⭕ 献上品が●っぱい 5
──*──*──*── 謁見の間
謁見の間に入ると〈 器人形 〉達の手によって既に献上品は並べ終えられていた。
2枚の座布団が横に並んで置かれているのを見ると、座布団はセロとオレが座る為に用意されている物らしい。
座布団とは言っても、日本に居た時に使っていたような布製の柔らかい四角い座布団じゃなくて、藁で編まれた丸形の座布団だ。
“ 座布団 ” と呼んで良いのか分からないけど、正式名称を知らないんだからしょうがない。
セロフィート
「 マオ、座らせていただきましょう 」
マオ
「 うん 」
普段は訪問者へは座布団が用意される事は無いらしく、座布団が用意してもらえるのは里長が招待した客人にのみらしい。
匕魅呼様に客人として招待された訳じゃないセロとオレに座布団が用意されたのは、イカれ婚約者から匕魅呼様の貞操を守った事に対する評価──感謝の気持ちの表れなのかも知れない。
座布団って言っても薄い物だから、床の上に座らないで済むだけマシってだけでだ。
匕魅呼様への献上品は、巨大熊の毛皮,牙,爪を4頭分──、大猪の毛皮,牙,蹄を3頭分──、野兎の毛皮を11頭分──、首長海竜の革を3頭分と、加工された巨大熊,大猪,野兎,首長海竜の骨──、下処理を済ませている巨大熊,大猪,野兎の肉と、天日干しした魚,貝類,海老類,干し椎茸やセロが作った首長海竜の削ぎ落とし肉を使った料理がある。
結構な量なんだよなぁ。
首長海竜の削ぎ落とし肉料理は、高価な重箱に詰められている。
重箱の中には、首長海竜の削ぎ落とし肉料理以外の料理も詰められている。
重箱に詰めてる所を見せてもらったけど、まるで豪勢な “ お節料理 ” みたいな出来だ。
海の幸,山の幸をふんだんに使って作られたセロ特製の “ お節料理 ” は日本円にしたら5万円以上は余裕でしそうだ。
良いなぁ……。
オレも食べたいもんだ。
里では手に入らない卵を使っただし巻き卵焼きとオムレツも重箱に詰められている。
山の幸をふんだんに使った炊き込み御飯のオニギリも入ってるんだ!!
匕魅呼様が羨ましい!!
暫く待っていると謁見の間に匕魅呼様が入室して来た。
匕魅呼様の左右に控えているのは、セロが送り込んだっていう〈 器人形 〉だな。
…………〈 器人形 〉が傍に付いていながら何で匕魅呼様は、イカれ婚約者から襲われるなんて大惨事な目に遭ったんだろう??
〈 器人形 〉は匕魅呼様を護衛する為に居るんじゃないのか??
セロ──、もしかして匕魅呼様に “ 味方 ” だと思わせる為に態と〈 器人形 〉に手を出さずに見過ごすように予め指示を出して──。
…………考えたくもないし、信じたくもないけど──、セロだからなぁ……やり兼ねないんだよなぁ~~~。
セロからすれば、匕魅呼様だって玩具の1つに過ぎない訳だしなぁ……。
里長:匕魅呼
「 待たせてしまったな。
セロ殿,マオ殿──、良く参られた。
我への献上品を拝見したい 」
セロフィート
「 どうぞ。
此方にあるのがマオとワタシで用意した匕魅呼様への献上品の品々です 」
里長:匕魅呼
「 う、うむ……。
予想以上に…てんこ盛りであるな。
何れも上質な品であろう? 」
セロフィート
「 いいえ。
献上品はマオが森中で狩った動物や獣をマオが解体し、下処理をした物ばかりです。
魚介類の椎茸は長期保存が出来るように天日干しにしてみました 」
里長:匕魅呼
「 魚介類…とな??
里から海へは獰猛な獣が生息する森を通らねばならぬ故、行けぬ筈であるが… 」
セロフィート
「 開墾しました。
煉瓦道を作り、海へ出れるようにしたのです。
里から海へは行き、漁をする事が可能になりました。
今は船着き場と漁に出る為の船を作っています 」
里長:匕魅呼
「 な、なんと……。
セロ殿とマオ殿が里へ来たのは一昨日ではなかったか?
