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腐り切った世界のヒーロー

ちょっと残酷な表現あるかもやけど大丈夫なはず。

この世界は三つの人に分けられる。

自分が一番偉く、権力と富を使い、幸せに生きる人。

不幸な自分と世界を憎み、生きた証もなく消えていく人。

そして、自分が幸せ者だと本気で”勘違い”している(おれ)だ。


誰だってそうだろ?ガキの頃は夢を見るもの。なんだって自分は人類を救うヒーロだと思い込んでいたんだ。

きっとそれは無力のまま沈んでいくと分かっていても…。

俺も気づいていたんだ。


「お兄ちゃーん!こっちだよ!」

「そんなに焦るなよって、今行くよ。」

ここはバイバル地方の静まりの森。

俺バイカルは弟のミルと一緒に散歩していた。


(ここ一帯を緑が減ってきたな…)


世界は今、全面侵攻戦争が起きている。

時は13年前。ある国が最終兵器”マリングラス”を世界各地に投下。これが、戦争の発端であった。

一夜にして、世界人口は38億人から36億人に減った。

人類は今も武器を持ち、血を流し合っている。


ここの地方の安全地帯はもうここしかない。

俺たちは幸せ者だ。今でも終わりなき戦争に出されていく人もいる中で、弟と2人で暮らせてるのは幸せ者だろう。

そして、俺たち2人は不思議なチカラを持っている。


「お兄ちゃん!この花枯れてるよ!」

「よっしゃ、俺たちの出番だな。」

そう言うと俺たちは片手づつ花に手を添え、2人でこう唱える。


「「奇跡よ。まだ貴方がこの花を見捨てないであれば、この花に奇跡をお与えください。」」

そう唱え、目を開けるとその花は元の何十倍にもキレイな花へと成長している。

この力を持ってからは村の作物や静まりの森の保存は、2人で行っている。すごい能力ではないけれど少しでも役立つならそれでいいだろう。


「日も沈んできた。そろそろ村へ帰ろう。」

俺がそう言うと、「もうヘトヘト。」とミルが呟く。

「まだ大して歩いてないけどな。」

「お兄ちゃんより疲れるの!」

俺より年下なミルはきっと体力が少ないのかな。

おんぶしてやるよ。と言うとミルは喜んで俺の背中に乗った。


「お前ぐらいの歳はな、普通は小学校に通ってるんだ。」

「きいた!勉強したり、”友達“と遊んだりするところ!」

「…お前ぐらいの歳の人ももういない。俺たち2人で村を支えていくんだ。ミル」

「大丈夫だよ!だって僕。ううん、僕たちには力があるもん!」

俺たちは、太陽に向かって歩き続けた…。


〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 


「今月で4人目。先月は3人だったな。」

教会のおじさんが悔しそうな声で言う。

僕ミルは、お兄ちゃんと一緒にお葬式に来てる。

村は作物があるとはいえ、伝染病や栄養不足で死んじゃってる人がたくさんいる。


お兄ちゃんは、大人たちと難しい話をしていたけどよくわからない。ただ、険しい顔をしていたから、今がどれほど深刻かが微かにわかる気がした。


「ミル、畑仕事の時間だぞ。」

お兄ちゃんに言われて、僕は走った。

お兄ちゃんはよく僕たちを幸せ者と言うけれど、お兄ちゃん…きっと誤解だよ。それは、お兄ちゃんも気付いてるでしょ?


〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 


「今日は運がいいな!」

仮に出かけていた俺は、実に三ヶ月ぶりの鹿を見つけた。

(村の人たちは喜ぶぞ〜。)

俺は仕留めた鹿を抱えて、村へ急いだ。

その時、俺の頭上を戦闘機が通過した。

戦闘機の行く先は村の方。嫌な勘が働き、村へ急ぐ。

そして、気づいた、勘は正しかったのだと。


村に戦闘機が止まり、銃を持つ兵士が出てくる。

その中から1人の男が出てきた。

「全員手を止め、俺の話を聞けーーー!!!」

大きな声が村に響く。

「俺はバリマラ帝国の軍兵、パーラだ!!!村の衆に伝える。俺たちは敵ではない。ただ、ある人材を探していてね。少し、村の住民を集めてもらえないか?なに、怪しい集団ではないよ。だが、今の立場と状況を考えて、冷静に行動するようにね。」

俺たちはその男の指示に従い、村の人達を全員集めた。

「これで全員じゃ。」

「んー、少ないけどいっか。皆さん、少しだけ”目”を見せてもらおうか。」

男はそう言うと、まず俺の前に来た。

「目を見て話そう。若いね、何歳だい?」

「16。」

「そうかい、そうかい。次だ。君は奇跡を持っている?」

奇跡?なんのことだ?

