36 馬車の中
テラスの部屋から出た後、私達は帰りの挨拶もそこそこに馬車に乗り込んだ。
ユリウス様はいつもの無表情に戻っていたが、ずっと手を離してくれなかった。そのため、広い馬車の片側の席に並んで座っている。
「ユリウス様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
私はユリウス様を見上げて声をかける。
ユリウス様の端整な顔が、いつもより近くにある。
「……レイのせいではないよ」
ユリウス様は私の方を見ない。
無理して答えたように感じた。
「私の身を案じて、今日ずっと付き添って下さったこと感謝しております」
「……」
「ですが、ユリウス様が無理をすることを私は望みません。今後は無理をしないように話し合いましょう。私にできることもあるかと思います」
「……俺は無理してないよ」
「無理してます。ユリウス様、元気ないですから」
「……わかるの?」
「わかりますよ」
「……どうしたら良いかな?」
「元気を出す方法ですか?」
「……そう」
「……孤児院の子供達にやってることでも良いですか?」
「……いいよ」
私は座席に膝立ちになってユリウス様より高い目線になる。驚いたユリウス様は繋いだ手を離す。
私はユリウス様の頭に腕を回して自分に引き寄せる。私から抱き締めた。
ユリウス様の銀色の柔らかな髪の毛に、私は顔をつける。
さすがに今の自分の顔をユリウス様に見られるのが恥ずかしい。自分から抱きしめるなんて、孤児院の子供達にしたことはあるが年上の男性にしたことはない。
でも後悔はしていない。
こうすることが今必要なことだと、確かに思ってしまったから。
しばらく固まっていたユリウス様だが、緊張が解ける頃にユリウス様の腕が私の背中にまわされる。身体が引き寄せられ、より触れ合う。
ユリウス様の腕に力がこもるのに対し、私は自分の腕を緩めてユリウス様の頭を撫でた。
「……元気でました?」
「….…まだ。もう少しこのままで」
お立ち寄り頂きありがとうございます。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
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