✒ 寄り道の代償 5
セロフィート
「 御遺体を見るのでしたね。
柩に蓋をするのは火葬の時です。
それ迄は全身が見えるようにしてます 」
マオ
「 ──綺麗だな…。
あんなに腫れて膨れていたのに…。
傷も消えてるし、顔色も良く見えるよ 」
セロフィート
「 酷い部分は “ キノコンじる ” を塗りましたから傷口は塞がっています。
痣や痕は死化粧をして整えました 」
マオ
「 死化粧?? 」
セロフィート
「 日本で暮らしていた時、ドラマで見ていたでしょう。
御遺体に化粧をしている人を 」
マオ
「 あ~~……そう言われたら見た事あるかも?
何て言ったっけ?
の……の……の~~~…… 」
セロフィート
「 死化粧師,納棺師,復元納棺師,湯灌師です 」
マオ
「 あぁっ、それ!
そんなに沢山居たっけ?? 」
セロフィート
「 諸々は〈 器人形 〉にさせました。
眠っているように安らかな顔をしているでしょう 」
マオ
「 そうだな。
あんなに酷い状態だったのが嘘みたいだよ… 」
セロフィート
「 葬儀には匕魅呼様にも出席していただきます。
葬儀が終わったら、海を見に行き、足湯と温泉に浸かってから帰っていただきます 」
マオ
「 何気にハードスケジュールだな。
そう言えば、火葬場は何処にあるんだ? 」
セロフィート
「 ありませんよ。
ワタシが古代魔法で燃やします。
新しく焼却魔法を作りました。
凡そ5分で遺骨だけになります 」
マオ
「 マジかよ…。
5分で遺骨だけに……。
それは物凄い火力なんだろうな… 」
セロフィート
「 ふふふ。
迫力がありますよ。
魔法陣の中で燃やしますから、火傷する事はないです。
安全ですよ 」
マオ
「 安全じゃなかったら困るよ… 」
火葬する時、パニックになったりしないか心配だな…。
日本には魔法なんて概念は無かったし、魔法を使える人間も居なかったけど、台圀では魔法を使える人間は居るのかな?
器人形:巫女
「 ──セロフィート様、匕魅呼様が御到着されました 」
セロフィート
「 ワタシが直々に出迎えましょう 」
マオ
「 それならオレも行くよ。
信仰の指針を読んでると睡魔に襲われるんだ… 」
セロフィート
「 マオ…。
困った子ですね 」
マオ
「 セロぉ~~~~。
“ 面白くなりそう ” みたいな顔してるぞ… 」
セロフィート
「 マオの気の所為です 」
セロと一緒に葬儀場の外で匕魅呼様を出迎えた。
匕魅呼様は葬儀に相応しい着物で来られた。
マオ
「 セロ、オレも着替えた方が良くないか? 」
セロフィート
「 マオ、畏まらなくて良いです。
大事なのは格好ではなく、弔う死者へ供える真心です。
匕魅呼様は里長ですから、立場に相応しい格好をしなければいけません。
身分の低い里人達は葬儀に相応しい着物を持っていません。
普段着で参列してもらえば良いです 」
マオ
「 そう言えば、セロも普段着…………違うじゃんか!
羽織は黒で、彼岸花は白じゃんか!!
めっちゃ葬儀を意識してるじゃんかよ! 」
セロフィート
「 ワタシは皆さんを代表して信仰の指針を読む立場ですよ 」
マオ
「 そ、そうだったな…… 」
里長:匕魅呼
「 セロ殿…マオ殿……。
里人の葬儀をすると聞いて来たのだが…。
何が起きたのだ? 」
セロフィート
「 子供が3名、殺害されました 」
里長:匕魅呼
「 な゛っ?!
殺害とな?!
然も子供が3人も……。
我の里で殺害……そんな事が…… 」
マオ
「 犯人の仲間の1人は既に捕らえているんだ──です。
残りの犯人達も捕まえてみせるよ! 」
里長:匕魅呼
「 犯人は複数居るのか?! 」
セロフィート
「 里の治安と秩序を守る為に、捜査させています。
里からは逃げられませんし、遅くても明日には、お縄に付くでしょう 」
里長:匕魅呼
「 そうなのか?
殺害犯が潜伏してると里人も不安で仕方無いであろうな…。
すまぬ……我が名ばかりの里長なばかりに…… 」
セロフィート
「 匕魅呼様、御自身を責めてはいけません。
御自身を卑下してもいけません。
誰に何を言われようと御自身を大切にしてください。
マオとワタシは匕魅呼様の友達として、手助けさせていただきます 」
里長:匕魅呼
「 セロ殿…… 」
セロフィート
「 葬儀前に御遺体を見ます? 」
里長:匕魅呼
「 うむ…。
そうさせてもらおう… 」
匕魅呼様は思い詰めた表情で葬儀場の中へ入って行く。
オレもセロと一緒に葬儀場の中へ入った。
──*──*──*── 葬儀場
セロフィート
「 匕魅呼様、今日は彼等の為に葬儀を執り行います 」
里長:匕魅呼
「 …………本当に子供なのだな…。
3人共我よりも幼いではないか… 」
匕魅呼様は3人を見て、辛そうな表情をしながら拳を握っている。
セロフィート
「 匕魅呼様、強く握らないでください。
血が滲んでしまいますよ 」
里長:匕魅呼
「 セロ殿… 」
セロフィート
「 犯人達は必ず捕らえます。
彼等と同じ被害者を里から出す訳にはいきませんし。
犯人達に対する処罰は宴後の明明後日に行う予定です。
匕魅呼様は立ち会わない方が良いです 」
里長:匕魅呼
「 何故なのだ?
我も立ち会うぞ! 」
マオ
「 オレも立ち会わない方が良いと思うけどな──です 」
セロフィート
「 相手は凶悪な殺人犯です。
匕魅呼様の身に何かあってはいけません。
殺人犯達の処罰はマオとワタシに任せてください 」
里長:匕魅呼
「 セロ殿… 」
セロフィート
「 匕魅呼様と旅人であるマオとワタシは違います。
匕魅呼様は手を血で染めてはいけません。
汚れ仕事は大人に任せてください 」
里長:匕魅呼
「 …………うむ…。
分かったのだ…。
大人のセロ殿と……マオ殿に任せる故……存分に処罰するが良いぞ 」
セロフィート
「 有り難う御座います。
匕魅呼様から許可をいただけて良かったですね、マオ 」
マオ
「 そだな…… 」
上手い具合に大義名分を貰えたって事か。
殺害事件とか殺人犯とか、上手い具合に匕魅呼様へ悪人のイメージを植え付けれたみたいだし、明明後日には誰の目も気にする事なく、大手を振って犯人達を処罰する事が出来るわけだな!
出来る事なら「 死んだ方がマシ!! 」って思えるぐらいの目に遭わせてやろう!!
オレは手加減なんかしてやらないんだからな!!
◎ 訂正しました。
参会 ─→ 参列