「奇跡は持つような物ではないだろ?」

「…オッケー。次だ。」

男はそう言うと次の人にも同じような回答を続けた。



「よし、全員見れた。村の人よ。よく聞いてくれ、この村にいたミルと言う男は特別だ!奇跡の力を持っている。ので、この少年を我が軍に取り入れ、戦争に出したい!」

俺は思考が停止した。意味が理解できなかった。理解し難かった。脳が理解を拒んだ。

「お前は何を言ってるんだ?」

俺は完全に素で声を出した。それは口からこぼれた独り言のように弱々しく、理解できないのを物語っている。

「おっと、理解できなかったかな?もう一度言おう。見るという少年は選ばれた者!奇跡を持つ者なのだ。奇跡は我々に、人類に特別な力を与える!それは戦争でも大いなる武器となるのだ!!!」

「………!ふざけるな!!ミルをやる訳ねぇだろぅが!」

想像以上に大きな声がでて、俺自身びっくりした。

それよりも、ミルは戦争に出さないことだけを必死だった


「…そんなに声を荒がるな。軍の力になる、戦争の一部になる。最高の事だろ?」


俺の全身から血の気が引いた。コイツ、マジなんだ、本気でミルを戦争に。

「……なら俺だ!ミルじゃなく、俺を連れていけ!俺も植物などを急成長させる力を持っている!食料に役立つ!ミルは体力はないし、まだ平和に暮らさせてやりたいんだ!」

必死の訴えに息が上がる。だが、パーラと軍は疑問符の浮かぶ顔押していた。

「…………あっ!」

何かを思い出したかのように、パーラは見るを見ると、大きな声で笑い出した。

「……ふ…ふふ…ふはははははははははははははは!!!滑稽!実に滑稽だ!!」

なんで笑ってんだ?ふざけているのか?

「君が?!奇跡の力を?笑わせてくれるじゃないか!そういうことか!」

「何が言いたいんだよ…!」

「君たちは2人合わせての力を持っていると思っていたんだね?それは誤解だよ!”奇跡”を持っているのは弟のミルだけ!何も持っていない君は弟から情けをかけられ、ミルが2人で一つの力ということにした。そう言うことか!」

俺は力を持っていない?何を言っているんだ?俺たちは2人で”奇跡”とやらを持ってるんだ。

「ミル、この花を成長させろ。させなければ、兄を殺す」

この男!ここまでもクズかよ…!!!

「は、はい……!」

そう言うとミルは花に手を添え…その瞬間その花は虹色に輝く綺麗な花へと生まれ変わる。


「ふはははは!お前は常に歳の離れた弟から情けと同情をかけられながら生きてきたんだな!実に可哀想だ!」

…………………………………………………………………………………………………………………………………… ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………!!!!

