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6.鉄人

 「ほれ、カーチ、ジュース置いておくぞ」


 「うん、ありがとう!」


 自分が飲み物を取りに行ってる間も、例の鉄屑と一心不乱に話し続けるカーチ。


 もう少し任せておいてもいいかと、もう一度裏に戻る。


 何しろカーチが今日この店に来た理由は、頼まれてたオーダーメイドの武器の受け取りの為だ。


 実際、生産職が客を探して露天で売るとなると、そのあと素材を掘りに行って、そこからまた作成して……。


 まあ時間がかかる事この上ない。


 それでもそういう使ってくれる顧客とのやり取りが好きな者もいるだろうが、どうしてもゲームの性質上、熟練度上げのような試行回数が品質に直結するので、よっぽどスキル熟練度やステータスを上げきった生産職じゃなきゃそこまでの余裕はないだろう。


 当の自分も鉄だけなら拠点としてる土地の性質上、試行回数も多いし、まあそれなりなんだろうと思うが、他の金属は偶に取り寄せて試す程度だ。


 そうなると、こういう【商人】の存在が凄く助かるのも分る。


 はじめこそクエストで受けられる鍋やら包丁ばかり作っていたが、何やら運営イベントに参加して以降、直接作ってくれ作ってくれと言われるのは、面倒になっちまった。


 そりゃ頼まれれば作りたいが、何が欲しいのか具体的に言わずに、ただ強い物だ!とか言われても、俺は鉄しか打たん。


 なのでカーチの様な仲介役にいて貰えると非常に助かるという訳だ。


 今回頼まれたのは、薙刀なのだが、随分と待たせてしまって申し訳なかったので、色々拘ってみた。


 何でもゲームの外、現実の方で実際にやってるプレイヤーらしく、本物の薙刀の形やバランスなんかを調べるのに時間がかかったのが一つ。


 刀身の基本的な素材は鉄だが、先方から提供されたカマイタチ?とか言う魔物の素材を使って、やたら鋭く仕上がった。


 自分のイメージだとつむじ風に紛れて、足を斬ってくるイタチのイメージなんだかどうなのだろうか?


 まあそれと更に拘ったのが、柄の部分だ。


 何しろ相手は【森国】のプレイヤー名前の通り木の産地だし、相当うるさいだろうと思って、知り合いの木工職人に連絡を取り、朱塗りの逸品を作ってもらった。


 何しろ相手は女性プレイヤーだし、多少華やかな方がいいだろう。まあ中身は実用を詰め込んだのだが、気に入ってもらえるだろうか?


 一見すると分らないが、朱塗りの上に透明な紋様が入り、日の当り具合でさり気なく浮き出るのだが、気がつくだろうか?


 こういう、自分の自信作を渡す時が一番緊張するし、楽しいものだ。これだから生産職は辞められない。


 ついニヤニヤしながらカーチの元に戻る。


 「とりあえずコイツが依頼の品だ。まあそれなりにいい物にはなってる筈だぞ」


 「あ!そうだった!へ~!女の子の装備を作るのは苦手かと思ったのに、超可愛い!依頼主さんの要望通りだ!」


 「まあその超可愛いって言う要望が一番よく分らなかったが、大丈夫か?」


 「うん!明るいオレンジ寄りの赤とか、多分肌の色に似合うし!この模様も蔦が巻き付いてるみたいで可愛い!頼まれてた範囲延長と<防御>すり抜け性能も付いてるし、完璧!」


 「その性能は向こうから提供された素材の効果だがな」


 「それをちゃんと引き出せるのが生産職の腕じゃん!何かカマイタチって、防具を無視した攻撃が出来るんだってさ!素の防御力で受けるか回避するかしかないんだけど、素材を使っても防御力数パーセント無視位の効果しか出ないって聞いてるよ?」


 「そりゃ腕が悪いんだろ。普通に使える範疇の素材だったし、<防御>すりぬけなんて、要は相手のスキルキャンセル能力じゃないか。重装相手なら割と普通だし、何なら武器無しで出来る奴もいなくはない」


 「そんなの変人の話だから、知らないよ。それよりさこの子!」


 「ああ、何か分ったか?」


 「ううん!何にも分んない!でもね、多分もっと情報を集めれば分るかもしれないって!」


 「情報を集めるってのは、どうやってだ?」


 「クラーヴンにもうちょっと修理を進めてもらったら、一緒に拾った場所に行って、そこに残った情報を収集したいんだって!」


 「なる程な。現地に行ってあそこに残った情報を収集する訳か。んじゃあ、とりあえずボディ優先だな。メモリが見つかったらそれも追加してやる」


 「アリガトウ ゴザイマス」


 「あとあと!武器もつけてあげて!」


 「何でだよ?」


 「この子、何かと戦ってたみたいなの!」


 「そりゃあ、軍属みたいだし、そういう事もあるだろうが、どんな武器がいいんだ?」


 「シャシュツ ソウチ ノ キドウ エンザン オヨビ ……」


 「なんか、射撃武器がいいみたい。でも記憶が曖昧だから、あまり遠距離まで飛ばすのは分らないかもしれないって」


 「じゃあどれくらいの距離飛ばす武器がいいんだ?」


 「多分、触れて打ち出すくらいの射出装置?」


 「それ射出する意味あるのか?」


 「でも、殴ったり斬ったりは、メモリに残ってないって」


 「まあ、それが要望なら何とかするのが鍛冶屋の仕事だがよ」


 「うん、そこはクラーヴンにお任せだけど、この子の名前何にするの?」


 「カーチが決めていいぞ。俺はそういうネーミングセンスってのが無いって分ってるんだ」


 「えーーー!でもクラーヴンが拾ってきたんだから、何かつけなよ!」


 「じゃあ、金属で出来てるから『鉄人』とか?」


 「……」


 「ザンテイ コタイシキベツメイ テツジン リョウカイ シマシタ」


 何かこれでいいらしい。取り敢えずはコイツのボディ作成に必要な素材集めだな。

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