175.お宝の山
「おっ！凄いぞ！強襲艦の設計図が残ってる！」
「駄目なの。そんな物、見始めたら絶対そこから動かなくなるの。鉄人ちゃん設計図だけ記録して、先進むの」
「ま、待て！もうちょっと！コイツ！飛ぶのか？！！！」
「うん、そんな大きい物作ろうと思ったら、隊長にどれだけの鉱石融通してもらわないといけないと思ってるんだい？駄目だよクラーヴン」
「……隊長からもらった鉱石が、まだ異常なほど大量に残ってるし、強襲艦くらい造らにゃ減らんのだが？」
「隊長ってさ……一応俺でも知ってるよ。お騒がせ異常変人プレイヤーってのは噂で聞くけど、でもまさか強襲艦って船だろ？それ造れる材料ってさ……冗談だろ？」
「あのね～隊長の噂って全部ホントだし、寧ろ本人が大した事無いからって公表してない事の方が多いんだよ？」
「いやいやいや、見たぜ俺だってさ～ガイヤに闘技場で負けてたじゃん？影の最強プレイヤーとかそういうのは嘘なんだろ？」
「隊長の最後の切り札は邪神の化身の力そのモノを使う事なの。そうなるとあの破滅の光を食らって生き残れるプレイヤーは現行、皆無なの」
「な！この強襲艦の主砲！電磁パルス兵器って……まじか？そんな大電力どこから引っ張ってくるって……」
「はい！皆も！一旦クラーヴンを連れてこの部屋から出ますよ！」
人でなしのカヴァリーに引きずられて、部屋から出ることになった。
何しろここの基地は、宝の山だ！次から次へと掘り出し物の設計図が沸いて出てくる。
強襲艦はじめ、兵器や機械人形、ドローンの設計図に、果ては工作用ロボまで！これで精密なマニピュレーターが作れるし、なんなら鉄人に手をつけてやって、武器を持たせることも出来る！
確かブラックフェニックスに修理を依頼されているキジンは近接武器使いだったと言うし、手に刀を持っていたというのも聞いている。つまりこのお宝探しは、依頼の為だから仕方がないんだ！
「うおおおお！こっちの部屋には、大量生産用のベルトコンベアと作業ラインの内容が詳細に！」
「駄目なの。全部の部屋でクラーヴンがおかしくなるの」
「クラーヴン思い出してください。あなたは鉄鍛冶ですよ？霊子分解装置で出てきた部品を組み立てるだけのプラモ屋じゃないんです！」
「は！確かに！俺の専門は鉄だし、他の金属はきっと誰かが勝手にやるだろうって、諦めてた。それをこんな３Dプリンタみたいに次々部品作って組み立てるだけのミニ四駆みたいなのに……ミニ四駆と言えば……」
「待て！クラーヴン！さっきから宝お宝って言ってるが、バイクは作れそうか？」
「いや？肝心の機械人形の頭脳部がどうなってんのか分らんから無理だ」
「うおおおおおい！頼むぜ！つまりこの部屋はバイクに関係ないんだな？じゃあ、出ようか」
「いやちょっと待てって～！おい～！」
リフトから降りてすぐの大部屋から続く部屋は殆ど回りつくしてしまったと思う。
そして、それらの部屋ではこれでもかと言う程興味深い設計図が見つかった事から、きっとこの基地も兵器を造る為の工場を兼ねていたのだろう。
「ねぇ、クラーヴンはさっきから設計図いっぱい見てるけど、鉄人ちゃんの記憶の為に来てるんでしょ？何か分かったの？」
ぐぅ……確かにカーチの言う通りだ。自分は鉄人の記憶を取り戻す為に、ボディの製作を受け持つ代わりに、店番をさせていたのだ。
ここで、自分の趣味を優先させて鉄人が情報を得る機会を妨げては、それは契約に反するし、何より仁義が立たない。
「安心シテクダサイ カーチ需品長 情報ハ 収集 シテイマス ナニヨリ クラーヴン技師長ガ 技術ト知識 ヲ ミニツケレバ ソレダケ 生命科学研究所破壊 ノ 確率ハ アガリマス」
ぐぅわぁぁぁぁ……鉄人にまで忖度されてしまった。これじゃ流石に面目が立たないと言うか、既にカーチの目が頼りない大人を見る目に？
「お、ごほん！いいか、カーチ？この基地にしても【帝国】の基地にしてもおかしいんだ」
「え？何が？」
「設計図が戦う事に関するものだけなんだ。ヒトが生活していたなら、もっと生活に関する情報があったっていい、しかし、情報は戦うものばかり、おかしいとは思わないか？」
「……戦う為の基地だからじゃない？」
「……そうだな。じゃあ、ヒトはどこに住んでたんだ？」
「分かんない」
「それなんだよ！基地は地下に作るのに、ヒトはどこに住んでたか分らない。確かに一部宿舎的なものは見つけているが、全人口が住めるわけじゃない。一体鉄人の時代のヒトはどうやって生活していたのか？そこから見えてくるものもあるだろう」
「何が見えてくるの？」
「そりゃ、敵の姿さ！これだけ文明の発展した地下世界だが、一人もヒトはいないだろ？何故ヒトは地下に向かったのか、そして地下のヒト達はどうなったのか？コレはとても重要な事だ」
「え～？……誰が何のために鉄人ちゃんを作ったか？って事？」
「そ、そうだよ！それが分れば、ただ昔の姿に戻しただけの鉄人に、新たな力を与えて、今度こそ鉄人の任務達成となるだろ？それが俺みたいな生産職の考え方さ。装備を作ってやる相手の為に何が出来るかってさ！」
うん、周りの大人の胡散臭そうな目が真っ直ぐハートに刺さってくるが、子供の前では格好つけたいのが大人だろ？