「…だからなんだよ。」

「…ん?」

「ミルには才能があった。俺は無能だった。んなことどうでもいい。ミルは俺の弟だ…どんなことがあっても…!」

俺の怒りは頂点に達する。俺は拳を握る。血が垂れる。

ミルを助ける。

連れさせない。戦争に出さない。

ミルを守る。村を守る。コイツらからミルを。

それだけを頭で唱え、斧を持つ。

「ミルーーーーーーーーーーーー!!!」

俺は全ての臓器を震わせ、声を出す。ミルが俺の方を瞳を揺らしながら見る。

「お前、助けた後は説教だ!家族に嘘ついたんだから、たっぷりのな!!」

「俺らに逆らうって言うのか?バカが!」

「バカはどっちだ!?ボディがガラ空きだっつうの!」

俺が怒りと共に全力で斧を振り落とす。その瞬間、俺の体は血しぶきと同時に真っ二つになった…。



〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

痛みも感じないほど一瞬だった。何故、真っ二つかは知らんが、俺は死んだ。それだけがわかった。


『バイカルよ。貴方はそれでいいのですか。』

どこからか声がする。暗闇の中、懐かしいような、聞いたことのないような。


もう、終わったことだ。何かできることでもないだろ。

俺は死んだ。その事実だけが残る。もがいたって意味はないんだ。

ただ、心残りはがあるとすれば……ミル。あいつはどうなったか。心配だ助けたい。戦争になんか出してはいけない。あいつだけが唯一の心残りであった。


でも、俺は無力だった。死んだからもうどうしようもない。ただ、最後に足掻いてみたくなるものだ。俺は諦めが悪いんだよ。


「おい…この脳に響く声!お前、聞こえるだろ?」

俺がそう叫ぶと暗闇から声が聞こえた。

『どうしたのかバイカル。』

「…考えたんだよ…。お前にそれでいいのかって聞かれてよぉ。俺は気づいたぜ…。俺の生きている時は全然楽しくねぇなぁ!!!」

自分自身ビックリするほど声が出た。

「弟がいたから偉い子ぶってたけどこれがホントの俺!戦争なんかがなかったら、もっと楽しくヤンチャして暴れたかった!こんな腐った戦争なんかいらねぇんだわ!」

そして、俺は息をつき、また喋り出す。

「でも…こんな世界でも、ミルが灯を照らしてくれた。俺の道を示してくれたんだ。」

俺は強く拳を握りしめた。そして、上を向いて叫ぶ。

「おい声!聞いてくれ、俺はミルを助けたい。また一緒に暮らしたい!だが、叶わないならばどんな代償でもいい!俺を生き返らせてくれ!この手でミルを救いたいんだ!」

暗闇に沈黙が響く。切らした息が耳に聞こえる。


『この世界は腐り切っている。』

「…やっと喋ってくれるか。」

『人々は何故争うのか。それは根源まで行くと、生まれた時から決まっていたのです。地球が生まれた時から。』

声は静かに穏やかに話す。だが、その声にはとても強い意志があるように感じた。


『世界は有限だからこそ、それを望む。欲しいと感じる』

『この戦争には終わりはありません。このまま続くなら、人類は1人残らず滅びるでしょう。それはなんとしても防ぐ。なら、バイカルよ。貴方に使命を与えます。【不死身】の奇跡を授ける代わりにこの戦争を終わらせなさい。そして、この世界に平和を訪れさせてくれ。』

「任せろよ。俺がぶっ壊してやるぜ。全部」

俺がそう告げると『声の主』は笑ったような口調で『頼もしい限りだ』という。


 

