03 婚約破棄から1日目 茶会
婚約者破棄されてから1日目、午前中に身の回りの整理をした。
使用人達に事情を説明して、協力をお願いする。
並行して領地に行く準備を進めた。
午後は学園の級友3人が訪ねてきてくれた。昨日の騒ぎを聞いて心配で様子を見に来た様で、急遽お茶会となる。
「セレス様、私悔しいですわ!あんな身勝手な理由で!私達はセレス様の味方です」
「そうですわ!あんな碌でもない男のことは早く忘れて、元気を出して下さい」
「ドロール嬢もひどいわ‼︎セレス様の婚約者を獲るなんて!そもそも学園で浮いていたドロール嬢を気遣って、セレス様がお世話して今の様に落ち着いたのに。恩を仇で返す様な真似をして…!」
紅茶を一口飲んで早々、口々に捲し立てられてちょっとびっくりした。普段はお淑やかな令嬢達なのだ。
私のことをすごく心配してくれているのが伝わってくる。
「皆様、私の為にありがとうございます。もう大丈夫ですから。ただ、この様なことになり私は学園を去ろうと思います。今まで一緒に過ごして下さり、ありがとうございました。とても楽しかったです」
こちらの級友3人は子爵家のご令嬢で、昼食を一緒に食べたり、一緒に試験勉強をしたりと仲良くしていた方々だった。
私は笑顔でお礼を言えただろうか……。
「セレス様が身を引かれる必要ありませんよ!悪いのはブロウ伯爵子息です」
「セレス様がいない学園なんて、つまらないですわ」
「セレス様のファンも、懐いている後輩達も悲しみます」
私のファン?そんなのいないが、まぁいいか。
彼女達の話を聞くのはとても楽しい。
学園の人間関係、社交界の噂、市井の流行り、話題が尽きない。
ガールズトークは夕方まで続いた。
学園には退学手続きのために行く予定だが、今日ゆっくりお別れを言えて良かったと思う。
社交界で会うこともあるだろうが、婚約破棄された取り柄のない令嬢では付き合う価値もないだろう。彼女達の友情を疑うわけではないが、今の自分に価値を見出せない私には、いつでも潔く身を引けるように、心の準備をしておきたい。
✳︎
夕食後、兄に呼ばれて書斎に行く。
養父が同席しないという事は、兄の仕事絡みの話だろう。
兄オリバーは子爵家の出ながら王太子殿下の護衛を務めていて、周囲からの信任も厚い。
現王家は爵位に関わらず優秀な者を取り立てる方針らしく、兄が王太子殿下の護衛任務に就いてから2年が経っていた。
「レイ、ブロウ伯爵家との縁談だが……正直破談になって良かったかもしれない。ブロウ家が少々きな臭くなってきた」
「お兄様、それは……何かわかったのですか?」
「レイが以前『ブロウ家の住み込みの小間使いが、領地で行方不明になった子供に似ているかも』と言っていただろう。気になって調べたら、色々不明瞭な点が出てきてな」
「私が気のせいかも、と切り捨てた事を調べて下さったのですね。お兄様、騎士団でお忙しくていらっしゃるのに……」
「レイは領地で行方不明になった子供達の事をずっと気にかけていただろう。私も力になりたいと思っているから」
「お兄様、ありがとうございます。もしブロウ伯爵家の小間使いが領地の子供だったら、どうか力になってあげて下さい」
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