33 夜会の花
「ライオール殿下!」
「セレス伯爵令嬢、さあ参ろうか」
私は殿下に手を引かれてフロアに戻る。
「急にすまない。貴方が他の人と踊ると都合が悪くてな」
だよね、約束はしてなかったし。
「王家としてはセレス伯爵家に急に近付く貴族を牽制したいということでしょうか?」
「それもある」
それも、ということは正解は他にあるのか。
「王家より過分な御配慮を賜り、感謝しております」
「ふむ。セレス嬢とは学園在学中話す機会がなかったが、なかなか見どころがあるご令嬢だ。
ユリウスが気に入るのもわかる」
「クローディア公爵家として王家の意向に沿った結果かと思います」
「それも間違いではないな。これはユリウスも大変だ」
「ユリウス様がどうかされたのですか?」
「うむ。最近あやつの様子が少し変わったと思ってな。心配するような変化ではない。幼なじみとして良い影響だと思っている。セレス嬢のおかげかな?」
「まさか。私は何も」
「ユリウスのこと、これからも頼む」
「殿下、私はユリウス様とは何も…」
「わかっておる。婚約者のフリだろう」
ライオール殿下が耳元で囁かれる。
誰かに聞かれたら今日の努力が水の泡になってしまう。
「ご存知でしたか」
私は誤解がないことにホッとした。
「おっと!ユリウスが睨んでおる。セレス嬢、機会があればまた話そう」
ライオール殿下の手を離れ、ユリウス様の元に行く。ユリウス様は無表情ながら何だか不機嫌そうだった。ご令嬢達に追い回されたのだろうか?
「殿下に何か言われたか?」
「ユリウス様が最近変わられたと、仰っておいででした。良い影響だと」
「そうか」
それからユリウス様と一緒に挨拶周りを続けるが、離れる前よりユリウス様と距離が近い。
ダンス前はエスコートの形だったが、先程からユリウス様が私の腰に手を置かれている。
伯爵家以下の挨拶周りをしているので、より強めに仲良しアピールするつもりなのかも。
先程から下世話な勘繰りもチラホラあったし、たまにマナーのない人もいたし。
そう言う時のユリウス様は学園の通り名の『氷の公爵様』そのもので、笑顔で相手を一刀両断していく。
正直、敵に回したくない相手だと思う。
「ユリウス!いい加減セレス嬢を独り占めしすぎよ」
シルフィーユ様とその婚約者ロバート・リブウェル公爵子息が近付いてきた。
大貴族同士のビックカップルに周囲が道をあける。
お2人には夜会の始めに軽くご挨拶してそのままになっていたから、向こうから私達を探してくれたらしい。
長い銀の髪を揺らしながら優雅に歩くシルフィーユ様こそ、まさに『夜会の花』!
その美しさに見惚れてしまう。
婚約者のロバート・リブウェル公爵子息とも大変お似合いだ。
リブウェル公爵子息はシルフィーユ様より年上で、ユリウス様と共に第二王子ライオール殿下の側近を務められている。
「セレス嬢、来週茶会をしましょう。貴方とユリウスとのこと、しっかり聞かせてもらうわね」
「シルフィーユ様、卒業式が近くお忙しくていらっしゃるのに…」
「それはそれよ。セレス嬢は私が先に目をつけたのに、ユリウスばかり独り占めしてずるいわ」
シルフィーユ様は面白がっていらっしゃるだけだと思うが、お茶会で誤解は解いておこう。
シルフィーユ様はユリウス様と親戚だし、学園でも良くして下さったシルフィーユ様にユリウス様との仲を誤解されるのは心苦しい。
ユリウス様がぐいっと私を引き寄せる。
「シルフィーユにはロバートがいるだろう」
「独占欲が強すぎる殿方はもてないわよ、ユリウス」
「まあまあ、2人とも」
リブウェル公爵子息が割って入る。
私はユリウス様に肩を抱かれた状態で身動きが取れなかった。
お立ち寄り頂きありがとうございます。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
またよろしくお願い致します。




