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09 婚約破棄から5日目 ブロウ伯爵子息との再会

「アレステ」


私アレキサンドライト・セレスは、名を呼ばれて立ち止まる。

『アレステ』はブロウ伯爵家での私の呼び名だ。またこの名で呼ばれるとは思ってなかった。


孤児院からの帰り道、道端に停めてある馬車からブロウ伯爵子息が下りてきた。

側にはブロウ伯爵家の家令も控えている。

馬車には家紋がない。嫌な予感。


「ブロウ伯爵子息、どうしてここに?」


「アレステは孤児院に行くと思って、ここで待ってたんだ」


「私とは今後関わらないとのお約束でしたが」


「アレステ、そんな冷たい事を言わないでくれ!うちとセレス家の共同事業の件は、今まで通りにしてほしいんだ。君からセレス子爵に頼んでくれないか?」


「ブロウ伯爵子息、申し訳ありません。お断り致します」


「どうしてだい⁈」


「婚約破棄は既に履行されています。書類は受理され、破棄条件も履行済です。今更、覆せません」


「だ、だいたい、あれは学園でサインした書類のせいだろう⁈未成年同士が書類にサインしても無効だろう⁈」


「未成年同士ではありません。ブロウ伯爵子息は20歳におなりになり成年、私は学園の卒業資格を得ているので法的に成年扱いされます。教授も立ち会われておりますので、有効な契約です」


「僕はそんなこと知らない!」


「法的に有効だから、ブロウ伯爵家も婚約破棄の履行に応じられたのです。そちらの家令が当家でお手続きして下さいましたよ」


「あれはブロウ伯爵家ではなく僕の独断だったんだ!頼むから共同事業だけでも元通りにしてほしい」


「申し訳ありません。ブロウ伯爵子息、お引き取り下さい」


私は断固態度を変えない。

貴族社会では隙を見せればつけ込まれるだけだから。


ただこれで相手が引き下がるとは思えない。

相手は家令を連れているから、私を馬車に乗せて、強引にブロウ伯爵家に連れて行くつもりかも。

夕方で人通りの少ない通りで2対1の状況……うーん。


「アレステ、とりあえず馬車に乗って話そう!」


案の定、そう来たか。


「お断り致します。ブロウ伯爵子息とブロウ伯爵家には、今後関わらないとのお約束ですので」


私が言い終わる前に、ブロウ伯爵子息がこちらに近付いてくる。さて、どうしようか?




「失礼、お話中申し訳ない」


突然ブロウ家の馬車の影から、声がした。


現れたのは、眩い銀髪と端正な顔立ちの男性。王立学園の制服を着て、生徒会役員を表す色の腕章を付けている。


一瞬「なんでこの人が⁈」と思ったが、私は顔に出さない様に努めて挨拶をする。


「お目にかかれて光栄です、ユリウス・クローディア公爵子息」


学園の生徒会長である第二王子殿下の側近で、生徒会役員のクローディア公爵子息はとても目立つ存在だ。


「優れた容姿と優秀な頭脳、筆頭公爵家という御家柄という全てを兼ね備えた御方で、学園の女生徒に人気がある」と級友から聞いたことがある。


私も生徒会役員として生徒の前に立つクローディア公爵子息の姿を見たことがあって、なんとか覚えていた。


「く、クローディア公爵子息、こんなところでどうなされたのですか?」


ブロウ伯爵子息がしどろもどろに尋ねる。

相当驚いている様子。


クローディア公爵子息の登場は予定外のことだと確信する。


「ブロウ伯爵子息こそ、このようなところで何を?そちらはセレス子爵令嬢ですか?」


クローディア公爵子息がさわやかに言う。

声色は爽やかだか、表情はあまり変わらない。


「あ、えぇ…」

歯切れの悪いブロウ伯爵子息。


「貴方方は先日婚約関係を解消されたと聞いたが」


「ぐ、偶然会って話しを…」


「それにしては、なにやらしつこく話されていた様だが」


「く、クローディア公爵子息には関係ないことだ」


「ではこんな薄暗い通りではなく、あちらの明るい通りでお話を伺いましょう」


「ぼ、僕はこれで失礼する!」


ブロウ伯爵子息はあっという間に馬車に乗って行ってしまった。

後に残されたのはクローディア公爵子息と私だけである。


「余計なことをした」


クローディア公爵子息が私の方を向き、済まなそうに言う。やはり表情はあまり変わらない。

確か学園では『氷の公爵様』と呼ばれているんだっけ。


「いえ、助かりました。ありがとうございました」


私は急いで頭を下げる。

子爵家にとって公爵家は雲の上の存在だから失礼があってはいけない。


「もう遅い時間だ。家まで送ろう。近くに馬車を停めてある」


「お気遣い頂きありがとうございます。ですが一人で帰れます」


予想外の申し出に私は内心狼狽えているが、淑女の仮面を全力で被る。


「では私が歩いて家まで送ろう。こんな時間に御令嬢を一人で帰しては、クローディア家の名折れになる」


クローディア公爵子息がさわやかに言う。

声色は爽やかだか、表情に変化はない。

何だか圧を感じるのは気のせい?


「で、ではお言葉に甘えて、馬車に乗せて頂いてもよろしいでしょうか?」


クローディア公爵子息を徒歩で送らせたら、当家の名折れになってしまいますので。

お立ち寄り頂きありがとうございます。

1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。

またよろしくお願い致します。

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主人公は一応は有能設定みたいなのだけれども、危ない連中を相手にしているくせに、弱い自身に対する危機対策が欠如している行動が相反している。読み進めるとこの矛盾も解消できるのだろうか? -- 令息と子息の…
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