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39.人形使い

 「クラーヴン!出たよ!……どうしたの?」


 「ふぁ?何がどうしたって?」


 「いや……だって、目がギンギンだし、何でこんな散らかってるの?」


 「クラーヴン技師長ハ 試作ニ 夢中デ 我ヲ 失ッテマス」


 唐突にカーチの声をかけられ、我にかえると確かに辺り一面散らかり放題。


 そう言えば最近、ログインする度にあらゆる武器の試作を繰り返し、シンプルで使いやすく尚且つ十分な攻撃力がある武器の開発に勤しんでいた。


 何なら防御力もあり、あらゆる状況に対応できる幅の広さも欲しい!


 はっ!


 普段は腕に装備する大剣で、状況によってはスケボーの様に、移動にも使えたらどうだろうか?


 乗れるほど大きければ、盾にも使えるぞ!これは試作せねば!


 「クラーヴン!ちょっとご飯食べよ!何かやつれてきてるよ?」


 言われてみれば最近は面倒で、空腹度の限界が来る度に携帯食を食べていた気がする。


 ゲームでやつれるとは一体どういう事なのか?顔色の悪さまで表現できるという事なのだろうか?


 はっ!


 顔色が悪いといえば、ゾンビ!


 どれだけダメージを食らっても無限に立ち上がるのならそれだけで、敵の心を折れるじゃないか!


 つまり、圧倒的な防御力と回復力!これだ!


 武器に囚われていてはいけない!圧倒的な防具こそ、敵の心を折るに違いない!


 「クラーヴン技師長 一旦食事ニ シマショウ」


 「まぁ、なんだ男ならこの程度の発作は年に10回や20回あるもんだ。俺も若い頃は酒を鍛冶場に持ち込んで、没頭したもんで、師匠から死ぬほどぶん殴られたな。『引火するだろ!』っつってな」


 親方まで奥から出てきて、やっと正気に戻った。


 「こりゃ片付けないとな。悪い……ついこう……インスピレーションが止まらなくなっちまってよ」


 「おい!クラーヴン!飯出来てるから食えよ!」


 奥からクラヴが現れ、カーチが目を丸くしているが、そりゃ見た目そっくりなNPCが出てくればそんな反応にもなるだろう。


 「悪い、ちょっと食ってくるわ」


 フラフラと立ち上がり、奥に行くと優しい味のとろとろに溶けるほど煮込んだ鶏肉のスープ。


 パンを千切っては浸して食べるだけで、どんどん脳細胞にエネルギーが供給されていく。


 溢れるアイデアに一旦蓋をして、自分の今の状況を思い出す。


 ソタローの鎧の内、一つは既に渡し済み、もう一つのソタロー専用装備について考えながら、鉄人の新武器も何かないか考えていたら、はまり込んでいた。


 そういえば、カーチが何か言っていた様な?


 食事を食べ終わり、自分の食器を片付ける。


 何しろ食後血糖値を下げるには、食べてすぐダラダラせずに動くのが一番だ。


 何しろ血糖と言うのは一番早く使われるエネルギーなのだから、とっとと使ってしまえば乱高下など怖くはない。


 まだ引っ掛かってこそいないが、色々気になる年頃、健康の為に食後すぐの食器洗いは習慣と言ってもいい。


 店先に戻るとカーチと鉄人の会話が弾んでいた。


 「そう!私手に入れたの!」


 「オメデトウゴザイマス」


 「何を手に入れたんだ?」


 思わず、聞いてしまう。


 「あのね<人形使>とか~<手繰>とか~モグラちゃんを強くしたりするスキル」


 自分が思いつくまま変な武器を作ってる間に、カーチは目的を達していたようだ。


 「なるほどな。これで準備が整ったって訳だ?」


 「うん!まだスキル熟練度はまだまだだけど、動きは覚えたから、もう戦えるよ!」


 やはり、あのロボはカーチの運命の相棒!自分ではやっと走らせるのがやっとだったのに、既に戦えるまでになっていたとは!


 「じゃあ、そろそろあの基地でドローン相手に実戦を試す頃か」


 「うん!私も〔IRM〕集めて、モグラちゃんの回復したい!」


 「それならこの前大量にビエーラとカヴァリーから貰ってるから、別けるか?」


 「ううん!私が自分で集める!モグラちゃんはクラーヴンに作ってもらったから、直すのは自分でやる!」


 ふむ、カーチは既に立派なモグラちゃんの使い手だ。


 出来るだけ自分で手をかけて、数字には見えない武器との相性を高めていく。


 果たしてロボにも通用する理論なのかは分らないが、何にしてもやっと手に入れた実用攻撃手段を大事にするのは有りだ。


 そして、モグラちゃんにドリルを積み込んだ自分としては、大切にしてもらって本望でしかない。


 「うし!そういう事なら、再び基地攻略だな。ビエーラとカヴァリーは何気にあの基地気にいってるみたいだし、声かけておく」


 「うん!じゃあ行く日が決まったら教えてね!」


 そのまま、外に出るカーチ。


 そう言えばモグラちゃんはどうしたのかと思ったが、ちゃんと表の道の端で路駐していた。


 モグラちゃんの背に乗り、そのままキャタピラでがりがり雪道を進んで去っていく後姿を見て、


 「今度は、ウインカーとハザードもつけてやらないとな~」


 などと思わず呟き、うっかりまた研究に没頭する気持ちを抑えるのに一苦労する。

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