✒ 変異植物の暴走 3
──*──*──*── 長屋
オレは笠が変色したヤバい状態のキノコンを引き摺りながら、漸く自宅へ到着した。
自宅の戸を開けて、中へ入ると居間で読書に耽っているセロヘ抱き付いたんだ!
セロフィート
「 ──マオ?
寺子屋は、どうしました? 」
マオ
「 それ所じゃないんだよ!!
大変な事が起きたんだ!!
大事件が起きて、キノコンがヤバいんだよぉ!!!! 」
オレはセロをガクガクと揺すりながら、事件が起きた事とキノコンのピンチを伝えた。
セロフィート
「 マオ──、落ち着いてください。
朝っぱらから何の事件が起きたと言いますか? 」
マオ
「 セロぉ~~~~!!
兎に角、キノコンの笠の変色を何とかしてくれよぉ~~~~!!!! 」
セロフィート
「 キノコンの笠です?
…………変色してますね 」
マオ
「 そうなんだよ!!
何とかしてくれないかな? 」
セロフィート
「 …………マオ、先ずは何が起きたのか詳しく話してください 」
マオ
「 うん……実は── 」
オレはセロに寺子屋で見た花壇の状態を身振り手振りで話した。
その間中、花壇の世話を手伝ってくれていたキノコンは涙を流して泣き崩れていた。
セロフィート
「 成る程──、花壇が何者かに依って荒らされていたと……。
キノコンの悲しみと怒りは当然でしょう。
子供達と一緒に作った花壇です。
キノコンの想いを汲みましょう。
花壇を荒らした犯人を見付けたらキノコンへあげます。
犯人には何をしても構いませんし、好きになさい 」
キノコン
「 エリぃ~~~~。
セロ様ぁ~~~~ 」
セロフィート
「 キノコン、犯人が見付かる迄、怒りを抑え込めます? 」
キノコン
「 努力してみますエリぃ~~~~。
有り難う御座いますエリぃ~~ 」
セロからの言葉を聞いたキノコンは少し落ち着いたみたいで、漸く泣きなんだ。
黒く変色していた笠の色が段々と薄くなって、美味しそうなプリン色へ変わりつつあった。
どうやらキノコンの爆弾は当分、爆発しなくて済みそうだ。
マオ
「 セロ、花壇を荒らした犯人だけど、どうやって探すんだ? 」
セロフィート
「 キノコンが携わっている事を知っている里人達が、寺子屋の花壇を荒らすとは思えません。
十中八九、内部ではなく外部から来た者達の仕業でしょう 」
マオ
「 外部の犯行?
どゆことだよ? 」
セロフィート
「 匕魅呼様の兄上様が統治している町から視察団が来てまいたのは知ってますね? 」
マオ
「 あぁ……そう言えば来てたっけな?
視察団が花壇を荒らした犯人だって言うのか? 」
セロフィート
「 視察団の中にはキノコンを良く思っていない侍が何名か居ました。
覚えてます? 」
マオ
「 そう言えば──、居たような……。
キノコンは覚えてるか? 」
キノコン
「 僕ではないですけど、育てている野菜に唾を吐いている侍を見掛けたキノコンが、侍に往復ビンタをしてましたエリ。
養殖池に向かって小便をしていた侍を目撃したキノコンが、侍を半殺しにしてましたエリ。
果樹園に野糞をしていた侍達を見掛けたキノコン達が、侍の口の中に野糞を押し込んでましたエリ。
それと…… 」
マオ
「 未だ有るのか??
視察団の侍達は、里に何しに来たんだよ。
喧嘩を売りにでも来たのかよ? 」
セロフィート
「 視察団の中には故意にキノコン達との間に問題を起こし、溝を深める事を目的とした侍も居たようです 」
マオ
「 何で態々キノコン達を怒らせるような事をして問題を起こさせようとしたんだ? 」
セロフィート
「 2年前に侍達とくの一達をあられもない姿で帰した事を根に持っていたようです 」
マオ
「 2年前に帰した侍達?? 」
キノコン
「 マオ様、8名の犯罪者達の事ですエリ 」
マオ
「 8名の…………あっ、子供を3人も集団リンチして殺害した奴等かよ!
