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婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜  作者: みのすけ


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67 継承の儀

この部屋には、セレス子爵家とセレス領に関わる物が納められている。王家から贈られた家宝も此処にあり、今からセレス伯爵家として継承し直す儀式を行う。


私は部屋の中央に立ち、精神を集中する。

頭の中で呪文を唱え、魔法陣を展開する。


今回は通常の継承に加えて、条件を一部変更させる術式になる。その分魔法陣の数が増えて複雑になるので、ある程度の魔力と精神力が必要になるのだ。


「我、誓約を結び直す」


私を中央に、床に青白い光が円を描き、紋様が刻まれていく。慎重に、複数の魔法陣を、丁寧に重ねてゆく。


魔法は祈りのイメージ、頭の中にある「想い」をイメージに変換して、魔法陣という言葉で表す。よりはっきりと、より細かく、より強く、思い描く。


"領地の民と仕えてくれる家人、自然豊かなこの地を末永くお守り下さい。両親は亡くなり、自分もセレス家からは出てゆく身だけど、離れていても、いつも幸せを祈っています"


どうか、この祈りが届きますように。


「アレキサンドライト・セレスの名において命じる。汝、セレス領を永久に守り給え」


床の魔法陣が弾け、辺りが一瞬暗くなる。

すると天井から光の粒がふわふわと落ちて来た。


この光の粒は部屋の外でも見られたようで、廊下から使用人達が声を上げた。


光の粒は一頻り降り注ぐと、まるで粉雪のように触れたものから消えてゆく。


私はゆっくりと息を整えた。


「お父様、儀式は終わりました。家宝を確認して頂けますか?」


「わかった」


父は壁に据え付けられている什器から箱を取り出し、蓋を開けた。中には家宝の宝石アレキサンドライトが蝋燭の明かりに照らされ赤色に発色している。


父は恐る恐る宝石を手に取り、頭上に翳した。

大ぶりで、一目で高価とわかる品だ。


今までは継承者以外が触ると弾かれたのだが、父でも取り扱いができる様になっていて、私はホッとする。


「お父様、継承の儀は恙なく終わりました。

後の事はよろしくお願い致します」


「良くやってくれた、レイ。今までありがとう」


「はい」


父を残して部屋を出ると、家令を始め使用人が涙ぐんでいた。家令のモランが言う。


「お嬢様、ご立派にお勤めでした」


「モラン、皆、今まで支えてくれてありがとう。これからは家宝が貴方達を守ります。お父様のことをよろしくお願いします」


「畏まりました」


使用人一同に頭を下げられ、私はユリウス様と共に廊下を進む。


「レイ、見事だった」


「ユリウス様、お付き合い下さりありがとうございます」


ユリウス様は父から、今日の儀式のことを聞いたそうだ。


セレス家には『直系しかできない手続き』がある。いわゆる古代魔法を使い儀式を行うことだ。


現在唯一の直系である私が、今の家族に『手続き』を通じて継承させれば良いと考えていた。


ところが、父や母、クリスは術を使えなかった。騎士の兄も同じく。

魔術が主流の我が国で、古代魔法を扱える者は少ないから仕方ないことだろう。


そのため私が「今後継承の儀を行わなくて良い様に誓約を結び直す儀式」を行った。

これならば今後儀式を行わず、家督と一緒に家宝を継承することができる。


儀式の結果、家宝は直系でない父でも取扱できるようになった。しかしながらセレス領を守る要石として誓約を結び直したので、家宝は領地からは動かせなくなった。


いわば、宝石アレキサンドライトがこれから領地を守ってくれるのである。


「レイ、これで良かったのか?」


「はい。私も肩の荷がおりました」


私は微笑む。身体に力が入らないが。


「ユリウス様、私は着替えて参りますので」


部屋に戻ろうとしたところ、ユリウス様が私をヒョイと持ち上げた。


「ゆ、ユリウス様⁈」


「レイ、無理し過ぎだ。力が入らないのだろう?」


いわゆるお姫様抱っこで、私を部屋に運んでいく。私は顔が赤くなって、手で顔を覆う。


「お恥ずかしい。お気付きでしたか….…」


「皆に心配かけないように強がっているが、あれ程複雑な魔法を見せられれば流石に気付く」


寝台にそっと下ろされる。


「ありがとうございます。重かったのに……って、えっ⁈ユリウス様!」


私はユリウス様の手を掴む。

ユリウス様の手は私の衣装の腰紐を引いていて、衣装が解けかかっていた。


「着替えを手伝おうかと」


「だ、大丈夫です。それくらいは1人でできますから」


「この衣装を着たレイはもう見れないだろう?綺麗だからよく見たい」


「あっ、んっ」


唇を奪われながら寝台に押し倒される。

力が入らないから抵抗できない。


「こちらのアレキサンドライトは俺のものだから」


アイスブルーの瞳を嬉しそうに細めて言う。


だめだ。

この瞳に見つめられると、動けなくなってしまう。


きっと私が魔法にかかってしまうのだろう。


ああ、でも甘やかされすぎだ。

ユリウス様が忙しくてなかなか会えないから、会うと余計に甘やかされてしまう。


こんなことが続いたら、私はもう1人に戻れなくなってしまいそう。


その晩、私は寝台から動けなくなってしまった。

お立ち寄り頂きありがとうございます。

また、ここまでお付き合い下さりとても嬉しいです。

残り1話で完結する予定です。最後まで見届けて下さると幸いです。

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