7.ボディ難航
その後頼まれてた隊長の装備の受け渡しは無事に終わり、何かやたらと喜んで、他人様の家の屋根の上をぴょんぴょん飛び跳ねて帰ったが、やはり忍者モチーフでよかった様で一安心だ。
そのまま旅に出ると伝えられたが、隊長が行方不明なのはいつもの事で、すっかり慣れたし放っておく。
多分お腹が空くか、装備が壊れたら戻ってくるだろう。
更に【帝国】所属のもう一人の集団戦エキスパートと呼ばれてるソタローの装備をメンテナンスを依頼されたりする傍ら、鉄人のボディ作成に勤しむ。
何しろこのゲームでロボが発掘されたなんて話は始めて聞くし、十中八九アップデート要素だと思われる。
つまり、何所かで秘匿されてるか、本当に自分の目の前にいるロボが一体目かとそんな所だろう。
鉄人を拾った場所に何度も潜るが、ボディらしき物がどうしても見当たらないので、原型が分らないままこちらのイメージで進めるしかない。
基本的に金属製だし、内部の配線やら歯車に油圧ダンパーetcetc……子供程度のサイズに納めても相当な重量になるのが見えてきた。
いっそ風精を上手く使って空気圧式で稼動できないかな?などと考えている内に何となく構造が見えてくるのがスキルの凄い所、普段現実の方じゃ全くそんな機械関係など知らないのに、何となく何と何をくっつければいいのかが分る。
何度目かの古代の鉄屑、通路表面に使われていた金属板はおおよそ剥がされ、内部部品が剥き出しのまま放置されているのは、使い道が分らないからか、はたまた特殊合金の加工で手詰まりなのか。
逆に自分は鉄人の修理の為に必要な部品を引っぺがしやすくてありがたいが、今は推進力で迷っている。
雪国で重量物を移動するには歩行より滑走が効率的なのは言うまでもない、となると足はスキー状にして普段は滑走、段差を上り下りする時だけは歩行とするのがいいだろう。
その場合、問題が二つ。
一つ目が平坦な道を滑走する場合、推進力をどうするかと言う事、風精を打ち出してすべる事も考えたが、重量が重量なだけあって周囲への被害も出そうだし、一気に押し出せば他人にぶつかる可能性もある。
二つ目に、ここの中枢と思われる部屋に辿り着くには梯子を降りなくてはならないという事だ。梯子自体の耐加重は高そうだが、コレを降りる機構となると思いつかない。
もしかしたら、他にも通路があって何かヒントが無いかと思って探るのだが、今の所自分にはさっぱり分らん。
まあ探索用のスキルなんかもってないし、仕方ない事なのだろうが、あとは直接壁を引っぺがして物理で押し通るしかないか?
これが普通のダンジョンなら、壊したオブジェクトは一定時間で直ってしまう物なのだが、今回のこのクエストはこの巨大な鉄屑を解体してくれだし、多分いけるんじゃないか?多分。
無限にロボ素材回収できる素材回収用フィールドだったら手に負えないけども……。
何度も念入りに探してる筈なのに、また無傷の古いメモリボードが手に入ったしな~。
記憶は一向に戻らないが、処理速度は上がったのか鉄人もかなり流暢に話すようになった。
とりあえずある程度の所で素材回収を切り上げて店に戻る。
すると、家の裏にヒトが倒れていた。
その分厚く筋肉で鎧われた体と反比例してぎゅっと詰まったような身長は、ドワーフだ。つまり親方が倒れている。
「親方~一仕事終わって休憩してる所悪いけど、子供だって来るんだからそんな大っぴらに雪に沈まなくてもだな……」
「あ~ん!クラーヴンか!いいじゃねぇか!俺は仕事の後の雪浴みが楽しみで鍛冶やってんだ!お前も仕事帰りだろ?一緒にどうだ?」
「一緒にも何も、雪降る街道をソリで行ったり来たりしてんだから、すっかり芯まで冷え切ってるよ」
「何だよ。折角師弟水入らずで、雪浴みしようってのにだな」
「大体なんでそんなに暑いのが苦手なのに鍛冶やってんだよ」
「別にいいだろうが!鍛冶は好きなんだよ!でも暑いのは嫌いなんだよ!だからこうして仕事の後の雪の一浴びが楽しみなんじゃねぇか!」
「はいはい、好きにしてくれ。俺は中で飯でも食ってるわ」
「おう!今日はクラームが貝を仕入れてきたから、貝のスープになってるぞ」
と、言う事で店の中で飯にする。
このゲームは渇水度や空腹度が設定されているので、定期的に食事をする必要がある。
いつも外を出歩いて魔物狩りをしてるような連中は携帯食とかいうボソボソの何かを食ってるようだが、自分は店で何かしら食べている。
現実の仕事柄、自分も料理できるし、親方はじめクラブもクラームもまあまあ作る。弟子が必ず作らなきゃならないって事も無いのだから、緩い職場だ」
それで、食事をしていると親方が戻ってきて、酒を出して飲み始める。
「それで、何か煮詰まってるみたいじゃないか?相談なら乗るぞ?」
「相談したいのは山々だけど、親方は鉄専門だろ?」
「まあそりゃな、でも一応知識だけは故郷でつけてきたし、構造で何とかなる話なら俺でも結構分るからな」
「それじゃあ……」
鉄人のボディの事で困っている事を相談してみる。