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11.ミサイル

 ある昼下がりの事、いつも通り雪風が嵌め込みの二重窓に当って弾ける音が室内に響く。


 そこに、バタンッと勢いよく扉が開いた。


 「クラーヴン!最近何やってんだ~~~……本当に何やってんだ?」


 「ミサイル解体してるんだが?」


 「ミサイル カイタイ シテルンダガ ? ……は!俺は一体何語を話してた?」


 「紛れもなく日本語だから安心しろ」


 「だよな、日本語だよな!でも俺は自分が発した言葉の意味が全く分んないんだよ!」


 「疲れてるんじゃないのか?とりあえず扉は閉めてそれ以上踏み込むな。部品がなくなったら困る」


 「あ、ああそうだな分った」


 そう言いながらそっと扉を閉めて壁沿いを移動して、待合用の椅子に掛けるのは【海国】はクラン『嵐の岬』所属の術士件軍師のアンデルセンだ。


 求める術を探す為、ゲーム内の各国を遍歴した事があり、その妙なコミュ力で方々に知り合いのいる不思議な男は、いつからかこの【帝国】【古都】にいる事が多くなり、そしていつの間にか【帝国】お茶会と呼ばれる【古都】の小さなコミュニティの一員になっている。


 「それで、何でミサ、ミサイルなんか解体してんだよ?」


 「そりゃミサイルがあったからだよ」

 

 「いや!何道端で手榴弾拾ったんだみたいなテンションで!って手榴弾でもやばいけどさ!」


 「まあ落ち着けよ。全然元気じゃねぇか。つまりこういう事だろ?どこで拾ってきて、何を目的に解体してるのか、それを聞きたいんだろ?何でだと思う?」


 「あ、ああ……そうだな。解体してるって事はいつものクラーヴンの得意の『作ってみたら出来た』じゃないだろうから、アレだ!アップデート要素で偶々発見された不発弾解体を頼まれた!」


 「なんで、こんな店の中で不発弾解体してるんだ?おかしいだろ」


 「そりゃおかしいとは思ったよ!何で奥に工房があるだろうにこんな所で、解体してるのかな?とかそもそもそういうのって屋外でやるんじゃないのかな?とかそもそも不発弾って何?とか!」


 「正解は偶々拾ったから解体してただ」


 「変わってねぇ!さっきのミサイルがあった。から何にも情報が増えてねぇ!」


 「よく考えてみろよ。ミサイルがあったから解体した。何でそんな事をするのか?それは構造が分れば自分でも作れるかもしれないからだ」


 「作りたかったの?ミサイルを?何で?作りたいとミサイル拾えるようになるの?」


 「そんな訳ないだろ?クエストの延長で一発だけ手に入れたんだが、一回解体すれば構造も分るし、スキル熟練度も増す。もし作れれば、いずれまた出てくるかもしれない邪神の化身に対しても有効な武器になるかもしれないだろ」


 「あ~なる程な。まあミサイルなんかあればそりゃ便利かもしれんが……。じゃあこのミサイルに掛かりきりで最近姿を見せなかったのか」


 「いや、掛かりきりだったのはそっちだ」


 「イラッシャイマセ 御用向キ ヲ オ伺イシマス」


 「あ、いや……どちら様?」


 「個体識別名 鉄人 所属 後方支援隊武器科 ゴドレンの店 主要任務 対外レセプション ト ナッテオリマス」


 「これはどうも、ご丁寧に。所属は【海国】『嵐の岬』だが【帝国】元軍師ミランダ様の弟子でもあるな」


 「【海国】 不明 ミランダ様 不明」


 「【海国】は南方の島国群だ。ミランダ様ってのは引退した【帝国】中枢の軍師様だ」


 「南方諸島群 ヲ 地域名 【海国】 ニ アップデート ミランダ様 参謀本部付キ 参謀長 アンデルセン 参謀官 トシテ 登録完了」


 「何か微妙に間違ってる気もするが、なんなんだコイツ?」


 「自分で名乗ってたろ?鉄人だよ」


 「いや、個体識別名な!そうじゃなくてどういう存在かって聞いてんだって!」


 「ああ、多分ロボだ」


 「タブン ロボダ ? ……は!今俺は一体何語を!」


 「さっきやったなその下り、俺もよく分らんが多分アップデート後の要素の一つだろ」


 「なる程な。それでどうやって作ったんだ?」


 「いや、拾った」


 「そんなお前道端で……」


 「それもやったな。マイブームか?クエストの流れで拾ったんだよ。何でも任務を忘れちまったってんで修理してたんだけど、結局任務で破壊する筈だった施設が無いもんだから、今は大昔の技術を探す為に更にボディの改造中だ」


 「へ~そんな事がな~。何だかんだ俺達が一歩先を進んでいるつもりだったが、遠出しなくてもアップデート要素ってあるもんなんだな」


 「ああ、アンデルセンも何か新要素に行き当たってたのか」


 「まあな~今はクラン上げて攻略中だ。色々と必要なものもあってな~」


 「何だ何か作って欲しくて気たのか?別に依頼は聞くぞ?」


 「ああ、いいのいいの!俺はただ最近顔の見えない奴が多いから、ご機嫌伺いに廻ってるだけだ。隊長も見えないし、ソタローも何やら忙しそうだし」


 「ほ~隊長は旅に出たぞ」


 「あ?あいつまたどこか行ったのか?ついこの前まで指名手配だったのに?」


 「まあ、何かやってないと落ち着かないんだろ?それなりの装備を用意して送り出してやったから心配すんな」


 「それもそうだな。それで、何でこんなとこでミサイルの解体してんだ?」

 

 「別に誰も来ないし、いいかなと思って……」

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