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鳴らせ青春ハンドベル!〜女子高ベル部の放課後はいつもドタバタ〜  作者: 阪井秋


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2/5

担当替えカオス

◆ハンドベルとは


ハンドベル──それは、見た目こそ上品な楽器だが、

実際のところ「鳴らす」より「構える」ほうが先に筋肉痛になる楽器である。


ハンドベル部では、一つの曲を音階ごとに分担し、

自分の担当の音がきた瞬間にベルを鳴らす。

ピアノなら一人で全部弾けるが、ベルでは人数で一曲を完成させる。


そして、曲が変われば担当音も変わる。

──つまり、新曲に入るたびにカオスが訪れるのである。



◆担当決めの日


「それでは、次の曲の担当を決めます」


部長・詩織のその一言で、音楽室の空気が一気に張り詰めた。

部員たちは息をのむ。


「今回は三オクターブ使うわ。

高音は四本まで持てる人、低音は……理央ね、お願い」


「了解です。筋トレの成果見せます!」

中学生の理央が拳を握る。


「よっ、ベル筋代表!」

ギャル後輩の瑠衣がノリよく拍手。


詩織は淡々と配分を進めていく。

「C、D、E、F……はい、ここまで高音組。GからAまでは中音組で分担。

低音は……あ、Bが一個余る」


「余る!?」

「誰かフォーインハンド(※片手2本持ち)できる?」


「詩織先輩、またそれ来た〜!」

「練習すれば誰でもできるわ」


日奈子がのんびり笑って言う。

「まぁまぁ〜、心で握れば大丈夫よ〜」

「心じゃ持てないのよ!!」

詩織の全力ツッコミが飛ぶ。



◆書き込み地獄


担当が決まると、全員が自分の譜面を広げる。


詩織と副部長の日奈子は慣れた様子で黙々と準備。

一方、後輩たちは大騒ぎだ。


「自分の音どこ!? これC? D? え、これ違う!?」

「マーカー引く前に数え間違えた……」

「一番下の段、どこが私の音ですかー!」


中1の紗英が半泣きで叫ぶと、

中3の美咲が優しく肩を叩いた。

「大丈夫大丈夫! 最初はね、自分の音が見えなくなるの!」

「怖い励ましだな!?」


「いい? 鳴らすタイミングを間違えると、曲が一瞬で壊滅するから気を付けて」

詩織が真顔で告げる。

「はいっ!」と全員が緊張した声で返事した瞬間──


「ねぇ詩織先輩、私の譜面、Cが三個あるんですけど」

「……それ全部別のCだから」

「別!? 音階の概念が壊れるー!!」



◆はじめての合わせ


「では、試しに頭から行きます」

詩織の指揮で、練習が始まる。


チリーン──


「……あれ? 音が足りない」

「私、鳴らしてないです」

「鳴らして!」


チリーン──


「鳴らしたけど早かったです」

「早いわ!」


低音の瑠衣が一音鳴らすたびに「重っ!」と声を上げ、

高音の七海は「キレイ〜」と自分の音に聞き惚れて出遅れる。

理央は律儀にカウントを取りながら鳴らし、

紗英はパニックでベルを逆さに持っていた。


「……紗英、それ持ち方逆」

「え!? 逆でも鳴るんですか!?」

「鳴るけど響かない!」


音楽室に笑いがこだまする。



◆そして


ようやく一曲を通したあと、詩織が静かに言った。


「……うん。まだ“音楽”というより“音事件”ね」


「え、事件!?」「タイトルみたいになってる!」


日奈子が笑いながらフォローする。

「でも、音は出てるから大丈夫〜」

「基準が甘い!」


詩織がため息をつくと、顧問の結衣子先生が音楽室のドアを開けた。

「……あら、元気ねぇ。楽しそうじゃない?」


「楽しそうですけど、完成度は0です!」

瑠衣の叫びに先生は笑って言った。


「じゃあ、当分は基礎練ね〜」


「……出た、恒例のセリフ」

詩織が頭を抱える。



ナレーション:

こうして、今年もハンドベル部の新曲練習が始まった。

担当替えと混乱と笑い。

これが、桜ヶ丘ハンドベル部の“通常運転”である。


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