開墾するには人手も必要であろう? 」
セロフィート
「 人手は足りてます。
大きくはないですけど、農場と牧場も作りました 」
里長:匕魅呼
「 ………………そ、そうなのか… 」
セロフィート
「 素材と加工した骨は匕魅呼様がお納めください 」
里長:匕魅呼
「 う、うむ…。
有り難く頂戴しておこう。
…………下処理された肉類であるが、こんなにあっても使いきれんな… 」
セロフィート
「 匕魅呼様から里人達へ労いの意を込めて振る舞ってください。
これだけ有れば、足りないという事はないでしょう 」
里長:匕魅呼
「 里人達へ振る舞う…だと?
そんな事はした事ないのだが… 」
セロフィート
「 これから始めれば良いです。
3日後は匕魅呼様が里長となられて2年目の記念日であると、里人から聞きました。
宴の準備はマオとワタシも手伝います。
盛大な宴を催し、里人達へ美味しい料理を振る舞いましょう。
きっと喜んでくれます。
明明後日には船着き場と船も完成しています。
里人達へ御披露目しましょう 」
里長:匕魅呼
「 …………良いのか?
我の為に其処迄…… 」
セロフィート
「 めでたい日ではありませんか。
それに──、滞在中は里の掟に縛られず好きにさせていただくのです。
これぐらいはさせてください。
匕魅呼様の里長就任記念日を友達として祝いたいのです。
どうか、マオとワタシにも祝わせてください 」
里長:匕魅呼
「 セロ殿……マオ殿……。
有り難う(////)
心から礼を言うぞ! 」
匕魅呼様は嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔はオレにではなくて、完全にセロにだけ向けられている笑顔だって事は誰から見ても明白だろう。
セロも太っ腹な事をするもんだな。
自分達が匕魅呼様の “ 御気に入り ” って事を里人達へアピールするつもりか?
匕魅呼様……完全に騙されてるよ、セロに!!
セロフィート
「 此方の重箱は匕魅呼様に召し上がっていただきたく、ワタシが作った料理の品々です。
朝食が未だでしたら、どうぞ御賞味ください 」
里長:匕魅呼
「 セロ殿が作られたのか?
セロ殿は料理も出来るのか?
実は腹ペコなのだ(////)
折角の料理であるし、いただこう 」
匕魅呼様の左右に控えている〈 器人形 〉が動いて、セロが用意していた箸と小皿を手に持った。
どうやら匕魅呼様の為にに小皿へ取り分けてるみたいだ。
匕魅呼様は取り分けられた小皿を侍女から受け取る、料理を一口ずつ食べ始めた。
里長:匕魅呼
「 ──セロ殿、どの料理も絶品である。
こんなに美味い料理を口にしたのは生まれて初めてであるぞ! 」
セロフィート
「 有り難う御座います。
匕魅呼様の口に合い、安堵しております。
喜んでいただけて、ワタシも嬉しいです。
真心を込めて作った甲斐があります 」
里長:匕魅呼
「 …………セロ殿の真心入りか……。
どうりで美味い筈であるな(////)
どの様に調理をすれば、このように美味い料理を作れるのか分からんな 」
セロフィート
「 ふふふ。
里では手に入らない調味料や香辛料を使いました。
3日後の宴で振る舞う料理も同じような料理を提供させていただきます 」
里長:匕魅呼
「 そうなのか?
それは楽しみであるな! 」
セロフィート
「 匕魅呼様──、マオとワタシは、これにて失礼させていただきます。
3日後の準備と仕込みを始めます 」
里長:匕魅呼
「 そうか…。
御苦労であったな。
暫しの別れが名残惜しい…。
3日後に会えるのを楽しみにしてえおるぞ 」
セロフィート
「 マオもワタシも楽しみにしています。
皆にとって楽しい宴にしましょう、匕魅呼様 」
匕魅呼様へ別れの挨拶を済ませて頭を下げたセロとオレは、匕魅呼様と侍女達を残して謁見の間を退出した。




