⭕ ボロい長屋 1
──*──*──*── ヒウ区
マオ
「 此処がヒウ区……で合ってるんだよな? 」
セロフィート
「 確かに地図では此処がヒウ区になってます 」
マオ
「 里の出入り口に近いのは本当みたいだけど──、エゲつないぐらいボロボロの長屋ばっかりだな…。
此処の長屋の1軒が空いてる──って言ってたけど、“ 人が住める無事な長屋が1軒だけある ” って意味じゃないよなぁ? 」
セロフィート
「 良い場所ですし、好都合です。
確かに人が住めそうな長屋は見当たりませんし、マオの言う通りかも知れませんよ。
ワタシは周辺に結界を張ります。
マオは鍵が掛かっている無事な長屋を探してください 」
マオ
「 任せろ! 」
オレは1人で鍵が掛かっている長屋を探す。
どの長屋もボロボロで痛々しい。
大分前には里人も暮らしていたんだろう。
生活感の名残がある長屋が多い。
壁が破られていたり、引っ掻き傷があったりするから、人間の仕業では無さそうだな。
森の中で大型の獣を結構見たから、獣の仕業かも知れないな。
風向きも悪いのかも知れない。
──*──*──*── ボロい長屋
マオ
「 ──あった!
この長屋か。
この鍵なら簡単に壊せるな 」
オレは長屋の鍵を素手で壊して、長屋の戸を開けた。
すきま風が入って来るけど、屋根は付いてるし、壁の木材もあまり痛んで無さそうだ。
長らく使ってないから埃っぽいけど、他の長屋に比べても中は綺麗だし、何よりも広い。
台所なのか石窯も付いてるし、水を溜める壺も置いてある。
マオ
「 此処がセロとオレの新しい新居か。
…………ボロボロの長屋だけど、セロが何とかしてくれるよな? 」
オレは新居の長屋を出るとセロの居る場所へ走った。
マオ
「 ──セロ、新居の長屋を見付けたよ 」
セロフィート
「 有り難う、マオ 」
マオ
「 セロ、何してるんだ? 」
セロフィート
「 自給自足には田畑と水路が必要でしょう?
キノコン達に開墾させてます 」
マオ
「 そ、そうかよ… 」
セロフィート
「 海へも行き来出来るよう、森の中に道も作らせます。
住めない長屋は1から建て直して、狩った獣を解体する為の解体所と、解体した素材,肉類を保存する保存庫も作りましょう。
キノコンが寝泊まりする長屋も必要です。
農具庫も要りますね。
家畜を飼育する為の飼育小屋も必要です 」
マオ
「 セロ、楽しそうだな。
取り敢えず、新居を住めるようにしてほしいんだけどさ 」
セロフィート
「 はいはい。
マオ、案内してください 」
マオ
「 此方だよ 」
オレはセロを長屋へ案内した。
──*──*──*── ボロい長屋
セロフィート
「 ははぁ…成る程。
此処がマオとワタシの新居ですか。
そこそこ広さもありますね 」
マオ
「 確かに人は住めそうだけど、所々手直ししないと住めないよ 」
セロフィート
「 人の目もありますし、外は粗末なままで良いでしょう。
防犯魔法と防音魔法を掛けます。
中も綺麗にして、壁には── 」
セロが古代魔法を発動すると、長屋の中が一掃されて綺麗になった。
壁にはドアが描かれている壁紙が貼られた。
其々のドアには[ 寝室 ][ 洗面脱衣室・温泉 ][ 厨房・食堂 ][ 図書室 ][ 実験室 ][ ダンジョン ]と書かれている。
何時もの事だけど、生活には不自由しなさそうだ。
マオ
「 セロ、此処は居間にするのか? 」
セロフィート
「 薬膳料理,薬膳茶,薬を販売する売店にします 」
マオ
「 売店??
店でも開く気かよ? 」
セロフィート
「 新しく作った薬の効果,効能を試したいですし、持って来いでしょう? 」
マオ
「 里人を実験台にする気かよ。
ブレないなぁ… 」
セロフィート
「 解体所が出来上がったら、狩った獣を解体してください。
下処理を済ませた肉と素材の一部を匕魅呼様へ献上し、里人達に振る舞ってもらいましょう 」
マオ
「 分かった 」
セロフィート
「 敷地内の開拓はセノコンをリーダーとし、キノコン達に一任します。
ワタシは里人に利用してもらう足湯と全身湯の温泉を掘ります。
マオはマオキノを連れて森の中で食べれそうな木の実,果実,薬草…等を採って来てください 」
マオ
「 分かった。
行って来るよ 」
セロが転移魔法で召喚したキノコン達に開拓を任せるのは正しい。
作業が丁寧なのに手早いんだよな。
ボロボロで何時崩れてもおかしくない長屋は既に取り壊されて撤去されていて、キノコン達がせっせせっせと新しい長屋風の建物を器用に建てている。
大工も顔負けの腕前だ。
セロと話していた間に田畑と水路は出来上がっていた。
キノコンが田畑に分かれて何かの種を蒔いている。
水路には水車まで作られていて、水車の傍には小屋があって、水車の力で粉を挽けるように歯車式の巨大な石臼も作ったみたいだ。
本当に凄いな。
マオ
「 マオキノ、あの長屋は何に使うんだ? 」
マオキノ
「 麺工房,パン工房,蕎麦工房,米工房,燻製工房,干し肉工房,豆工房,豆腐工房ですエリ 」
マオ
「 そんなに沢山の工房が入ってるのか? 」
マオキノ
「 1室内にドアは6つ有りますエリ。
未々ドアは増やせますエリ。
海に通じる道が開通したら、浜辺に海苔工房,にがり工房,塩工房,干し物工房,乾物工房…等が作られる予定ですエリ 」
マオ
「 浜辺にも工房を作るんだな 」
マオキノ
「 ニガリが出来れば、豆腐が作れるようになりますエリ。
備蓄が出来れば、厳しい冬でも協力し合って乗り切る事も出来ますエリ 」
マオ
「 そうだな。
保存食が作れて備蓄がで来たら、食糧不足で餓死する事もないよな。
セロは色々と、やりたい事をやるつもりなんだな。
マオキノ、森の中へ行こう 」
マオキノ
「 はいですエリ。
マオ様、沢山採りましょうエリ 」
マオキノは上下に体を動かすと分裂を始めた。
「 あっ! 」と言う間に9体のキノコンが現れる。
キノコン達は各々籠を背負った。
一体何処から籠を出したのか気になるけど、気にしない事にする。
キノコン達は相談を始めた後、手分けをして森の中へ入って行った。
マオキノ
「 マオ様、ボク達も行きましょうエリ 」
マオ
「 そうだな 」
オレはマオキノと一緒に森の中へ入る。
里に着く迄、散々森の中を歩いたから本当は森の中に入りたくないんだけど、セロに良い所を見せたいからな。
頑張って採るぞ!!
◎ 訂正しました。
痛《いた》しい ─→ 痛々しい
マオ様、僕達も ─→ マオ様、ボク達も