう。お嬢ちゃん、悪い事はいわんから森へでも捨ててきなさい。なるべく街から遠いところへ」
「ええ……それ、不法投棄ですよね……」
ギルド職員の説明が腑に落ちない私は何とか買い取りして貰えないかと頼み込んだけど、断固として拒否されてしまった。
ちなみにイサミは討伐報酬のうちの10ゴールドを小遣いとして渡したら、ヘルハウンドの死体を放置して買い食いに行ったのでこの場にはいない。
なんて付き合いが悪く、食い意地の張ったやつだ!
「えっと、私だけだとこれ運べないので、処分お願いしていいですか?」
「ええ……?なら、100ゴールドほど処分費貰うよ?」
「……ぐぬぬ」
持って帰って捨てに行くのが面倒だと思って、処分をお願いしたら処分費用を請求されてしまった。
どこぞの古本買い取り業者みたいに「いらないならこちらで処分しておきますよ」とか客には言いながら、実はあとで商品に回す悪徳ギルドかと思ったんだけど……。
どうやらどうやらそうではないらしい。
なら、折角の稼ぎをこんなことで目減りさせるのも勿体ないし、イサミを呼び戻してアイテムボックスへ再収納してもらおう。
なにせここへ運んでこれたのもアイテムボックスあっての事だからね。
そう考えた私はヘルハウンドの死体をギルドに置いたままイサミを探しに行くことにした。
けど、そんな私を職員が呼び止めてくる。
「あ、お嬢ちゃん!ここへ置いて行くなら、保証金として処分費の100ゴールド置いて行ってくれよ!」
「……ええい、世知辛い!」
そうは言ったもののギルド職員の言うこともわかる。
だってギルドは旅を続ける冒険者相手の商売なんだ。
置き逃げする可能性なんて、一々考えるまでもない日常茶飯事なんだろうから。
イサミを探しに街へ出る。
スマホのような連絡手段のない世界では誰かを探すのは至難の業だけど……私には切り札がある。
「ナビ、イサミの居場所を教えて」
私の言葉に、矢印と共にイサミの現在位置へ至るルートが表示された。
うん、イサミの居場所ここから320m先になってるね。
冒険者ギルドは街の南門から続く大通りに面している。
それなりに人通りがあるからここからではイサミの姿はみえないけど……。
雰囲気的に、屋台が建ち並んでいる一角の方にイサミはいるようだ。
あいつ、やっぱり独りで買い食いしてる!
いや、買い食い用にお金を渡したのは私だけど、交渉ごとを任せっきりで香ばしい臭いのする串焼き肉とかほおばってるのはちょっと許せないよね!?
「おう、サチ。買い取り終わったんやな?なら追加で50ゴールドぐらいくれや」
「追加どころか100ゴールド取られたよ!イサミ、戻ってヘルハウンドをアイテムボックスに収納して!」
「はぁ?ライノなんちゃらとちごうて、売れへんかったんか?」
私とイサミが出会った時、彼が狩っていたライノビーストはそれなりの価格でギルドに買いとって貰えていた。
そしてそのおかげでイサミと私の旅支度が出来たんだけど。
けど、今回は買い取り拒否にあったのだという説明をイサミにしていると、私達の話を聞いていたのか果物屋台のおばちゃんが迷惑そうな顔で声を掛けてきた。
「あんたら、ヘルハウンドに手を出したのかい?やめておくれよ……」
「えっと、魔物を退治して文句言われるのってどうなんですか?」
「いや、倒してくれることは嬉しいんだけどさ、持ち帰られると迷惑なんだよ」
「黒騎士とかって奴のせいですか?」
「知ってるならさっさと処分しておくれよ、まったく」
なんだか随分と悪者になっている気がする。
倒すのは歓迎だけど、持ち込み禁止だなんて、そんなローカルルールなんて知らないよ!