じゃあ、今回の視察団は2年前の仕返しをしに来たって事かよ? 」
セロフィート
「 さて、それは何とも。
里へ視察団を送り込んで来た──という事は、2年前に里へ侍を寄越した黒幕と繋がっていると考えて良いでしょうね。
あの8名は黒幕が暮らしている城内の中庭へ転移させましたし 」
マオ
「 セロは黒幕の正体を知ってるんだな? 」
セロフィート
「 敢えて泳がせてます 」
マオ
「 とんだ嫌がらせだな。
確か──、全裸に剥いて、全身の毛を剃り落として、傷だらけの身体に刺青を彫って、逆さ吊りで磔た状態で転移させたんだっけな?
尻穴に深々と長葱をブッ刺して── 」
セロフィート
「 何も無かった中庭に里へ送り込んでいた筈の下っ腹侍達と下っ腹くの一達が、磔られた状態で戻っていたのです。
さぞかし驚いてくれたでしょうね 」
マオ
「 そりゃそうだろ?
オレは実物を見てないから分からないけど、想像しただけでも悲惨な姿なんだろうな──って事は分かるよ。
朝っぱらから見せられたらトラウマになるんじゃないのか? 」
セロフィート
「 仮に2年前の仕返しに視察団を寄越したのなら、未々遊び甲斐は有りそうです 」
マオ
「 黒幕で遊ぶのかよ……。
今回のような事がこれからも起こるのは困るんだけどな… 」
セロフィート
「 安心してください、マオ。
そんな事にはなりません 」
マオ
「 どうしてだ? 」
セロフィート
「 花壇に咲いていた花が掘り起こされて持ち去られた跡もあったのでしょう? 」
マオ
「 うん。
滅茶苦茶に踏み潰されていた花が多かったけど、スミレ,ビオラ,パンジーが掘り起こされていたのは確かだよ 」
セロフィート
「 特殊な花壇の土で育ち、十分な栄養を得ていた花が急に栄養を得られなくなると、どうなると思います? 」
マオ
「 えぇっ??
どうって………………栄養になるような土を探す?? 」
セロフィート
「 そうです。
特殊な土で育った花の生命力は高いです。
持ち去られた花は、生きようと必死にもがきます。
特殊な土で育ったスミレ,ビオラ,パンジーは変異植物と言っても良いでしょう。
栄養を求めて暴走する日は近いです 」
マオ
「 変異…植物…………。
何かさ、ヤバい響きだよな? 」
マオキノ
「 里で育てている全ての食物は変異してますエリ。
人体に害は無いですエリ。
安心て食べてもらえますエリ 」
マオ
「 そ、そうなのか? 」
セロフィート
「 変異は悪い意味ばかりでは無いです。
良い意味での変異だと思ってください 」
マオ
「 …………変異植物について、オレは何も “ 聞かなかった ” 事にするよ 」
セロフィート
「 花が暴走すれば、犯人達も自ずと判明します 」
マオ
「 持ち去られた花が、途中で捨てられてたらどうするんだよ? 」
セロフィート
「 スミレ,ビオラ,パンジーは珍しい花です。
道中で捨てるとは思えません。
仮に何処かに捨てられても、花は逞しく生き続けます 」
マオ
「 犯人達の行方が分からなくなるじゃないかよ 」
セロフィート
「 視察団が戻る場所は検討が付いてます。
それに──、その内、里へちょっかいを出せなくなります 」
マオ
「 何でだ? 」
セロフィート
「 さて、何故でしょうね?
ふふふ♪ 」
セロは楽しそうに笑っている。
どうやら、オレに教えてくれる気はないみたいだ。
気になるなぁ……。
どうせ、陸な事じゃないんだろうけどな~~~~。




