✒ 帰宅途中 1
──*──*──*── 廊下
マオ
「 セロ──、予想以上に匕魅呼様が喜んでくれて良かったな!
【 匕魅呼様の信頼を得て、仲良くなろう大作戦 】は大成功かな? 」
セロフィート
「 はい?
そんな作戦は立てた覚えはないですけど? 」
マオ
「 もうっ( *`Д´ )ノ!!!
何言ってんだよ~~。
全部、セロの “ 計画通り ” なんだろ?
オレ、ちゃんと分かってるからな! 」
セロフィート
「 はあ?
マオが何の事を言っているのか分かりません… 」
マオ
「 惚けなくて良いよ!
セロとオレの仲だろ!
昨晩も結局は『 いいこと 』してくれたしさ…(////)
自惚れても良いんだよな?(////)」
セロフィート
「 そんな事ですか。
当然です。
マオはワタシの2番ですから、好きなだけ自惚れてください 」
マオ
「 そだな… 」
セロの1番は永遠に変わらないだろう。
〈 久遠実成 〉がセロの1番である事は何があっても覆らない。
オレは何時だって2番なんだ。
それでも良い…………とは素直に思えないけれど、 “ 仕方無い事なんだ ” とは思っている。
オレだって〈 久遠実成 〉に生かされている1人なんだから、いい加減に認めて、受け入れて、諦めないと……って何度も自分へ言い聞かせているんだ。
難しいよな…。
時々だけど……本当に時々だけれど──、「 嘘でも良いから、1年に1度ぐらいは、“ マオが1番です ” って言ってもらいたい 」って思う自分が居るんだ…。
だけど……そんな事をセロには言えない。
〈 久遠実成 〉に生かされている立場のセロに、オレの我が儘をぶつけて困らせるような事は出来ないから……。
セロフィート
「 折角ですし、温泉も3日後に御披露目しましょう。
御披露目前には匕魅呼様に御忍びで来てもらい、足湯と温泉を体験していただきましょう 」
マオ
「 う、うん……そうだな。
序でにさ、海も見せてあげたいよな?
農場と牧場もさ 」
セロフィート
「 はいはい。
マオがそうしたいなら、そうしましょう。
宴の準備には人手が必要です。
〈 器人形 〉を大量投入します。
折角の宴ですし、盛大にしましょう 」
マオ
「 そうだな!
里に来て初めての宴かぁ。
楽しみだな~~ 」
里長の長屋──門を出て、里の中をセロと横に並んで歩く。
暫く歩いていると分かれ道が見えて来た。
──*──*──*── 分かれ道
セロフィート
「 マオ──、ワタシは用事があります。
長屋まで1人で帰れます? 」
マオ
「 うん、オレは大丈夫だよ。
セロの用事って何なんだ? 」
セロフィート
「 根回しです♪ 」
マオ
「 根回しぃ? 」
セロフィート
「 宴を盛り上げるにはサクラも必要です。
未成年の里長を良く思っていない里人が居ると話したでしょう?
宴を妨害されないように彼等を懐柔します 」
マオ
「 懐柔って……。
力ずくで脅したりしないよな? 」
セロフィート
「 マオ……。
そんな事しません。
“ 籠絡する ” と言えば良いです? 」
マオ
「 心理的に丸め込むのも何かなぁ…。
もっとさ和やかに平和的に話し合えないかな? 」
セロフィート
「 懐柔がてっとり早いですけど? 」
マオ
「 何だろうな~~~、物騒な言葉が隠れてるような気がして止まないんだけど?! 」
セロフィート
「 気の所為でしょう。
ワタシは何時でも相手へ歩み寄り、和やかに紳士的に交渉します 」
マオ
「 ………………反対派の里人達の相手はセロにしか出来ないって思ってるよ。
セロに任せるしかない──ってさ!
可能な限り穏便にな? 」
セロフィート
「 当然です。
里に滞在している間は上手く付き合い、仲良くしなければいけませんし。
沈まない豪華客船で航海するつもりでワタシに任せてください 」
マオ
「 そだな…… 」
不安しか無いけど、セロの善意を信じるしかない。
感情や心を持たない人形に善意を期待するだけ無駄かも知れないけどな~~~。
………………感情と心か…。
感情を持たない人形は歴代のセンダイさん達が魂の器に残した記憶の記録を見て、“ 演じているだけ ” って教えてくれたけど……、セロの言う事だから本当なのか嘘なのかオレには分からない。
「 冗談は言っても嘘は吐かない 」ってセロは言うけど、実際には平気で誤魔化されたり嘘を言われたりしてるからなぁ~~~~。
前科が有り過ぎて、セロの言う事の何が本当で嘘なのかが、オレには全く皆目検討が付かない。
それでも “ セロを信じたい ” って思うのは惚れた弱味なのかな……(////)
セロフィート
「 マオ、此処で分かれましょう。
真っ直ぐ長屋へ帰ってください 」
マオ
「 セロぉ~~~~!
オレは成人してる大人だぞ!
過保護過ぎだって(////)
何か遭っても自分の身ぐらい守れるんだからな!
セロにしごかれてるオレの実力を信じてくれよ! 」
セロフィート
「 そうでしたね。
マオを信じましょう。
呉々も寄り道しないように。
良いですね? 」
マオ
「 セロ…(////)
言う通りにするから、心配するなって! 」
“ 感情や心が無い ” って言うけど──、オレに対する今のセロの態度が記憶の記録を見真似た感情の演技だって??
そうは到底思えない。
幼い我が子を心配する母親を思わせるようなセロの態度や表情や声色や感情が──、全部演技だなんて…オレには思えないんだよっ!!
セロフィート
「 マオ?
どうしました? 」
マオ
「 どうもしてない!
セロ、夕食の時間までには帰って来いよな!
料理、作って待ってるからさ 」
セロフィート
「 はいはい。
分かりました。
マオの手料理、楽しみにしています 」
オレは分かれ道でセロと別れて愛しい我が家──新居を目指して歩き出した。




