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3.銃の修理

 当面は拾った鉄屑の修理に集中しようと思ったのだが、あっという間に手詰まりになった。


 やっぱりスキル熟練度が足りない。


 しかし基本このゲームで作れる物は複雑な機構の物はなく、精々がバリスタとかクロスボウくらいの物だ。


 そんな中、国から依頼で装備を一式作ることになった。


 まあ国から依頼があるとか大仰な話だが、元々偶に大量生産の鉄剣を納めたりもしていたし、何より知り合いがゲーム内で出世している。


 はじめは同時接続のゲームでプレイヤーが偉くなったら、バランス崩れないか?とか思っていたのだが、何だかんだそういう知り合いが増えていくのを見ると、別にそれでもいいのかとあまり気にならなくなった。


 知り合いの内一人、将軍になっちまったのに隊長と呼ばれている奴が、ワールドクエスト用に集めた装備を丸ごと国に預けちまったとかで、急遽予算天井知らずの最高級装備作成依頼が入ってきたのは、まあクエスト報酬として受け入れたのだが、


 当の本人、多分この国で有数に偉くなっちまった地味な男が、今度は地味なローブ一枚で旅に出るとか抜かす。


 まあ前から薄々感づいていたが、この知り合いはかなりのアホだ。そして変人。


 何しろ普通なら装備もせずに奥地の魔物が強いゾーンに入りこんだらあっさり死に戻るだけだろうし、そんな事をしようとする奴はアホと呼ばれるだろう。


 ところがそんなアホな事をしながら抜け抜けと生きて踏破するのだから、変人としか言いようが無い。


 じゃあ放って置いてもいいのかと言われれば、それはまずいだろう。やはり良識を持った知り合いがちゃんと言って聞かせてやる必要がある。


 アホな変人でも根っから悪い奴じゃないし、頭ごなしに一方的なことさえ言わなければ温厚と言ってもまあ大きく外れない。


 他人の話も半分くらいは聞く奴なら、面倒がらずにちょっと忠告する位は悪くもないだろう。


 そんな中そいつが置いていったのが、銃だった。


 かなり古い型のフリントロック式と見まがうばかりだが、どうやらこのゲームの銃は術用武器扱いらしい。


 術が杖や本で威力を増しつつ、何かしらを媒介に現象を起こす物だとして、


 銃は中に宝石を仕込みその宝石を媒介に術を打ち出す<機構>らしい。


 普通の術と違うのは、起こせる現象が一つである事、数発分溜めてクールタイムなく連射できる事が上げられる。


 術士でない自分には上手く説明できないが、汎用性が無い分連射が効く中遠距離用武器と言う事らしい。


 つまり術士の戦闘手段がよりアグレッシブになったアップデート要素だと思うのだが、何で近接職の隊長が持ってるのかは不明。


 そんな事より、この銃のお陰で<機構>と<機工>のスキル熟練度が溜まってくれる方が重要だ。


 早速修理しつつ、熟練殿溜まり具合を確認すると、例の鉄屑のエネルギー源と記憶装置だけではそりゃ喋れないと分った。


 当たり前だが記憶の出力装置やスピーカーも必要だ。更に記憶を再生するだけではなく、思考装置もあったっぽい。


 つまり高性能AIだった事は間違いなさそうなのだが、同時にそれだとエネルギー源の保持するエネルギー量と出力量が大きすぎる。


 いったい何を目的としたAIだったのだろうか?


 早速剥ぎ取りに行きたいが、装備の件も片付けなければならない。


 とは言え隊長の装備は超軽量の魔物の皮や甲殻を使った物なので、鍛冶屋である自分の腕は必要ない。


 全て【帝国】【古都】の生産職仲間にお任せだ。報酬は天井知らずだし、好きに魔改造させてやろう。


 ちなみに皮をはじめとした服系はコージァと言う職人の領分となる。


 かなりの人見知りの上、特に男とは絶対話さないお嬢ちゃんで、その人見知りの所為であえてプレイヤーの殆どいない【帝国】に来たって言う、知る人ぞ知る古参職人だ。


 ちなみに自分はNPCだと思われていた事で、よく話す。


 何しろNPC二人と自分の3人でローテーションしてるのだから、何回かはNPCに当っているだろう。


 そしてNPCとプレイヤーの確認方法は一つ。相手の左手の甲を見る事。プレイヤーはそこに紋様が浮き出ている。手袋やガントレットをしていてもだ。


 つまり偶々確認した時にクラブかクラームだったんだろう。


 そしてコージァも人見知りを治したいらしいので、自分と話す分には特に警戒もない。


 さて、じゃあ装備関連で何もやる事が無いのかと言われれば、一番の大仕事である隊長のメイン武装の剣を作る事だ。


 剣と言ってもショートソード。


 元来このゲームではショートソードは扱いやすく初心者に向いてるものの、ダメージが出づらくすぐに乗り換えられる装備の筈だが、それを愛用して、尚且つかなり強いと噂の隊長はやっぱり変人なのだろう。


 となれば、一番重要な問題を最初に片付ける必要がある。


 即ち、デザイン問題だ!!!


 ネーミングセンスは無いと前々から周りの者に言われているし、それについては言い訳のしようもないが、デザインについて手を抜く事は許されない。


 幸いコージァもかなり分るタイプだし、早速いつもの店でお茶でも飲みながら話すとしよう。


 こういう真剣な話は酒を飲みながらする物じゃない。


 国から供給される素材のリスト、分厚く大きく、百科事典のようなサイズに細密な文字で書かれたそれは読むだけで何日かかるか分らないが、コンセプトさえ決まれば、必要な部分を抜粋すればいい。


 思い立ったが吉日。早速店番を任せて出かける。

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