✒ 寺子屋、開校
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 寺子屋
今日は寺子屋の記念すべき開校日だ。
寺子屋に作り替えられた長屋には、沢山の子供達が集まってくれた。
寺子屋で預かる子供は5歳からセロが決めている。
寺子屋の教師は勿論〈 器人形 〉で、子供達が勉学に飽きないようにサポートするのはマスコット的キャラとして子供達に絶大な人気を誇っているキノコン達だ。
キノコンは頭も良いから〈 器人形 〉のサポート役に適していると思う。
別に堅苦しい授業をするわけじゃないんだし、癒しキャラが居ても全然問題ないと思うよ!
先ずは生徒が1人ずつ自己紹介をして行く。
次に「 正しい正座の座り方 」を教えて、「 何故正座をするのか 」「 正座の必要性 」を教え始めた。
正座をすると血管を圧迫して、血流が悪くなって両足が痺れたりするし、無理な正座を続ける事で関節痛になったり、腰に負担を掛けて腰痛の原因になる事もあってか、腰への負担を軽減させる事が出来る正座椅子を利用して座るように教えている。
正座椅子はキノコン達が子供達に1つずつ配っている。
正座椅子を使うと骨盤が起きるから、腰や背中への余計な負担を減らせて、骨盤が起こり易くなって、姿勢が良くなるんだとか。
そんな内容を未成年の幼い子供達に話して、意味を理解する事が出来るのか疑問だけど、子供達は初めての授業を真剣に聞いている。
因みに正座椅子に使われている布地はキノコンの絵柄になっていて可愛いんだよなぁ♥️
オレも自分専用に欲しいもんだ。
帰宅したらセロにねだってみようと思う。
正座の説明が終わると、正しく筆を持つ練習が始まる。
予め用意されている筆をキノコン達が子供達に手渡して行く。
筆の筆管にも布地が巻かれていて、キノコンの絵柄が可愛い。
セロめぇ、オレに内緒でキノコングッズを作っていたなんて!!
オレに黙ってるなんて酷いじゃないか!!
帰宅したら文句を言ってやるんだからな!!
筆を握る前に〈 器人形 〉は筆を使う前に筆の各部の名称を子供達に丁寧に教えている。
態々大きな用紙に筆の絵を描いて、名称を隠している。
真っ白い毛全体の名称は “ 鋒 ” って言うらしく、上から順番に命毛,穂先,のど,腹,腰,つけ根,ダルマ,筆管になるらしい。
名称は張り付けれるようになっていて、子供達が挙手をして答えていく。
正解した子供はシール手帳にキノコンシールを貼って貰えるようになっていて、子供のやる気を掻き立てている。
シールは何種類もあって、10枚目のシールは大きめのシールを貼って貰えるみたいだ。
シール手帳も可愛いキノコンの表紙になっている。
皆、どんだけキノコンが好きなんだよ!?
一応だけど、キノコンは肉食のキノコ型怪物だからな!!
人間が大好物で、脳ミソや臓物はキノコンの御馳走だからな!!
可愛い容姿と可愛い仕草と可愛い声に惑わされて忘れたら駄目だ!!
筆の名称を覚えたら、初心者向けの正しい筆の持ち方を教えられる。
今一持ち方が分からなくて困っている子供達にはキノコン達が指導に入って親切且つ丁寧に教えている。
オレの所にも来てほしいんだけどな!!
大人のオレには親切で丁寧な指導はしてくれないのか??
もしかしてオレの存在を忘れてないよな?
オレにも優しく教えてくれよぉ、キノコン達ぃ!!
えぇと……筆には持ち方には主に2通りあって、細かい字を書くのに適している持ち方が単鉤法って呼ばれる “ 1本がけ ” で、力強い線を書き易くて、“ とめはね ” が確りしている漢字を書く時に適しているのが双鉤法って呼ばれる “ 2本がけ ” なんだとか。
筆を持つ基本的な場所は、真ん中や真ん中より少し上を持つようにすると良いらしんだけど──、穂から離れた筆の上を持ったり、穂寄りの下の方を持ったりと、書きたい文字や書体に合わせて持ち方を変える事が大切みたいだ。
適当に何と無く筆を持って文字を書いてたら駄目って事だな!!
