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鳴らせ青春ハンドベル!〜女子高ベル部の放課後はいつもドタバタ〜  作者: 阪井秋


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4/5

冬のベル部、凍えて鳴らす!

◆冬の到来


冬の桜ヶ丘といえば──寒い。

そして、ハンドベル部の繁忙期である。


文化祭が終わったあとも、

「商店街イベント」「老人ホーム慰問」「学校内クリスマス会」……と、

毎年この季節はベルの音を求められる。


「文化部なのに、年末進行があるのどうして……」


部長の詩織は苦笑しながらも、

今日も白手袋をはめてベルケースを抱える。



◆服装問題は毎年恒例


校門前。吐く息は白く、制服の上はベストだけ。


「なんで私たち、毎年こんな格好なんですか!?」

瑠衣が全力で叫ぶ。


「ブレザー着ると腕が上がらないのよ」

詩織が冷静に答える。


「じゃあセーターとかカーディガンとか──」

「校則でNG。上にブレザーを羽織る場合のみ可」

真雪が淡々と補足する。


「つまり、“防寒単体は禁止”ってこと!?」

「そういうこと」


「……体育会系の発想じゃん!」

「ベル部は精神的に筋トレ部だから」

詩織が胸を張って言い切る。


全員:「文化部どこ行った!?」



◆白手袋と冷たい金属


全員の手には真っ白なコットン手袋。

「これ、防寒用じゃないんですか?」

中学生の七海が尋ねる。


「違うわ、ベル保護用。素手で触ると音がくすむの」

詩織が淡々と説明する。


「つまり、ベル優先・人間二の次……」

瑠衣が肩をすくめる。


「その通り。ベルのために凍える、それが桜ヶ丘の冬よ」

「部長、誇らしげに言わないでください!!」



◆商店街イベント


駅前の商店街では、

イルミネーション点灯式の特設ステージが用意されていた。


机を並べ、クロスを敷き、風で飛ばないように重りを置く。

それだけで準備に30分。


「もう準備が本番よりハードです!」

瑠衣が嘆く。


「文化部とは……」

真雪がつぶやく。


「もう文化部の定義が崩壊してる!」


詩織が笑って言う。

「いいのよ。ベル部は“文化系筋トレサークル”だから」


「名乗り方がややこしい!」



◆商店街のジングルベル


演奏が始まる。

チリーン──


街中に響く、定番のあのメロディ。


「今日の曲、『ジングルベル』『きよしこの夜』『もろびとこぞりて』ね」

「昨日もその前も同じでしたよね!?」


詩織が笑う。

「冬はループする季節なの」

「もう“鳴らすより鳴らされてる”気分です!!」

瑠衣が叫ぶ。


それでも、観客の拍手と笑顔が温かい。

通りがかったおばあちゃんが「きれいねぇ」と声をかけてくれる。

その一言で、寒さがほんの少しやわらぐ。



◆老人ホーム演奏


翌日。

腕が筋肉痛のまま、今度は老人ホームへ。


「昨日よりベルが重く感じる……」

「気のせいじゃない。筋肉が泣いてるのよ」


ロビーには、おじいちゃんおばあちゃんたちが集まっていた。

「今年も来てくれたのねぇ」

「あなたたちの音、好きなのよ」


その言葉に、全員の顔がほころぶ。


詩織が深呼吸して、合図を出す。

チリーン──


優しい音がロビーに広がり、

観客の手拍子と笑顔が重なる。



◆そして、ホットドリンクの奇跡


演奏後。

撤収作業を終えたころ、

結衣子先生が温かい笑顔で近づいてきた。


「はい、お疲れさま。ホットココアとホットレモン、どっちがいい?」


全員:「先生、それが今日いちばんのご褒美です!!」


手袋を外してカップを受け取る。

指先に戻るぬくもりと、甘い香り。


「……先生、こういう差し入れあるなら、あと10曲いけます」

「やめなさい、無理しないのも青春よ」

「それ今までで一番正しい名言です!」



◆冬の総括


詩織が小さく笑って言う。

「今年の冬、もう『ジングルベル』何十回やったかしら」

「脳内BGMが鳴りっぱなしです!」

「次にベル鳴らしたら条件反射で踊り出しそう」


笑いながら、全員でホットドリンクをすする。



ナレーション:

こうして、べラーズの冬は今日も鳴り響く。

寒さと重さとジングルベルにまみれながら、

それでも音は、誰かの心をあたためる。


そして彼女たちは、来年もきっと言うのだ。


「冬はつらいけど、ホットドリンクのために頑張れる」



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