表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜  作者: みのすけ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/68

52 闇の中の邂逅(ユリウス視点)

祖父の部屋で魔術細工の箱を開けた後、気付くと俺は何かの動物になっていたようだ。

言葉を発することができなく、また目線が低い。手足の感覚が違う。


辺りは真っ暗で、闇に溶けた自分の姿は見えない。


すると誰かが近付いてきた。

匂いからレイだと分かる。

彼女は座って、俺の背を優しく撫でていてくれた。


これは夢なのだろうか?


だとしても、彼女の側にいるのは居心地が良い。暗闇でも、静寂でも、こんなにも心穏やかにいられるなんて。


すると何かが近付いてくる気配がして、俺は警戒を露わにする。


現れたのは俺の姿?

どうして?


しかしそれは俺ではない。

彼女は気付いてくれるのか?


そうこうするうちに、身体がなくなり、意識だけになった。


俺の姿をした何かと、レイのやり取りを見せられている?

これが祖父の魔法?



過去に2人がどのような話をしたのか気になるが、今の様子から、祖父がレイのことを『才能の原石』と称した理由がなんとなく分かる様な気がした。



「ふふふ……ユリウスのことが気掛かりでね。最後のお節介だ」


ああ、お祖父様は最期まで俺の身を案じてくれたのだな。



「しかしこれは本来ユリウス様のためでしょう?」


「だとしたらどうする?」


「閣下の想いが、ユリウス様に伝わると良いと思います」 



レイの気持ちが嬉しかった。

本人はこんなことに巻き込まれるなんて、思ってもみなかっただろう。

それなのに、こんな時まで他人のことを気遣うなんて。



「ユリウス様はなくてはならない方です。大切に思うのは当然かと」


「それは自分にとって?国にとって?」


「全てにとって」


はっきりと言い切るレイに少し驚く。

彼女にとって俺は『なくてはならない存在』になれたのだろうか?




「そう言う割には、あれと距離を置いている。側に置かないのか?」


そうだ、レイは特定の誰かを側に置かない。学園の中で付き合いがある者でも、誰も彼女のプライベートは知らなかった。

彼女はいつも一人で動く。



「私には妻との思い出があったからな。君は誰かを側に置く前に、その者を喪失した後のことばかりを考えている。ユリウスを選んでから、いつか来る別れを恐れても遅くないだろう?」


レイは両親を亡くしているから、喪失の痛みを余計に恐れているのだろう。



「剛胆かと思いきや、意外と臆病なのだな」


「自分でも承知してます」


それでも、望んでくれるなら。

共にいたいと思ってくれるのなら。



「ユリウスの何処が気に入っている?」


「……優しいところです」


「容姿に目を向ける者が多い中、変わっている娘だ」


「ユリウス様は確かに美しいですが、それは彼の一部であって本質ではありません」



素直に嬉しいと思った。

何かが認められた様な気がした。


自分の容姿を目当てに集まってくる人とは違う、公爵家目当てに集まってくる人とも違う。


俺自身を見てくれて、自分の意思で側にいてくれることが純粋に嬉しかった。


今まで抱えていた何かが慰められたような気がして、

俺の中の何かが認められた気がして、

心が満たされてゆく。


俺は彼女のことが好きだ。

誰かを好きになって良かったと、初めて思った。

お立ち寄り頂きありがとうございます。

また、ここまでお付き合い下さり、とても嬉しいです。

拙い文章ですが、登場人物の行く末を見守って頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