2人目(3)
酒の力も相まってか、話し合いは活発になった。
「弓手のアヤチはどうだ? 戦闘面でいえば、さほど攻撃力が高いわけではないぞ?」
とリックが言えば……。
「ダメ! アヤチの気配察知とかが偵察や野宿の時とか、どんだけ助かっていると思ってるの!」
とリアが返す。
そんなやり取りで、あーでもないこーでもないと発言しあっている。
そうそう、話の内容のこともあり、酒場の倉庫へ場所を移させてもらった。
「ジャンは? 俺もブレイブも魔法は使えるぞ?」
「俺のは使えるってだけで、ジャンみたいに広範囲高出力の魔法を使えるわけじゃない」
「そもそも、リックが回復とか補助しながら攻撃魔法出来るの? 前衛の私からしたら、援護無しって死活問題だよ?」
意見の否定をし合っているわけではなく、とにかく思いついた先から発言して問題点やメリット、アイディアを出しまくるのだ。
「なら、前衛のリッターだ。リアちゃんの次に金食い虫で、攻撃力も低い」
「リッター無しとなると、俺が盾役か?」
「そうなるな、生存意識が高くて器用なブレイブにピッタリだと思うが?」
「器用なだけで受け切れるなら引き受けるけどな。ちなみに盾の使い方は知らんぞ俺は」
盾の使い方が上手かったとしても、囮なんかは御免こうむりたいが。
「ねぇねぇ、武闘家のクンは? 強敵相手なら無償で戦ってくれそうだけど?」
「確かに悪くない。ブレイブはどう思う?」
「問題は、クンが理解してくれるかどうかだ」
「ああ、それがあったな……。ただ、それならクビにしても気付かないんじゃないか?」
「そうであってほしいけどな。給料に関しては俺が補填するのと、リックが稼いでもらえるなら気付かれないだろうし。けど、補填するやり方なら他の人材でも同じことが言えるけど」
俺が仲間を雇用するのであれば、国は何も文句は言わないだろう。
問題は俺も金が無いってことだ。
「出来れば、その手段は最後の切り札だ。ブレイブの分を補えるほど俺も稼げるか分からん」
「あとはクンのことだから、絶対にバラす。ほかの連中に絶対言う」
「あー良い案だと思ったんだけどなぁ」
「いや、最後の一人がクンなら使える手段が出てきただけでも上出来だ、リア」
と、こんな感じで意見を出して、一通り部隊の人間の評価をし終える。
二人が一息ついたとき、俺はこう切り出した。
「二人にこれからの道中、他の仲間の評定を取ってほしいんだ」
「評定?」
聞きなれない言葉にリアが聞き返す。
「つまりは、他の仲間がこれからの道中、部隊に対してどんなことをしたかを覚えておいてほしい」
「じゃあ、それで仲間の今後を決めるっていうこと?」
「そうなるな」
「それはちょっと穏やかじゃないな。俺はともかくリアは庇いかねない」
「ああ、それも考慮に入れるべきだとすら考えている。庇いたいと思えるほどの何かがあるってことだからな」
それは建前だがな。
本音を言えば、リックはどんな風に立ち回るかを見たいだけなのだ。
口添えの見返り、評定の改ざん、ゆすりにたかり、評価する側は色々と旨味をせしめることが出来る。
もし、リックが全員に密告したとするのならば、正直にリストラの件を話さなくてはならなくなる。
それは、リックの稼ぎが少なくなり、信用も落ちるのだから避けたい。
さらに言えば、これから死地へ赴くのだ。
無駄な戦力低下はリックとて望むところではないはず。
故に、交渉する相手は選ぶだろうし、規模もそこまで大きくすることは出来ない。
リアはともかく、こんな薄暗い計画の共犯者を頭っから全部信頼などしていなかった。
これで本当に、俺の思惑通りに働いてくれるというのなら、また違った策も打てるというものだ。
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