✒ ゾンビング祭り 6
──*──*──*── 2日後
星空の下でセロと『 いいこと 』をした夜から2日後──、遠目にだけど集落が見えて来た!
漸く屋根と壁のある宿に泊まれるんだ!!
セロと一緒だから、野営をしても不自由はないけど、偶にはちゃんとした宿屋で寝泊まりしたいもんだ。
里から3ヵ月も掛かる場所にある集落だけど、〈 器人形 〉が開業してる寺子屋はあるのかな?
マオ
「 ──セロ、漸く集落だな!
早く行こう! 」
セロフィート
「 待ってください、マオ。
走らなくても村落は移動しません。
急がないでください 」
マオ
「 セロも偶には走れよな! 」
セロフィート
「 疲れる事はしたくないです 」
マオ
「 疲れた事ないだろが!!
オレは早く集落に到着したいんだよ!
宿屋のベッドにダイブしたいんだ! 」
セロフィート
「 マオ……。
ベッドではなく、布団です。
集落ですし、使われているのは薄くて固い布団でしょう 」
マオ
「 言うなよ……。
それよりさ、〈 器人形 〉は居るかな?
彼此で寺子屋を開業させてるんだろ? 」
セロフィート
「 そうでしたね。
忘れてました… 」
マオ
「 何で忘れてるんだよ…。
兎に角、〈 器人形 〉が居るならさ、寺子屋に滞在させてもらえないかな?
数日だけだし、泊めてもらえるだろ? 」
セロフィート
「 宿屋に泊まりたいのでしょう? 」
マオ
「 セロぉ~~。
意地悪、言うなよ~~ 」
セロフィート
「 言ってませんし。
──マオ、犬が来ますよ 」
マオ
「 犬ぅ?
野良犬かな? 」
セロフィート
「 群れてますし、野犬の類いではないです? 」
マオ
「 野犬かぁ。
狼の肉なら食べれるけど、野犬の肉ってたべるのに抵抗あるよな… 」
セロフィート
「 野犬は元々、人間に飼い慣らされた犬ですし…。
解体してしまえば分かりません 」
マオ
「 解体するのオレだろ~~。
解体も抵抗あるんだよ… 」
セロフィート
「 野兎,野鼠,蛇,野狐,狼,野鳥の解体は平然と出来るのに、何故犬と猫の解体は出来ません? 」
マオ
「 ペット感が強いからじゃないのか? 」
セロフィート
「 あの野犬の群れにはペット感は無さそうですよ 」
マオ
「 ペット感が無くても犬って時点で── 」
オレは目の前に現れた野犬の群れを前にして、一瞬だけ思考が停止した。
マオ
「 んんん??
普通の野犬じゃない……よな?? 」
セロフィート
「 明らかに普通ではないですね。
目が充血してますし、口から垂らしている涎の量も尋常ではないです。
それに肉体がやたらと── 」
マオ
「 態々言わなくて良いからな! 」
セロフィート
「 はいはい 」
セロとオレの前に立ちはだかって道を塞いだ野犬の群れの外見は異常だった。
傷だらけで傷口からは血が出ていて、何ヵ所も肉が食い千切られているように見える。
好戦的で獲物──セロとオレを前にして唸っている。
マオ
「 コイツ等は…………ゾンビ犬か!? 」
セロフィート
「 それにしては腐敗してません 」
マオ
「 腐敗してるゾンビ犬なんて見たくもないけどな!! 」
セロフィート
「 マオ、燃やします? 」
マオ
「 最後にな!
セロ──、ゾンビ犬に睡眠魔法を掛けてくれ!
眠らせたら首を斬り落とすからさ 」
セロフィート
「 ワタシの魔法に頼り過ぎではないです?
これを機に運動不足を解消してはどうです? 」
マオ
「 マジかよ… 」
セロフィート
「 噛まれても何ともないですし。
思う存分、刀を振るってください 」
マオ
「 気持ち悪いゾンビの相手はしたくないんだよ…… 」
セロは魔法を使ってくれそうにない。
仕形無いから直々にオレが斬る事になった。
オレは鞘から愛刀を抜くと、チャキッ──と構える。
ゾンビ犬の群れは、オレを襲う気満々だ。
マオ
「 はぁ……。
ゾンビ犬を相手するなんて最悪だ… 」
オレは愛刀を握って駆け出すと、ゾンビ犬達もオレへ目掛けて飛び掛かって来た!!
ゾンビ犬との戦闘が始まった。
ゾンビ犬の前衛には5頭、対峙するオレは1人。
セロは戦闘にすら参加してくれない。
何時もの事だけど、セロは傍観しつつ高見の見物を決め込むつもりだ!
オレは右肩側のゾンビ犬の狙って愛刀を振り下ろす!
カッコいい剣技とか有れば良いんだけど、生憎とオレはイカした剣技を覚えていない。
唯々愛刀を振り下ろして攻撃対象を斬るだけだ。
全体攻撃も複数攻撃も出来ないし、単体攻撃しか出来ない。
オレが出来る事と言えば、愛刀に魔法を纏わせて斬るぐらいかな?
愛刀に炎を纏わせて “ 火炎斬り ” なんちゃってな!
ゾンビ犬は何度斬っても倒れない。
首を落としても動いているし、首だけになっても襲い掛かって来る!!
おかしくないか!?
普通のゾンビ──って言うか、オレが今まで倒した事のあるゾンビは、首を斬り落としたら倒れて動かなくなっていた筈だ。
それなのに、このゾンビ犬と来たら動いている。
全然倒れる気配もない。
炎を纏わせて斬っているのに燃えもしない。
どうなってるんだ??
初めから停止している心臓なんか狙って斬ってもゾンビには効果がない。
一体どうしたら倒せるって言うんだよ!!
ゾンビ犬如きに、こんなに苦戦するなんて思ってもなかったんだけど?!