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

鮮明に覚えている。俺は一度死んだ。そして、奇跡を授かり、また生き返った。俺が意識を取り戻し始めると、全身に強烈な痛みが走る。

「ぐぁぁぁぁあああ!」

忘れていた。俺は体を斬られたのだ。まだ、血は止まっていなく、耐えられない、感じたことのない痛みが俺を襲う。だが、死なない。

「ぐっ、ぅぅうううぁぁああああああああ!!!」

周りには村の人たちの死体だけが転がっていた。村の中心部は大きな穴が開いてあり、村の限界を保っていない。


「っぁあ!ぁっぁああ、あああ〜!!!」

絶え間ない痛み。感じたことのない絶望。全てが俺にのしかかる。死なばよかったと、そう思うほどに。


その時体の切断部分がものすごく熱くなる。それと同時に俺の上半身と下半身は”再生”を始めた。

「ぐはぁぁぁっ!!んぁぁああ。」

体がくっつくと同時に吐血する。今の現状に脳が追いつかなくて。死にたい。これまでに苦しいなら殺してくれ。

そう思った時、俺は目的を思い出す。

「ミル。」

思い出した。俺はミルを助けるため、戦争を終わらす為に奇跡を受けた。

ミルはどこだ?今どこにいる?あの出来事からいくつの時間が流れた?止まってはいけねぇ。壊すんだ。助けるんだ


急ごう。戦争は俺を待ってくれない。


〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 


「俺たちどこに向かってんだよ?」

ある軍馬車に乗った3人が会話をしている。

「バカは話も聞けないんだな。説明があったはずだ。我々は国王様の元へ向かっていると。」

ある村を奇襲し、奇跡持ちの男1人を連れて帰ったのと、食料を奪った。

「ほんでこの戦争いつ終わるんすかネッ!長すぎヤス!」

「俺たち三下3人組が知るかよそんなこと。」

「「それもそうだな。」」

中身のない会話をする。

「オイ!お前らすぐに準備しろ!前方に人影だ!馬車を一度止める、戦闘体制ーー!!!」

上官のパーラがそう叫ぶ。軍車の後ろには1人の男がこちらへゆっくり歩いてくる。上半身の服はビリビリに破れ、体には血が付着しているが傷はない。

(【奇跡】を持つ者ならば厄介だな…)

そうして、銃を手に取り、男に向けるのであった。




「忠告する。これは軍の移動馬車である。それ以上近づくならば敵対の意思と見なし、銃撃をする。」

パーラがそう叫ぶ。

〔スピーカー大音量うるせぇよな。〕

〔だよな。〕

「小声でも聞こえてるぞぉ!!!黙れぇ!」

そんな無駄話してる中でも男は近づく。


「チッ、敵対ってことで良いよな?人殺しはしたくねぇんだがな。」

「何言ってんスカ、いつも喜んでしてるでショ。」

パーラがそう言うと軍士がツッコむ。

「……撃て。」パーラが命令する瞬間、男に三十発余りの弾幕が飛び、直撃。血を放って倒れた。


「これだけやれば死んだだろう。なんの奇跡かわかんねぇがな。」パーラがそう言うと、男は血だらけで立ち上がる


「おいおいおい!マジかよ、立つのかよ!」

完全に出血量と被弾数では死んでていいはずだ。人間ならばな。


「よし、もういい。俺がやる。」

パーラがそう言うと軍馬車から降り、ゆっくり男に近づく。そして、距離5メートル程になると拳を構えた。


「斧を待っているのか。あの攻撃全て無傷…。いや、再生だな。全身に傷はないが血がついてる。喰らった瞬間再生したか。再生の能力を持つの奇跡は[再生]か[暴力]、[治癒]ぐらいかな。」

パーラがそう言いながら、男の腹に一発入れる。軽いパンチのように見えたが、その一撃で体の肉は抉り取られていた。


「俺の奇跡は”|鷲掴み”名前の通り、どんな硬度のものでも一発で抉り取る。指が肝心なのだよ。あっ、もう死ぬから気にしないか。」

パーラは嘲笑しながら、肩の肉も骨ごと抉る。男は一瞬怯むが、瞬きの間に再生し、後ろへ引く。


「なるほど!再生はこれほどに早く、肉体を再生するとは!普通の再生者なば死んでいるはずだが、お前は少し違うようだな。そして、痛みにも何の躊躇もない!気に入った。お前は俺が全てを抉り取って殺してやろう!!!」

パーラは感高く叫ぶ。

「黙れ。」

声に割り込むように男は呟く。

「…ようやくしゃべった第一声がそれとは悲しいね。」

「……ミルは。どこだ……!」

 

長い長い沈黙が流れた。そして、パーラは口を開きいう。

「あぁ、あの奇跡の子か。なんか力を使ったら体力が減るみたいでね。一気にやったら、気絶してね。荷物だったし、殺しておいたよ!」

パーラが笑いながらいうと。

「ぶっ殺してやるよ。」

と、か細い声が聞こえてきた。



〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

絶望だけが頭によぎった。

生き返ったことに希望を失った。

だが、今はただ。壊したい。


パーラを。軍を。戦争を。全てを。壊して。作り替える。


ミルは死んだ。希望などないはずだ。

だけど何故かこう何も、世界が輝いて見えた。

パーラは必死に俺の肉を抉り取る。

だが、1秒もしない間に再生する。

「何故死なないんだよ!」という叫び声だけが聞こえる。


お前が最初だ。

俺の破壊はお前から始まる。

そして、俺は人を何億と殺す。

現在の世界人口は89億人。

戦争に加担している軍兵数総勢約9億人。


人類全滅より安いものとは考えてはいけない。

人を殺すのは決して善ではなく、正義ではない。

だから、俺は闇のヒーローなんだ。

俺はこれから人を殺して世界を救う。


そう決めて、パーラの頭部に斧を刺した。



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