168.たんまり
ある日ログインすると、早々に親方に声をかけられた。
「おい!お国から随分と大量に素材が届いたんだが、どうするんだこんなに?戦争でもおっぱじめるのか?」
「なんだよ親方、また随分と話を盛ってくるな。この前店を空けてた時の、未踏破地区探索の報酬だろ?」
「ああ、確かにそんな事言ってた気もするが、何しろ量が多くてどうしたもんだか、考えてる内に忘れちまったわ。とりあえず地下倉庫に来いよ。お前の言ってる代物かまずその目で確認してみろ」
まぁ、確かに受け取りを師匠に任せてしまったし、まずは自分の目で確認するのが筋ってものだろうと、地下倉庫へと向う。
一応この店は鍛冶工房も兼ねてる店なので、原材料である鉱石やインゴットをしまう為にそれなりのサイズの倉庫を構えている。
とは言え【帝国】の家屋は木造が多い為、底が抜けないように地下に重い物をしまっていたりもするのだ。
レンガ用の土や石があまり採れない地域柄仕方のない事なのだろう。
じゃあ、鉄筋にすれば?って、そんなデカイ資材を作れるほどの鉄工所は流石に存在しない。
もしかしたら、資金の潤沢な首都である【帝都】やその近くの港辺なら、そういう施設もあるのかもしれないが、ちょっと知らん話だ。
そして、地下に着いてみると、所狭しどころか、歩くスペースすらない程にみっちりと詰め込まれた鉱石の数々。
「本当にこれで戦争とかしないんだよな?何に使うんだコレ」
「いや……確かにたんまりもらえると聞いてはいたんだが、この店を何だと思ってるんだあいつ……」
「ちなみに、ここに入りきらなかった物は【兵舎】で保管してるって話だから、一応挨拶に行っておけよ?」
「はぁ?これだけじゃないのか?」
「これは、氷山の一角だそうだ」
アホ過ぎるだろ?たんまりとは聞いてたし、あの変人の言うたんまりだから、多いんだろうな~とは思っていたが、限度って物を知らんのか?
そもそも全部鉱石で持ってきやがって、何がどれだけあるかすら分らん!
よし、仕方ない!まずは挨拶と、後カーチの様子を見てこよう。こんな意味の分からん事する奴に子供を預けておくなんて、不安しかない!
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結局【兵舎】の受付にいた兵長と言うのが顔は無表情だが、非常によく話の分かる大人物で、隊長に迷惑をかけられていると言う事をよく承知してくれた上で、全面的に協力してくれるらしく、言う事がない。
実際の所、鉱石を種類ごとに分ける所まで【兵士】の【訓練】がてらやってくれると言うのだから、こんなにありがたい事はないだろう。
そしてカーチの件だが、なんでも隊長は不凍水路に関して【帝国】の【士官】だか【上級士官】だかに詳しい人物がいるとかで、今度は【帝国】側から根の国に行く検証の為、出かけてしまったらしい。
本当に困った奴だと思う反面、この上なくホッとしている自分がいる。
やはりああいう厄介な人物は偶に付き合うから面白いのであって、いつも一緒じゃ、自分の平凡な心臓じゃ保たないという事がはっきりと分った。
こうなったら、まずは店の倉庫の整理がてら、魔素反応炉と鉄人のパワーアップにどんどん鉱石を使用していってしまおう。
魔素反応炉に必要な鉱石は正直、あまり聞いた事のない物ばかりだったが、はてさてあるかな~。
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時間が経つのを忘れて、鉱石の仕分け作業をしていたら、あっという間に時間が融けて一日のログイン限界時間になってしまった。
とりあえず、今倉庫にあるだけで、魔素反応路だけでも数十個は作れる事が分った。
その他にも、アインを除く重金属系、プロンやツタンやステンその他諸々、各精霊の力を含む重金属達が勢揃いだ。
更には軽金属に属する○○ライト系も、多分全種と思われるだけ揃っているし、特殊な合金に使われるであろう謎の金属に、白金、金、銀、銅の様な宝飾に使われるレアメタルや、宝石まで本気で何でも有り。
比率は多分適当なのだろう。あるだけごちゃ混ぜで持ってきましたと言わんばかりだ。
とりあえず、今仕分けた分だけでも精錬したいが、普通にやってたらどれだけの時間がかかるか分らんし、どうしたものか……。
「坑道奥ノ 施設ヲ 利用スレバ ヨロシイカト」
いつの間にやら作業を見ていた鉄人が、声をかけてくるが、基地やらで色々情報を取得している所為なのか、まるで心を読むような事を言ってくるようになった。
「独リ言デ ドウスルカ ドウスルカ ト 発言サレテイマシタ」
なるほど、自分で言っていたのか……!!今のは言ってなかったぞ?まぁ、今に始まった事じゃないし、余計な事を言うロボでもないのでまあいいか。
「坑道奥の施設ってのは、スクリュー素材を手に入れた所だろ?使えるのか?」
「可能デス 通称ドローン ニヨル保全ガ サレテイタ為 使用ハ 可能デス 問題ハ ドローンニ 施設使用ノ 命令ヲ 出ス 方法ガ 無イコトデス」
「確かに未だに坑道や地下基地に行けばドローン達に攻撃されるし、命令を書き換えられれば助かるが、そんな方法あるのか?」
「現状 不可能 デス 今後 ノ 施設探索 ノ 結果次第 トナリマス」
「うん、じゃあ取り敢えずは最低限手作業で精錬だな」




