251.赤竜VS黒白蛇君
【闘都】中央に位置する最大の闘技場は砂を敷いただけの限界まで簡素なフィールドに透明のフィールドが二重三重に掛かり、その周囲を超満員のヒトがごったがえしている。
闘技者は双方まだ入場していないが、片側には燃え上がるドラゴンのマークが大きく空中に映し出され、反対側には白と黒の蛇が描かれた紋章が浮かび上がって誰と誰の闘技なのか一目瞭然となっていた。
[それでは!南コーナー!最早説明不用!気高き暴君にして世界最強のカリスマ!赤竜様!入~~~~場~~~~!!!]
闘技場に現れるのは真っ赤なワンピースドレスだが、深いスリットと深いノースリーブでセレブの夜会にしか見えない姿ながら、その圧倒的暴力性を隠しもしない赤竜ヒト形態の地黒の女性。
[お待ちかね北コーナー!かつては漆黒将軍と呼ばれ邪神の化身と相対した英雄……しかしその能力は暴力のみではない。今や世界に影響力のある事業家と謳われ、白と黒の蛇の御旗を見れば誰もが道を開ける。しかし、今宵一個の暴力装置として闘技場に現れるは、黒白蛇君!入~~~~場~~~~!!!」
いつの間にやらあだ名の変わってた隊長だが、蛇と竜じゃ勝負は決まってそうなもんだが?
そんなある意味赤竜の暴力の被害者となる男の装備はサイバーNINJAから指貫グローブとショットガンホルダーが外れ、代わりに両手指に指輪を10個とハンドガンを最初から左手に持っている状態だ。
そして、お互いに構える……と言っても赤竜は何だかんだ余裕の笑みを浮かべて両手を腰に当ててるだけだし、隊長は背中の剣を引き抜いて、右手で持ったまま軽く担いでるのみ。
[それでは!赤竜様特別闘技!はじめ!]
掛け声が掛かると同時に、ニヤァっとしか表現の出来ない歪んだ笑みを浮かべた赤竜が瞬間移動し、隊長を殴り飛ばす。
そして殴り飛ばされた隊長はあっさり吹っ飛び会場の壁へと撃突し、ずるずるっと地面に滑り落ちた。
素人目に見てもフォームも何もない、あからさまなテレフォンパンチを相手の反応速度より速くぶち込み、ぶっ飛ばした赤竜は会場のど真ん中で両腕を組んで、高笑いしている。
はっきり言って、それら全てを自分が見切れる訳がないのだが、この会場にはどんな技術が使われているのか、巨大スクリーンが設置されていて、そこでスロー再生シーンを随時流してくれる事で、何とか把握している。
[おっと~~~!開幕直後強烈な一撃!先制攻撃を許してしまった黒白蛇君の運命は!]
煽ってる実況だが、スロー再生を見れば一目瞭然、隊長はきっちり反応して剣で受け止めている。
だがその上で、吹っ飛ばされ壁に激突しているのだから、赤竜の圧倒的パワーも当然ながら分かるという物だ。
立ち上がった隊長が軽く首を両側に倒しながら、調子を確認しつつ会場の中央に戻ると、赤竜が余裕の表情で、かかって来いと手で示す。
肩を剣で軽く叩きながら苦笑いを浮かべると、スッと消える隊長。
寸後に現れたと思ったら、赤竜の左足を払うも避けられ、手から首へと流れるように斬りかかるも、それも回避された。
そこにカウンターで赤竜の左拳が隊長のボディを狙うものの、転がって回避しつつ、隊長の持つ銃から白い閃光が放たれて、赤竜の顎の下を打ち抜く。
一瞬仰け反った赤竜の目が縦に割れ爬虫類の目になったかと思いきや、いつの間にか黒い陰を纏った隊長から細長い黒い陰が伸びて、赤竜の足首に巻きつく。
そのまま、何やら術を使ったと思ったら、赤竜の動きが突然に悪くなる。
それに対して、隊長はいつの間にか銃を陰の手に渡して、空いた手で自分を掴んで別の術を発動していた。
スロー再生では一気に動きの悪くなった赤竜だが、生で見るとその腕すらはっきりと認識できないスピードで振り回され、通った後には根こそぎ何も残さない凶暴性を発揮している。
しかしそれをまるで意に介さないかのように回避し続ける隊長。
そこから更に自分自身に対して、バフを重ね掛けしていくのが見て取れた。
そして、準備が整ったのか急に反撃開始!赤竜の殴りかかってきた拳を避けつつ、その指だけを剣で狙い打った。
更に逆から繰り出される拳をいつの間にか陰から受け取ったハンドガンで迎え撃って、軌道をそらして回避する。
クルッと一回転するように剣の重量で体を回すと、そのままの勢いで回転切り、完全に赤竜の胴を捉えるが、腹筋で跳ね返された。
その勢いを利用して飛び一回転して体勢を立て直すと、赤竜がぶん殴った事で、元いた場所に大穴が空く。
現状、力の赤竜、速さの隊長と言う感じだが、それですら生で捉えるのが不可能と思える超高速の語り合い。
開始一分。まだまだ双方どこか余裕のある表情で、遊んでいるとしか思えない。




