表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/68

17 セレス子爵の話(ユリウス視点)

「クローディア公爵子息におかれましては、娘をブロウ伯爵子息から助けて頂いたそうで本当にありがとうございました」


王都のセレス子爵家の応接室で、俺はセレス子爵から感謝されていた。

ブロウ伯爵子息が孤児院帰りのセレス子爵令嬢を待ち伏せしている場に居合わせ、彼女を助けたからだ。


俺はブロウ伯爵家の顛末を伝えるためにセレス子爵と面会の約束をした。


もちろんセレス嬢の見舞いも兼ねてのつもりだったが、彼女は既に王都を発っていた。


ドロール男爵家別荘から騎士団に保護されたセレス嬢は、事件の被害者として事情聴取された後、王都のセレス子爵家に帰された。

その翌日には一人で領地に向かったという。


子爵の話によると、セレス嬢は婚約破棄に伴い、本人の希望で領地に行くつもりだったそうだ。

加えて今回の事件により「落ち着いた場所で療養したい」と本人が言ったため、当初の予定通りに領地入りしたとのことだった。


セレス嬢は以前から兄オリバー上級騎士にマリアのことを頼んでおり、マリアが希望すればセレス領に戻れる様に手配していたそうだ。

準備が良すぎるというか、前々から予定している様に無駄のない動きだ、と思ってしまう。


セレス子爵にブロウ伯爵家のことを伝えると驚いていた。


事前の調べでセレス子爵家はブロウ伯爵家の不正に関与していないことはわかっていたが、セレス子爵は本当に何も知らなかった。


もしこのままブロウ家と婚約関係が続いていたら、セレス子爵家にも少なからず影響があっただろう。


婚約破棄の噂があったため世間ではセレス子爵家を疑う者は少なく、社交界も同情的だ。


このタイミングもこの結果も、偶然なのだろうか?


俺の中では、先日感じた違和感が少しずつ大きくなってきていた。



セレス子爵家に関する資料によると、前子爵夫妻が死亡した後、前子爵夫人の妹夫婦がセレス家を継いだ。

今のセレス子爵は、セレス家親戚筋の男爵家の次男であった。彼は夫人と結婚して2児の子に恵まれ、幸せながら慎ましく暮らしていたらしい。


セレス子爵家の歴史は古く、時の王家から宝石が下賜された程の家柄なので、セレス夫妻が亡くなった時は後継者問題が取り沙汰された。

色々と大変だったようだが、今のセレス子爵を据えることで家門は何とか存続できた。


セレス子爵夫妻は元々貴族の教養があるため、子爵家に入った後からセレス領を盛り立ててゆく。

新しい産業を興し、税収も増えて、領内を豊かにした。さらに王都でも事業を興し、その影響力は確実に大きくなっている。




ブロウ伯爵家への処分について、俺は王太子殿下からの内示をセレス子爵に伝える。

足りない情報があればオリバー上級騎士が子爵に内容を補足するだろうが、彼は騎士団の仕事でしばらく家に帰れないだろう。


ドロール男爵家繋がりで余罪のある貴族を一掃するため、王太子殿下は騎士団に新たな命を出したはずだ。


セレス子爵は俺の話に納得したようだった。


本来ならここで話は終わりになるのだが、俺は子爵に幼い頃のセレス嬢のことを聞いてみた。


すると子爵は少し申し訳なさそうに話した。


「アレキサンドライトの亡くなった両親は身分に関係なく、どんな人とも仲良くなれる方々でした。そのためか幼いあの子も誰とでもすぐに仲良くなる、輝く魅力のある子でした。


しかし両親亡き後、この屋敷で再会したあの子は随分変わっておりました。貴族令嬢として懸命に振る舞い、家人や領民を守ろうと努力した末の、今の姿でした」


未成年の女児では家督が継げないため、アレキサンドライトから叔母夫婦に襲爵を願い出たそうだ。

前子爵の妹家族がセレス子爵家を継げるように自ら差配し、自分は平民になるつもりだったという。


子爵は一人残されたアレキサンドライトを、家族に迎えようと決めていたそうだ。

彼女は「セレス家のためになるなら」と養女になることを承知したという。

おそらく彼女は自分が政略結婚の道具としてなら役に立てると考えたのだろう。


当時8歳の少女が、両親を亡くした悲しみも癒えないだろうに、どうしてこのように振る舞えるのか?

私はセレス子爵令嬢にますます興味を持った。


「セレス子爵、ところでセレス嬢は魔術が使えるのですか?」


俺はさりげなく聞いてみる。

攫われた子供達を何年もかけて探すなんて、魔術師が協力しないと難しいだろう。


しかし子爵によるとセレス子爵家は魔術師の系統ではなく、セレス嬢はおろか、使用人にも魔術が使えるものはいないとのことだった。


「以前は使える者がいたそうです。この屋敷の家令で、長くセレス家に仕えていたと聞いています」

「その方は今どちらに?」

「故郷に戻ったと聞いております」

お立ち寄り頂きありがとうございます。

1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。

またよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