07 婚約破棄から4日目 領地からの報せ
婚約破棄から4日目の夕方、領地から早馬が届いた。
領地の護衛の件について、ジーク隊が今朝方セレス領入りしたとの報せ。
私はホッと胸を撫で下ろした。
今日一日この報せを待っていて、ずっと落ち着かなかったからだ。
「レイは領地のこととなると心配性になる」と父にも言われたが、全くその通りだと思う。
自分でも原因は分かっている。
8年前、セレス領は賊に入られたのだ。
当時の領主夫妻が殺害され、領民の子供3人が行方不明になった。
殺された領主夫妻は私の実の両親で、犯人は今も捕まっていない。
ジーク隊長とはその縁で知り合った。両親を亡くした私に、無骨だがとても良くしてくれた。
そのため領地の家令や領主館の使用人はジーク隊長のことを良く知っている。今回私が出した急な指示にも、臨機応変に対応してくれるだろう。
あとブロウ伯爵家から手紙が来た。
「共同事業の解消について見直してほしい」との内容だった。
父は婚約破棄に伴う「無関与不干渉の誓約書」を理由に、断りの返事を出した。
両親はブロウ家に憤慨していたが、私は手紙なら直接的な危険がなくて良かったと思っている。
ブロウ伯爵家がセレス家に直接乗り込んで来られても困るし。
まぁ巷が婚約破棄の噂で持ちきりの今、破棄した側のブロウ伯爵家の関係者がセレス家に来たとなれば、余計噂になるだろう。
プライドの高いブロウ伯爵夫妻がそのようなことを許すはずはないと思うけど。
ブロウ伯爵は強引な方だった。
当家よりも格上の伯爵家であり、かつ養父より年が上で、いつも横柄な態度を取る方だった。
ブロウ伯爵家が共同事業に拘るのは、なんとなくわかる。ブロウ伯爵家は共同事業に名を連ねることで、投資家としての名声を得ていたのだと思われる。
そして共同事業に利益が出始めたら「分前を寄越せ」とセレス家に言うつもりだったのだろう。
養父であるセレス子爵は堅実な人柄だ。
共同事業を解消して単独事業で続ければ、近いうちに利益に転じるだろう。
そのために必要と思われる資料は、父と家令に渡してある。
王都での事業が成功すれば、セレス子爵家に金銭的な余裕ができる。
そうなれば後継のクリスの将来の選択肢が増える。
ブロウ伯爵家との婚姻関係がなくなっても、セレス子爵家に不利にならないように最善を尽くしたい。
お立ち寄り頂きありがとうございます。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
またよろしくお願い致します。