1人目(3)
「なぁ、リア、これから言うことは誰にも言わないでくれないか?」
「な、何、改まって」
洗いざらい、今回のことをリアに話す。
相談というよりも、愚痴を吐き出しただけだったが彼女も真摯に受け止めてくれた。
「リアには申し訳ないが、この部隊から名前だけ外してもいいだろうか? もちろん、不利益にはならないようにするし、俺が将来的に補填する!」
「え、しょ、将来的って、えと、そのまぁ、い、良いよ。ブレイブがそう言ってくれるんだったら……」
リアが俺に好意を持っているのは知っている。
『将来的に』というのがどういったものなのか、あやふやにしたのはその為だ。
勘違いでも、了承してもらえるのならば、こちらとしてもタスクが一つ済まされる。
まぁ、良心が痛まないでもないが……。
「ありがとう! 恩に着る!」
「約束だからね! ちゃんと守ってよね!」
「ああ、もちろんだ!」
こんな感じで、人の感情に訴えるのも悪くないな。
―――――――――それに、だ。
俺たちの部隊は非正規の兵隊で曲者ぞろいだ。
国に仕えることが出来ない者、そもそも仕える気も無い者、クビになった者と様々だ。
叩けば埃の出る輩ばかり。
脅しも交渉手段の一つになるだろう。
さて、手早く一人目をリストラ出来たが、今後は誰を狙っていけばいいだろうか。
とにかく今回の件が済めば、次のリストラまで猶予は一か月ほどある。
部隊の離脱もあり得る以上、進めるだけ進んでいくのがいいかもしれない。
「あと三人、何か目星はあるの? ブレイブ?」
「そうだなぁ……リアは思いつくか?」
質問を質問で返すのはどうかと思うが、ここで俺が答えてしまうと、俺が一から十まで判断したことになってしまう。
結局決断するのは俺なのだけれど、なるべく重荷を背負いたくはなかった。少なくとも今は。
「んー誰をクビにしたいっていうのは無いけど……この人居ないと困るってのはあるかな」
「例えば?」
必要な人材を確保しておいて、他をリストラ候補にするのは当然の話だ。
「僧侶のリックは、私としては文字通り死活問題」
「ああ、リックか、確かに」
リック・クレは回復魔法に長けた僧侶である。
攻撃や補助の魔法も優秀で、さらには近接戦闘までこなす。
リアの言う通り、欠かせない存在だ。
そんな優秀な人間が、何故こんな愚連隊のような部隊に居るのか?
ひとえに人格破綻者だからである。
女癖は悪い、酒癖も悪い、賭け事も大好きで弱いから始末に負えない。
しかし、実力もさることながら、交渉術や金策に長けている。
魔物の素材を売買して臨時収入を得ているのだが、なんも価値もない素材でも……。
「これを家に置いておくだけで、魔物と勇敢に戦ったってハッタリ聞きますよ? あと、勇者が討伐した日にはこれが資産になるでしょうねぇ」
などと言いながら高値で買わせてしまうのだから大したものである。
飲み食いの料金だって、口八丁手八丁で値下げさせてしまうし。
国からの支援が少なくなるのなら、なおさらコイツの手腕が必要になるし。
なら、八人の内、俺とリックは確定。
リアをリストラする体なので、残りの五人から三人を選ぶことになる。
多いか少ないか、イメージが湧かないがなんとなく、光明が見えてきた気がする。
「だから、リックにも知恵を貸してもらわない?」
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