✒ 里長と御対面
──*──*──*── 里長の長屋
里長の長屋の中へ通されたセロとオレは、この里の長をしている人物と対面する事が出来た。
里長は意外にも女性で、両腕,両足には刺青みたいな感じで文字っぽいのが描かれている。
年齢は若そうに見えるんだけど、実年齢は幾つ何だろうな?
里長
「 ──ふむ。
暫く、我の里に滞在したいとな?
構わぬ。
好きなだけ滞在すれば良い。
“ 里を出る ” と決めた時には、忘れず我へ報告に来るようにな 」
マオ
「 有り難う御座います! 」
セロフィート
「 滞在を容認してくださり、感謝致します 」
里長
「 滞在中に利用する長屋が必要であるな。
ヒウ区の長屋が1軒空いとる。
鍵を渡す故、使うが良い 」
マオ
「 ヒウ区って何処にあるんですか? 」
里長
「 長屋の鍵と共に里の地図も渡そうぞ 」
セロフィート
「 有り難う御座います。
匕魅呼様に御尋ねしたい事があります」
里長:匕魅呼
「 うむ、何じゃ?
遠慮なく尋ねてみよ 」
セロフィート
「 この里には程度の低い侍が良く来るのですか? 」
里長:匕魅呼
「 …………会ったのか? 」
マオ
「 丸腰の里人に刀を振り上げて、今にも斬り掛かろうとしてたから、オレが懲らしめてやったんだ! 」
里長:匕魅呼
「 そうか……。
今回は犠牲者が出なかったのだな…。
マオ殿…だったか。
我の里人を助けてくれた事、心より感謝する 」
マオ
「 匕魅呼様、あの恥知らずな侍達は何なんだ──ですか? 」
里長:匕魅呼
「 あの侍達は…兄上が定期的に寄越して来るのだ。
我の里を監視する為にな…。
我には、兄上が寄越す侍達に対して口出しも手出しも出来ん事になっておる。
里人達には辛い思いをさせておる… 」
マオ
「 犠牲者を出されても何も出来ないって異常だよな──ですよね?
何で何も出来ないんだ──でしょうね? 」
セロフィート
「 マオ、ズケズケと聞き過ぎです。
人には言えぬ事情もあるのでしょう 」
マオ
「 匕魅呼様、滞在中の間だけになるけど、あの陸でもない侍達が来たら、オレが追い払ってやるよ──ます!
う~んと、里の用心棒ってヤツ? 」
セロフィート
「 マオ、それでは匕魅呼様が兄上とやらから睨まれてしまいます。
ワタシ達は旅人です。
旅の流浪人という立場を大いに利用するとしましょう。
退屈しなくて済みそうです 」
マオ
「 里に依頼された用心棒としてじゃなくて、此方で勝手に侍を懲らしめるって事か? 」
セロフィート
「 長屋には住まわせていただきますけど、鍵は御返し致します。
里へ来た流浪人2名が、勝手に長屋を占領して暮らしている──という事にしましょうか。
勝手に里に居座り、腕も立つ為、手が出せず、放置するしか手立てがない──という事にしていただけますか?
マオとワタシは里のしきたりにも従わず好き勝手に暮らさせていただきます。
そのようにすれば、何事かが起きても全ての敵意はマオとワタシに集まります。
匕魅呼様が兄上とやらから睨まれる事も里人が被害に遭う事もないでしょう 」
マオ
「 そっか!
敢えてオレ達が里にとっての困り種になるわけだな!
匕魅呼様もそれで良いよな──ですよね? 」
里長:匕魅呼
「 …………御主達が、それで構わぬと言うならば我は容認しよう。
好きにすると良い。
ヒウ区は里の出入り口にも近い故、都合も良かろう 」
セロフィート
「 有り難う御座います。
良かったですね、マオ 」
マオ
「 そだな! 」
セロフィート
「 匕魅呼様、この里にはマオとワタシのように旅人は滞在していますか?
里人から『 旅人が多い 』と聞きました 」
里長:匕魅呼
「 うむ……確かに旅人は多い。
然し、旅人は里には滞在はせん。
此処から30日程歩けば兄上が治める大きく立派な町がある。
旅人は皆、里で1泊した後、其処を目指して行くからな 」
セロフィート
「 そうですか。
30日程歩いた先に町ですか。
では侍達も町から来ているのですね 」
里長:匕魅呼
「 そうだな。
里と町の中間地点を中心に集落や村が幾つもある。
この里は町から1番遠い事もあるが、山と森が近く、手強い獣の被害も多い。
海に出るにも大型の獣が生息する森の中を進まねばならん為、中々に不自由な場所なのだ。
冬には雪も積もり、道も塞がってしまうしな… 」
セロフィート
「 そうですか。
それは好都合です。
滞在中は色々と楽しめそうです 」
セロは満足そうに微笑んでいる。
この里でセロは何をするつもり何だろうな??
一先ず、里長の匕魅呼様との挨拶を終えて、里での暮らし方の交渉まで済ませると、御付きの人から里の地図を受け取った。
里長の長屋を出たセロとオレは、地図を頼りにヒウ区へ向かう事にした。