✒ 一悶着の末に……
──*──*──*── 人里
漸く人里へ到着した。
森の中を夜通し歩き続けたりして5日目、やっと……屋根のある民家が集まってる人里の中へ入った。
民家って言うよりも粗末な木造の家が並んでいる。
誰も彼もが粗末で小汚ない格好をして、汗水流して働いている。
マオ
「 …………何かさ、随分と貧しそうな人達が多い人里だよな?
セロ……オレ達さぁ、完全に浮いてるよな? 」
セロフィート
「 確かに浮いてますね。
折角、着物に着替えたのに場違いに見えます。
襲われてしまいそうですね 」
マオ
「 何で嬉しそうなんだよ…。
えぇと、先ずは長の所に行けば良いんだよな? 」
セロフィート
「 尋ねてみましょう。
──もし、其処の御方。
何処に行けば、この里の長に会えますか? 」
里人
「 アンタ等……随分と立派な身なりをしてさるな 」
セロフィート
「 ワタシはセロ。
彼はマオと言います。
船が難破してしまい、森の中を歩いて来ました 」
里人
「 船…?
難破ぁ??
ははぁ……旅人かいな。
最近、やけに多いんだよなぁ。
里長の家は、赤い布が巻き付けてある長屋だよ 」
セロフィート
「 御親切に有り難う御座います 」
マオ
「 『 旅人が多い 』って事は、この里にもセロとオレ以外にも居るんだ? 」
セロフィート
「 先ずは赤い布が巻き付けてある長屋を探しましょう 」
マオ
「 お、おう。
探すの……大変そうだけどな~~~ 」
親切な里人が教えてくれた情報を手掛かりにして、セロとオレは里長が暮らしている長屋を探す事にした。
歩きながら赤い布が巻き付けてある長屋を1軒1軒探して歩いていると、揉めているような争っているような騒がしい声が聞こえて来た。
マオ
「 何だろうな?
セロ、行ってみようよ 」
セロフィート
「 マオの野次馬さん。
この里でマオとワタシは未だ余所者です。
首を突っ込まないようにしてください 」
マオ
「 気を付けるよ! 」
オレはセロより一足先に揉めているらしい場所へ向かった。
其処には人集りが出来ていて、背の低いオレには何が繰り広げられているのか全く分からない。
セロぐらい背が高かったらな~~。
オレは身長の低さと小柄な体型を活かして、人集りの中に隙間を見付けて入り込んだ。
人集りを掻き分けたオレの視界に入った光景は──、日本のTV番組で良く見ていた時代劇に出て来る侍みたいな格好をした3人の男が、手に持っている刃物──刀で今にも里人に斬り掛かろうとしている場面だった!!
野次馬で集まっている見物人達は、武器らしい武器を持っていない。
今にも刀で斬り掛かられようとしている里人も丸腰だ。
抵抗する物を持っていない手ぶらで丸腰な里人に刀を振り上げて威嚇するなんて、最低な奴だな!
男の風上にもおけない奴等だ!!
あの3人の男を成敗出来るのは、武器を所有しているオレだけだな。
だけど、あんな奴等に武器を使う必要なんかない。
素手で十分だろう。
マオ
「 ──待てよ!
大の男が3人も揃って、丸腰の男を相手に意気がってるなんて、カッコ悪いぞ!
弱い者を脅してさ、男として恥ずかしくないのかよ! 」
侍:A
「 何だ、お前は?
見掛けない格好をしているな。
余所者か? 」
侍:B
「 子供は引っ込んでいろ!
大人の問題に子供が口を挟むでないわ! 」
侍:C
「 余所者は引っ込んでいてもらおう 」
マオ
「 余所者だけど引っ込むつもりはない!
オレは子供じゃなくて、歴とした大人だ!!
変わりにオレが相手してやるよ。
素手でな! 」
侍:A
「 素手で…だと?
我等剣士を素手で相手するだと? 」
侍:B
「 ははははは!!
小僧、笑わせてくれるじゃないか! 」
侍:C
「 死にたくなければ、失せろ!
邪魔をするなら子供であっても容赦なく斬る! 」
マオ
「 ──斬れるもんなら斬ってみろよ!
その前にオレがアンタ達をKOしてやるからさ! 」
オレは左手を前に出したら、甲を相手側にして、揃えた指を手前に曲げながら「 カムカム 」して、3人を挑発してやった。
それを見て堪忍袋が切れたのか──、プライドが傷付いたのか──、理由は分からないけど、刀を構えた3人の男達が、オレに向かって走って来た!!
オレには男達の動きがスローモーションのように見えているから、余裕で攻撃をかわしてやる。
「 あっ! 」と言う間も無く、オレは素手で3人の男を負かして、地面に這いつくばらせてやった。
地面とキスさせてやったから3人の顔は土で汚れている。
マオ
「 どうだよ!
素手で十分だっただろ?
