2人目(1)
……リストラしないことが確定しているのなら、協力を仰いだところで問題はないはずだ。
リアからの提案はとても良いように思える。
「リックなら何かしら妙案が思いつくような気がするし、良い案だと思う」
だが、あいつの性格上、何かしら悪だくみをされそうで怖い。
他の仲間に、「勇者に口利きしてやるから手数料として金を寄越せ!」 とか平気でやりそうなのだ。
俺の目的はリストラを遂行することでなく、戦力維持。
好き勝手にクビにしてお仕舞という簡単な話ではない。
ただ、あいつの知恵が良い方にいくとするのなら、これほど心強いことはない。
とはいえ、あいつはリストラしないということが決まっているのだから、協力しない立場ではない。
よし、明日にでも話してみよう。
「鍛冶屋の後で、リックと話してみようよ」
そうか、リアの装備の件をすっかり忘れていた。
「あ、鍛冶屋にリックを連れて行ってしまえば良いのか」
交渉事なら、リックを連れていかない手はない。
それに、他の仲間からも怪しまれない。
「だね、じゃあまた明日、私はお風呂に入って寝るとするよ、お休み!」
すくっと立ち上がり、手を振って宿屋に戻るリア。
……いやぁ、思いのほかチョロくて助かった。
チョロい順リストでも作っておいた方が良いかもしれない。
――――――とはいえ、リアのことが嫌いというわけではない。
鍛え上げられた引き締まっているが出るところは程よく出ている体に、ブルネットの髪と瞳。
女性としてはめちゃくちゃ魅力的だ。
将来的にどうこうというのも、決してまんざらでもない話である。
ただ、前世からもそうだが、結婚願望だとかが皆無であるし、何だったらお付き合いとかも面倒くさいからしたくない。
とはいえ、性欲は人並みにあったし、大人の付き合いをするのが理想というクズの考えを持っている。
もっと言うと『終わったら帰ってほしい』とも思ったことも少なくない。
なので、しょうがないから付き合ってみるか、くらいの意識であることは口が裂けても言えない。
そんなゲスなことを考えながら、俺も宿屋へゆっくりと戻る。
「明日もいい日でありますように」
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