⭕ 献上品が●っぱい 1
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 新居
セロフィート
「 ──マオ、似合います。
立派なお侍に見えますよ 」
マオ
「 そうかな?
それにしても、オレの髪まで伸ばす必要あるのか? 」
セロフィート
「 御揃いにしてマオとワタシの仲良し度をアピールしたいですし 」
マオ
「 仲良し度…(////)
セロが着てる羽織には何が描かれてるんだ? 」
セロフィート
「 これです?
彼岸花ですよ。
日本に滞在していた時、墓地に生えていた花です 」
マオ
「 あぁ……あの赤い花かぁ。
彼岸が近付くと咲くから、彼岸花って言うんだっけな?
羽織の柄にするのって、どうなんだ? 」
セロフィート
「 ふふふ。
羽織だけではないですよ。
着物にも色違いの彼岸花の柄にしてます 」
マオ
「 マジかよ。
全然気付かなかったよ… 」
セロフィート
「 マオの羽織と着物の柄は藍色の露草にしました。
涼やかな印象を与えてくれる小さくて可憐で素朴な花です。
マオに似合うと思って♪ 」
マオ
「 素朴で悪かったな! 」
セロフィート
「 露草の花言葉は──、尊敬,懐かしい関係,敬われない恋,恋の心変わり…等があります 」
マオ
「 オレは “ 心変わり ” なんてしないからな!!
オレは何時でもセロに一途なんだからな!! 」
セロフィート
「 はいはい。
ムキにならないでください。
露草にも色違いがあります。
色によって花言葉も変わりますよ 」
マオ
「 そうなんだな。
彼岸花は赤だけなのか? 」
セロフィート
「 彼岸花にも色違いは有ります。
やはり色が変わると花言葉も変わりますね 」
マオ
「 彼岸花の花言葉には、どんなのが有るんだ? 」
セロフィート
「 情熱,悲しき思い出,再会,諦め,独立…等ですね 」
マオ
「 …………へぇ… 」
セロフィート
「 彼岸花には様々な別名も有ります 」
マオ
「 別名?
へぇ…どんなの? 」
セロフィート
「 リコリス・ラディアータ,レッドスパイダーリリー,曼珠沙華,天界の花,死人花,幽霊花,毒花,痺れ花,天蓋花,地獄花,狐の松明,葉見ず花見ず…等未々沢山ありますよ 」
マオ
「 マトモそうな別名が “ 天界の花 ” しかないって思うのはオレだけか? 」
セロフィート
「 さて、ワタシには何とも。
準備が出来たなら里長の長屋へ行きましょう 」
マオ
「 そうだな。
セロは扇子の絵柄まで彼岸花なんだな 」
セロフィート
「 マオの扇子の絵柄は露草ですよ 」
マオ
「 そうかよ… 」
セロフィート
「 マオキノ、留守は任せました 」
マオキノ
「 畏まりましたエリ!
セロ様,マオ様──、行ってらっしゃいませエリ 」
オリィ
「 クゥクゥ~~ 」
マオ
「 行って来るな!
マオキノ,オリィ 」
──*──*──*── 新居・外
セロと長屋を出ると〈 器人形 〉が待っていた。
セロが前以て用意した荷馬車には、素材と加工された骨と下処理が済んで防腐効果のある葉にくるまれた肉が積まれている。
マオ
「 荷馬車に一杯だな。
こんなに沢山の品を匕魅呼様に献上するのか? 」
セロフィート
「 そうです。
里長である匕魅呼様から里人達へ振る舞ってもらいます。
新座者が里長を蔑ろにするのは良くないです 」
マオ
「 今迄散々蔑ろにして来たセロが言う台詞じゃないだろ… 」
セロフィート
「 失礼ですね。
匕魅呼様は未だ未成年です。
相談が出来て頼れる大きな友達が必要です。
未成年の里長を良く思っていない里人も居ます。
マオとワタシが匕魅呼様の良き友人となれば、毒殺も暗殺もされません 」
マオ
「 はぁ?
暗殺??
匕魅呼様って暗殺される立場なのか? 」
セロフィート
「 マオ……君は時代劇で何を見てました?
毒殺や暗殺は邪魔者を排除する為の常套手段、十八番ですよ 」
マオ
「 そうだっけ??
あははは……。
あんまり内容は覚えてないんだよなぁ~~ 」
セロフィート
「 既に匕魅呼様の身近に〈 器人形 〉を忍ばせてます。
未だ動きはないですけど、用心に越した事はないです 」
マオ
「 セロ──。
匕魅呼様を手中に収める為に既に動いてたんだな。
ちゃっかりしてるな~~ 」
セロフィート
「 ふふふ。
仲良くして損はない相手です。
里人との間を取り持ち、信頼を築かせていけば、より良い里長に成長します。
マオとワタシは友人として、お手伝いをするだけです 」
マオ
「 傀儡にしようとしないだけマシだな~~ 」
セロフィート
「 そろそろ出発しましょう 」
マオ
「 うん 」
セロとオレが先頭になって、里長の長屋を目指して歩く。
里人達と擦れ違う度に何事かと凝視されて注目されるのは慣れないなぁ。
まぁな──、朝っぱらから絶世の美貌をしてる美丈夫なセロが歩いてれば、老若男女関係無く見惚れちゃうよな。
セロと来たら、笑顔を振り撒いて手を振って歩いてるし。
因みに匕魅呼様に献上する品を積んでいる荷馬車を引いてるのは、馬じゃなくて、神社で見掛ける巫女さんの衣装を着ている男性型の〈 器人形 〉だ。
男性型の袴の色は翠で、女性型の袴の色は赤だ。
この島国では、女性型を巫女,男性型を巫士って呼ぶ事にしたらしい。
間違えない様に気を付けないとだぞ!