オレは森の中で巨大熊を4頭,大猪を3頭も狩れる手練れだ。
刀を振りまして威張り散らしてるような、お前等なんか相手じゃないんだよ!
旅人、舐めんな! 」
侍:A,B,C
「「「 ……………… 」」」
マオ
「 あれ?
何で言い返さないんだ? 」
セロフィート
「 マオ──、やり過ぎです。
3名共に気を失ってます 」
マオ
「 えぇ~~~。
一寸小突いただけなのに……。
侍って、こんなに弱かったんだ… 」
セロフィート
「 マオ、『 首を突っ込まないように 』と言ったでしょうに… 」
マオ
「 ごめん…。
悪かったよ。
でもな、コイツ等、丸腰の里人に刀を振り上げて脅してたんだ!
斬られる前に助けないと死人が出てたかも知れないしさ…… 」
セロフィート
「 彼等が何者で、何があって里人へ刀を振り上げたのかは知りませんけど──、目を覚まして暴れられても面倒です。
目隠しと猿轡をして縛っておきましょう 」
マオ
「 そだな。
序でに刀と着物も没収して褌姿にしとこうよ 」
セロフィート
「 はいはい。
マオが望むなら、その様にしましょう 」
そんな訳で、オレは気を失ってる3人に目隠しと猿轡をしたら、刀を没収した後、着物を脱がせてから両手首,両足首を縄で縛った。
因みにキツい体勢の海老反にしてやった。
マオ
「 ──ふぅ。
出来た!
セロ、着物と刀はどうする? 」
セロフィート
「 戦利品として頂きましょう 」
マオ
「 質屋に売ったら路銀の足しになるかな? 」
セロフィート
「 質屋に依ります。
良い質屋を探して売るとしましょう 」
マオ
「 賛成~~! 」
里人
「 あ…あのぉ……先程は助けてくれて有り難うな… 」
マオ
「 気にしないでよ。
斬り殺される前で良かったね 」
セロフィート
「 何が原因で揉めていたのですか? 」
里人
「 ……それが── 」
?
「 オラ達が悪いんだ!
オラ達が……お侍様達の前を横切っちまったから……。
父ちゃん……ごめん… 」
今にも泣きそうな顔をした4人の子供達が恐る恐ると名乗り出て来た。
未々幼い子供達だ。
見た感じ思慮分別なんて出来そうにない。
マオ
「 はぁぁぁあ?
子供が前を横切っただけで、鞘から刀を抜いて振り翳したのか?
なんて侍だよ。
侍の恥さらしだな!
刀は絶対に返してやらないぞ! 」
セロフィート
「 困った侍も居るのですね 」
子供
「 兄ちゃん、父ちゃんを助けてくれて有り難う… 」
マオ
「 おう!
これからは不用意に侍へは近付かないようにした方が良いかもな 」
子供
「 うん… 」
セロフィート
「 この里には侍が良く訪れるのでしょうか? 」
マオ
「 フン!
侍の恥さらしが来たら、またオレが懲らしめてやるよ! 」
セロフィート
「 懲らしめるのは良いですけど、手加減してください 」
マオ
「 分かってるよ!
あっ、そうだ!
里長の長屋を探してるんだけどさ、何処にあるか知ってるかな?
赤い布が巻き付けてある長屋を探してるんだけどさ、見当たらないんだ… 」
子供
「 案内するよ!
付いて来て! 」
侍に斬り捨てられそうだった父親を助けた事が切っ掛けで、子供が里長の長屋へ案内してくれる事になった!
マオ
「 セロ、良かったな!
これで里長に会えるよ! 」
セロフィート
「 そうですね。
マオのお蔭です 」
マオ
「 セロぉ~~~~(////)」
セロがオレにだけ向けてくれる笑顔ぉ~~~~♥️♥️♥️
森の中での野宿じゃあ、セロと『 いいこと 』も出来なかった。
住める場所を借りられたら、セロと『 いいこと 』したいなぁ~~(////)
子供
「 ──兄ちゃん、里長の長屋は此処だよ 」
マオ
「 此処が……。
確かに赤い布が巻き付けてある長屋だ 」
セロフィート
「 坊や、助かりました 」
子供
「 うん(////)
エヘヘヘ(////)
オラ……モキチってんだ(////)」
セロフィート
「 案内してくれて有り難う、モキチ君 」
マオ
「 モキチ、有り難な! 」
モキチ
「 うん!(////)
オラ、父ちゃんの所に戻るな 」
モキチは元気に手を振って、走り去って行った。
元気のある子供って良いよな~~。
モキチとは、これからも仲良く出来そうかも知れないな!
セロフィート
「 マオ、里長に会いましょう 」
マオ
「 そだな。
留守じゃないと良いな 」
オレは里長の長屋の戸の前で「 ごめんくださ~~い 」って大きな声で呼んでみた。