筆を使って文字を書いた事が無いから為になるぅ~~。
正しい筆の持ち方を覚えて出来るようになったら、筆の構え方を教わる。
筆の持ち方も大事だけど、筆の構え方と腕のあり方も重要らしい。
筆の構え方には主に3通りあるらしい。
懸腕法,提腕法,枕腕法だ。
〈 器人形 〉が、3つの “ ◯腕法 ” に関して詳しく分かり易く親切,丁寧に教えてくれているけど割愛したい。
筆の構え方と腕のあり方を教わったら、筆の構え方と組み合わせ方を教えてもらう。
力強い字を書きたいなら、双鉤法と懸腕法の組み合わせがベスト。
繊細な字を書きたいなら、単鉤法と提腕法か枕腕法の組み合わせがベストらしい。
筆の使い方って意外と奥が深かったりするんだな……。
最後に初心者向けの新品の筆の正しいおろし方を教わる。
正しい手順があるらしいから、筆を痛めないように正しい手順で筆をおろす必要があるみたいだ。
因みに筆には大筆と小筆があって、大筆と小筆のおろし方は異なるみたいだから気を付けないといけないんだとか。
筆のおろし方に関する詳しい説明も割愛したい。
筆の授業が此処まで進んで正午になった。
昼食の時間だぁ~~~~♥️
渡された筆は机の中に入っている筆入れの中へ入れて、大事に保管する事になっているようだ。
筆入れには持ち主の名前が刺繍されていて、誰の筆入れなのか分かるようになっている。
午後からは実際に筆を使って基本線の練習をするそうだ。
基本線の書き方を習って、実際に習字紙に書いて筆慣らしをする。
基本線の練習を終えたら、正しい筆の洗い方と習字道具の御手入れ方法を教わる事になる。
何はともあれ、今は昼食だ昼食ぃ~~~♪♪♪
──*──*──*── 牧場
どうやら天気が良い日は、昼食は青空の下で食べる事になってるみたいで、牧場まで移動した。
広い牧場の一角には前以て準備されていたのだろうビニールシートみたいに大きなレジャーシート風の敷物が敷かれていて、座る場所にはお尻が痛くならないようにと丸型の座布団が敷かれている。
草鞋を脱いでレジャーシート風の敷物の上を歩いて、各自が座布団の上に座わって行く。
子供達が座布団に座ると、1人用のミニテーブルと一緒にお弁当箱が配られた。
お弁当箱は四角くて重箱みたいだ。
重箱風の上蓋にはキノコンの絵柄が描かれていて可愛い。
どんな中身なのかワクワクしながら上蓋を外して開けてみると、まさかのキャラ弁だった!!
彩り良く野菜,肉類,卵が使われている。
子供達は初めてのキャラ弁に興奮していてテンションが高い。
めっちゃはしゃいでいるし、弁当箱を拝んでいる子供まで居る。
喜んでいる子供達の反応を見てるだけで、お腹が一杯になりそうだ。
〈 器人形 〉が子供達に「 自然の恩恵を与えてくださる〈 久遠実成 〉と生産者の皆さんへ感謝の気持ちを込めて食前の祈りをします。両手を胸の前に合わせてください。──出来ましたか? それでは皆さん、祈りましょう。 “ いただきます ” 」と言う。
子供達も〈 器人形 〉を真似して、〈 久遠実成 〉と生産者の皆さんへ向けて元気な声で「 いただきます 」と合掌した。
食前の感謝の祈りを終えたら楽しい昼食が始まった。
昼食が終わると、食後の祈り「 ごちそうさま 」をした後は、自由時間の始まりだ。
各々が牧場の敷地内で自由に遊ぶ。
動物と触れ合いたい子供はキノコンに頼めば動物に触らせてもらえる。
牧草の上を裸足で思いっ切り走り回ったり、牧草の上に寝転がって動く雲を眺めたりと好きな事をしてリフレッシュしている。
こういう誰にも気兼ねなく好きな事を楽しむ時間って必要だし、大事なんだろうな。
キノコンと遊んでる元気な子供達の笑い声を聞いているだけで、オレまで楽しい気持ちになる。
あんな惨くて酷い事件が起きなければ、エモンもモキチもトモチも──、この中に混ざって一緒に楽しい毎日を過ごせていた筈なんだ。
本来ならば居るべき3人が存在しない日常……。
辛いな……。




